今後の水道整備のあり方     新水道ビジョン


1.水道を取り巻く環境の変化

 平成25年現在の水道を取り巻く環境は、平成16年に「水道ビジョン」が公表された9年前や、平成20年に改訂された5年前とは大きく変化しました。
 その一つは、「日本の総人口の減少」です。総人口は平成20年頃の1億2810万人を最大値として、今後85万人/年のペースで減少に転じることが予測され、今後の人口減少傾向は確定的であることです。給水人口や給水量が大幅に減少し続けることを前提に、老朽化施設の更新に対応せざるを得ない時代が来ています。水道料金は、水源や地形・居住形態に影響を受ける管路・エネルギー効率などの自然環境に大きく決定されます。固定費が大部分を占めるために費用抑制が難しい水道事業において、料金収入の減少は計画的な施設の更新を非常に難しくしていきます。



 もう一つは、「東日本大震災の経験」です。この大震災は未曾有の規模のものでして、激しい地震動による被害、巨大津波による被害、大規模な液状化による被害、放射性物質の放出が、東北・関東の水道に多大な影響を与えました。東日本大震災は歴史的な周期で発生する地震ですが、近い将来、東海・東南海・南海地震や首都直下型地震の発生が現実味を帯びてきています。今後は、巨大地震を想定した震災対策、危機管理対策を講じることが喫緊に求められています。

2.新水道ビションの目指す姿

 水道が原則として給水の対象としてきた「地域」(市町村)と地域の需要者との間で築きあげてきた「信頼」の概念を重視し、関係者が共有する基本理念を「地域と共に、信頼を未来へつなぐ日本の水道」とし、関係者それぞれが取り組みに挑戦することとしています。

 具体的には、「水質基準に適合した水が、必要な量、いつでも、どこでも、誰でも、合理的な対価を持って、持続的に受け取ることが可能な水道」を、今後あるべき水道と位置付けます。新水道ビジョンでは、水道水の安全の確保(「安全」)、確実な給水の確保(「強靭」)、供給体制の持続性の確保(「持続」)と表現し、これら3つの観点から、50年後、100年後の水道の理想像を具体的に示し、これを関係者間で共有・実現していくこととしています。

1)安全

 水道原水の水質保全、適切な浄水処理、管路内における水質保持、飲用井戸等の衛生対策を徹底し、いつでも、どこでも、水を美味しく飲める環境を実現する。

@ 水道の規模に関わらず、浄水場から給水栓末端に至るまで常時監視され、その情報は住民に公表される。

A 水道事業に関する情報公開が進み、住民と水道への安心と信頼が築かれている

B 水源の統廃合が行われる場合は、水質の良好な水源が優先的に選択され、取水・配水系統の再編や配水管網の再構築により、水道システムの改善・効率化を図る。

2)強靭

 水道施設の耐震化、バックアップ体制、近隣水道とのネットワーク網を構築し、被災を最小限にくい止める。被災した場合でも迅速な復旧を可能とし、必要最小限の飲料水や生活用水を供給する。

@ 適切な施設更新が維持され、電気・機械・計装を含めて全水道施設が耐震化されている。給水管も耐震性を向上させる。

A 想定される最大規模の地震動を受けても、断水や濁水の発生なしに水道水の供給が可能である。

B 津波の想定される地域は水道施設の移転改築や洗掘対策を施す。

3)持続

 近隣水道事業者が連携して水道施設の供用・統廃合を行い、広域化や官民連携等によって、給水人口や給水量が減少した状況でも、料金収入による健全で安定的な事業運営を行う。

@ 水道の必要性、健全な水道運営の在り方が住民に理解され、合理的な水道料金の設定により、安定した事業経営を行う。

A 経営効率を考慮して、位置エネルギーを最大限考慮した施設配置や構造を取り入れ、機械・電気設備は省エネ型の高効率設備を配置し、水道用資器材や発生汚泥土の循環利用を促進する。小規模な簡易水道等では、水道施設の更新の他、運搬給水等の多様な給水形態を比較検討し、全ての住民に安全な水を必要量供給する。

B 地域の主要な水道事業者を中核に、事業者間の広域化等の連携を実現し、全ての水道事業が経営的・技術的に持続可能な運用形態を考案する。

C 水道関係職員は地方公務員全体との比較で約2倍のペースで減少しており、効率化も限界に近づきつつある現況を踏まえ、水道事業に精通する職員の確保と育成を計画的に行い、地域に根付く水道サービスを実現できる職員を適切に配置し、官民連携による効率的な水道運営を行う。

D 水源の安定性の向上や緊急時の水源確保のため、水道事業者間の流域単位での水融通の実現や自己水源の保有を図る。

E 水道施設の事故発生を防ぐため資産管理(アセットマネジメント)に基づく水道設備の計画的補修や更新を図る。

3.新水道ビジョンの実現に向けて

1)水道事業者のやるべきこと

A アセットマネジメントの実践

 水需要減少と給水収益の減少を踏まえて、施設の更新や統廃合を適切に計画した資産管理を行うため、アセットマネジメントの実践により、料金改定、投資計画、広域化の検討等の水道経営を行う

B 水道施設のレベルアップを考慮した更新計画の策定

@ 施設の日常の維持管理データや老朽度情報を電子化し、適切な点検・保守により施設の長寿命化を図る

A 施設の老朽化と重要度を適切に評価した更新計画を立て、持続的に推進する。

B 需要減少に対応した施設ダウンサイジングを考慮した更新計画を策定する。

C 送配水管幹線管路の更新時には、日常給水に支障を与えない建設計画を策定する。

D 電気・機械設備等の更新では必要需要に応じて変動可能なシステムや契約形態を考案する。

E 水道事業運営上起こり得るリスクを想定し、そのリスクに対応し得るよう水道施設のレベルアップを図る。単独の事業体内では対処しきれない事案は、事業者間運用・連携も視野に入れた施設更新計画を立てる必要がある。

C 人材育成と組織力強化

(1) 職員教育

 経営・経理・料金・契約・広報・建設・給配水・浄水・水質・計画・水資源など水道事業の様々な業務におけるプロフェッショナルな人材を適切に配置し続けられるよう、人的確保と職員研修を充実する。

(2) 水道事業管理者・水道技術管理者の適切配置

 水道事業体の組織力強化のためには、水道事業を適切に管理できる人材育成と配置は必須であり、水道事業全体をマネジメントできる水道事業管理者と、技術面でのトータルな知識と経験を有する水道技術管理者を配置する。

D 危機管理対策

(1) 事業継続計画(BCP)を意識した危機管理体制の整備

@ 水安全計画の推進
原水から給水に至るまでの徹底した水質管理体制を構築し得る水安全計画を推進する。

A リスク対策
 水道事業におけるリスク対策とは、自然災害、水源事故、設備・管路・水質事故、テロ、渇水等多岐にわたる。それぞれの分野で起こり得るリスク要因を洗い出し、ハード対策としての施設整備を行うと共に、リスクが現実となった場合のソフト対応として、対応体制、マニュアルの整備、訓練の実施を事業体内及び関係者間で共有しておく。水道技術管理者を中心にした危機管理体制と指揮命令系統を日頃から意識し、日常的訓練や複数事業体が連携した訓練の実施を定期的に行う必要がある。

(2) 施設耐震化対策

 水道施設の耐震化対策として、重要な給水施設(病院、避難所等)への供給ライン、配水池、浄水施設等、優先的に実施すべきものを10年程度で実施し、50〜100年先には全水道施設が耐震化できるよう、耐震化計画を立てる。

(3) 資器材等確保対策(サプライチェーンの把握)

 東日本大震災のような広域的な災害を想定し、通信手段の確保、燃料の備蓄、復旧用資器材・浄水薬品の確保、応急給水のための資器材の準備等、必要物品の抽出と確保について、近隣事業体との連携・共有が不可欠です。復旧用資器材・水道用薬品や燃料の調達は、取引先はもとより流通経路や生産拠点を把握し、確保の確実を期する必要があります。

(4) 応急給水

 被災を想定した応急給水の手法として、
@ 応急給水用資器材の準備
A 避難所や応急給水拠点の設定
B 住民との協同を前提とした住民への周知、及び、水道職員の代わりとなる役割分担と訓練
C 周辺事業体や日水協地方・県支部との交流と連携、受入態勢計画の策定
等を準備しておく。

(5) 停電を想定した対策

 事業運営に多大な電力を消費する水道事業体は、停電事故時に断水を余儀なくされる弱点があります。省電力化による必要電力の削減と共に、自家発電設備や貯水機能の補強も視野に入れるべきです。

E 環境対策

(1) 省エネルギー、再生エネルギーの促進

 省エネルギー対策としては、
@ 省エネ型高効率機器への取替え
A ポンプのインバータ制御
B NAS電池による電力貯蔵システムの採用
C 河川表流水取水の場合取水場を上流に移して自然流下システムを有効利用する
こと等が考えられます。

 新エネルギー・再エネルギー対策では、小水力発電、太陽光発電、バイオマス発電、風力発電等を状況に応じて採用します。

(2) 浄水発生土、建設発生土の有効利用

@ 浄水発生土の有効利用については、セメント原材料、園芸用土、グランド用土等に再資源化が図ります。
A 建設発生土(土砂、アスファルト、コンクリート)はリサイクル施設の活用を図ります。

2)関係者間の連携方策

A 住民との連携

(1) 住民への情報提供

 住民ニーズは水道水の「安全・安定」から「おいしさ」、「災害時でも不断水の水道」等、より高度な要求に変わってきています。人口減少が続く中で事業規模や料金体系の見直しが必要な水道事業者は、運営状況をきちんと需要者に説明し、理解を得ていくことが不可欠な課題となります。水道事業者・住民の双方が十分な理解と協力が得られるよう、さまざまなコミュニケーションツールを活用した双方向の連携により、水道水に対する信頼性の向上を図る必要があります。

 また、将来を担う子供たちに水道や水道を取り巻く環境を正しく理解してもらうために、環境学習や社会学習の場を提供することも必要です。水道水をそのまま飲んでいる人の割合は32%ですが、きき水調査や水道水のペットボトル等を活用して、飲水としての水道水をPRすることも必要です。

(2) 地震等災害時の住民との連携

 大規模地震等の災害時には、地域住民が自ら避難所に配置する応急給水栓の設置や防災倉庫の活用ができるように、防災訓練や研修を通じて体制作りが必要です。

(3) 広報の組織体制

 水道事業に対するステークホルダー(利害関係者)は住民、学校、議会、水道用水供給事業、行政(国、都道府県)、関係団体、研究機関、民間事業者、専用水道・簡易専用水道設置者などですが、それぞれのニーズに合った情報提供や広報活動を展開する必要があります。

B 発展的広域化

 給水量や料金収入の減少を踏まえ水道事業運営基盤の強化を図るためには、新設、更新施設の統廃合や再配置が課題となりますが、近隣事業者や流域単位の水道事業者との広域化も選択肢の一つに加えるべきです。しかし、いきなり行政区域を越えた事業統合はハードルも高いので、近隣事業者と10年スパン以上の遠い将来に目標を据えて、まずは、事業体間で協議会等議論をする場を作ることから始めます。共通の将来像設定や業務部門の共同化(料金徴収、維持管理、水質検査、職員研修等)、共同の施設再配置の検討、そして事業統合の是非等について検討することになります。
 中小規模水道では財政的要因や利害得失が絡むケースも多く、地域全体の財産である水道事業の持続に寄与する観点から、都道府県や中核的市町村が調整役になることが期待されます。

C 官民連携(PPP)

(1) 経営分野以外でのPPP

 公共が経営能力を維持している場合は、民間に任せられる部分を責任分界等の明確な範囲で設定し、PFIやDBO、包括的委託等の契約形態を活用して、民間側裁量余地をより大きくすることで、より効率的な運営を図れるよう配慮します。

(2) 経営分野を含む事業全体のPPP

 公共が経営能力の維持に不安がある場合は、経営管理支援も受けられる形での事務・運転維持管理一体での包括的委託や、経営自体を任せるコンセッション等の活用により、水道事業経営を維持していく手法です。

(3) 共同事業展開型PPP

 公共が高度な経営能力を有する場合、技術力を有する民間事業者と連携して、海外や国内他事業体に対して事業展開を行うことで、公共は自らの経営・技術基盤の一層の強化を図り、民間は事業運営ノウハウを取得することができます。

<用語説明>
@ PPP(Public Private Partnership)とは、官民パートナーシップ、官民連携ともよばれ、行政と民間が協力して公共サービスを効率的に運営することです。

A 第三者(包括的)委託とは『民間事業者が施設を適切に運転し、一定の要求水準(性能要件) を満足する条件で、水道事業の事務・運転・維持管理について民間事業者(受託者)の裁量に任せる』という性能発注の考え方に基づく委託方式で、技術的基盤がしっかりした近隣の水道事業者や民間業者に、業務の一部または全部の管理を水道法の上の責務を併せて委託すること。水道事業者の技術力の確保や人材育成を考慮したうえで、持続可能な運営形態を選択することが重要です。

B PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金・経営能力・技術力を活用して行う手法のことです。今まではPFIの採用は比較的大きな事業体に多く、小規模事業体では導入が進んでいません。
ア VFM(Value For Money:コスト縮減効果)を前提としているため一定規模以上の発注ロットが求められること、
イ 民間側が大規模事業を望むこと、
ウ 水道の運営管理業務について民間事業者の実績・経験が薄いこと
等が阻害原因と考えられます。

C DBO(Design Build Operate 設計→建設→運営)とは、所有権は公共体のままで、民間事業者が施設の設計・建設・管理運営を行います。公共が施設を保有するため固定資産税や都市計画税は非課税です。国庫補助金の獲得等、資金調達を公共が行った場合の方が有利となるケースで採用されます。

D コンセッション方式(Concession)とは、ある特定の事業範囲において、 事業者が契約によって独占的な営業権を与えられたうえで行われる事業の方式です。

D 人材育成

 全ての水道事業体において、ベテラン職員が多数退職し職員数が減少し続けていて、少数精鋭による事業運営となることを踏まえ、職員の技術力・人的資源の向上を図る必要があります。国や地域の教育機関での水道工学研修や水道に関する専門教育を活用した教育プログラムを充実させることが必要です。また、技術力を確保し職員研修が充実している大規模事業者や民間企業との技術協力や人事交流も活用すべきです。

3.その他の課題

1) 料金制度の最適化

 水道事業は設備投資費用が6割程度、職員給与費などを加えた固定費は8割以上を占め、水量に伴って増減する動力費や薬品費などの純粋な変動費は5%程度です。しかし、料金制度は2部料金制(基本料金+逓増型従量料金)とし、収入の7割程度を水量で増減する従量料金で賄い、しかも、多量使用者ほど料金が高くなる逓増型体系を取っているのがほとんどです。この料金体系では大口使用者ほど負担が大きく、節水や地下水等他の水源に依存することを誘発し、水需要が減少傾向にある現在では、需要減少量以上の速さで収入減を招きます。
 固定的費用を基本料金で賄うのが最も安定した料金徴収方法ですが、費用の95%を基本料金で回収することになり、現状では全需要者の理解を得るのが難しいと思われます。逓増性料金からの脱却を視野に置き、経営の安定に向けた新料金体系の見直しを検討する必要があります

 全国の水道料金を比較しますと、概ね20m3/月使用したとして、料金格差は約10倍の開きが生じています。地域による水道の歴史や地理的条件による地域間格差は存在しますが、不公平感を生じさせない料金設定が望まれます。個々の事業体の運営費用の抑制努力は必要ですが、事業運営の実情にそぐわない安価な料金設定は慎むべきで、周辺自治体等の協調による広域ガバナンスにより、人材・施設・資金を安定させ、戦略的に対応することが肝要です。

2) 小規模自家用水道対策

A 簡易専用水道、飲料水供給施設

 安全な水道水を確保するために、水道事業者の関与によるきめ細かい指導、監督を行う管理体制が必要です。

B.飲用井戸の小規模自家用水道

 飲用井戸については所有者において管理すべきですが、水質基準超過が多いのが現実です。H25年4月から全ての市が監督・監視することになり、井戸台帳の整備等の情報収集・整理、所有者への指導・監督、情報公開等の実施が期待されます。

C.直結給水の拡大

 ビル、マンション等の貯水槽水道の管理に不備があると、清浄な水を供給しても建物利用者への水の安全性は確保されません。管理指導の徹底を期すると共に、適正な維持管理が望めない場合は、給水形態を直結給水に改める必要があります

3)多様な手法による水給水の維持

 水道未普及地域解消により建設した遠隔地にある水道施設の更新や耐震化の費用は、その地域が限界集落等の実情がある場合、水道事業者の大きな負担となり実施は困難と考えられます。衛生と安全が確保できれば、その水道がパイプで輸送されるかどうかには拘りません。宅配給水や移動式浄水処理施設の巡回等、需要者である地域住民の合意を得て、水道法に定める「水道」以外の手法による衛生的な水の供給もありえます。この場合、給水栓での水質が水道法の基準を満たしておくことが前提となります。

4.関係者の役割分担

1)行政機関

A 国

@ 制度的対応

ア 人口減少社会に対応した水道事業の計画策定手法を提示する。水道事業認可・変更認可に係る要件、審査内容の再点検を行う。
イ 事業(変更)認可または届出のあった事業に対し、事後審査制度の導入を行う。
ウ 水道給水が困難な未普及地域や過疎地については、行政サービスとしての生活用水供給手段として様々な方策を提示する。

A 財政支援

 重点的な実現方策を推進させる具体的な国庫補助事業を展開し、国庫補助対象事業の重点化、集約化を図ることで、施策体系を充実させる。
B 技術支援

ア 安全な水道水の確保のために、水道水質管理について統合的アプローチを推進し、小規模飲用井戸等の水道法規制対象外施設の衛生確保対策の徹底のため、方策を示す。
イ 水道事業体における耐震化計画の策定推進と耐震化事業の速やかな進捗を図る。単独実施が難しい事業体には、近隣事業体との連携を支援する。
ウ 全ての事業体でアセットマネジメントを推進し、また実践が可能となる仕組みづくりを行う。

B 都道府県

 都道府県水道ビジョンを作成し、都道府県内の水道事業者の策定した水道ビジョンに沿った事業経営が行われるよう、必要な指導をする。

 個々の水道事業体では乗り越えられない財政問題・技術基盤・人材確保等の障害や、水源保全・水質監視・渇水対策等の流域単位で連携すべき事項について、認可権限等の枠にとらわれることなく複数の水道事業者間での広域的な調整を図る役割を担う。

C 市町村

 各市町村の実情に応じて住民が安全な水を確保・利用できるよう公衆衛生の向上に努める

 水道法上の権限として、市では、専用水道・簡易専用水道・飲用井戸等の衛生対策の推進をする。特に、簡易専用水道・貯水槽水道の衛生対策について、水道事業者と衛生行政部局が連携し、さらなる衛生指導強化に取り組む。
 また、町村では、専用水道・簡易専用水道・飲用井戸等の衛生対策について、水道事業部局と都道府県とが連携し、衛生指導強化に取り組む。

2)水道事業者・水道用水供給事業者

 水道事業者・水道用水供給事業者は新水道ビジョンで示された水道の理想像を具現化するために、水道事業ビジョンを定め、その実現に積極的に取り組む。

 水道用水供給事業者は、大規模水道事業者と同様に、都道府県の担う役割への支援、受水団体の水道事業者やその近隣水道事業者の技術的・経営的な支援を行う。

3)自家用水道の設置者

A 専用水道の設置者

 専用水道の設置者や技術管理者は、自らに課せられた水道法上の責務を認識し、適切な管理体制を構築し、水道水の衛生を確保する。

B 簡易専用水道、小規模貯水槽水道の設置者

 簡易専用水道の設置者は、水道法に基づき、清掃・点検等の管理や定期検査の受診により管理責任を果たし、飲用に適する水の供給を行う。

 小規模貯水槽水道の設置者は水道法の規制は受けないが、自治体の条例や要綱等、供給を受ける水道事業者の供給条件を順守し、適切な管理を行う。

C 飲用井戸等の小規模自家用水道等

 飲用井戸等は所有者や設置者がその責任において管理します。現実には、水質基準の超過事例が多く管理実態が不明であるため、健康影響の問題が生じる懸念があります。地方公共団体の衛生対策に協力し、井戸等の管理水準を向上させることが必要です。

4)登録検査機関

 水道法に基づく登録検査機関は、水質検査を代行する機関と、専用水道の維持管理状況を検査する機関があり、万が一の場合の迅速な水質検査の実施や施設の状況の確認等、緊急的な対応を図られる利点を生かして、単なる検査のみでなく、きめ細かい水質管理のノウハウを提供することで、地域の安全な水の供給を支える役目があります。

5)水道関連団体

 水道事業者や民間事業者が組織する団体は、団体構成員の資質向上のための取り組みや水道に関する調査研究等を行うことで、新水道ビジョンで示される「理想の水道像」の具現化に寄与します。

 大規模災害時等の緊急事態時には、水道事業を支えるセーフティネットとして、人材・資器材などの調達や様々な支援体制を構築します。

6)民間事業者

 水道に関わる民間事業者は、市場(国内/国外)、業務内容(建設/運転管理/事務)、対象水道事業規模(大規模/小規模)によって異なる役割を求められています。また、期待される役割も年々大きく幅広くなってきて、民間事業者間の連携や統合なども視野に入れた総合力の向上が求められています。高度な水処理技術の実用化や情報通信技術の導入など、水道システムの合理性の向上に寄与し、水道事業の運営基盤強化、住民サービスの向上に繋がるよう、水道の牽引役となることが期待されています。

 水ビジネスの国際展開では関係者との連携を密にして、水インフラの技術移転や水道システムの技術提携など、官民連携の牽引役としても期待されています。

7)大学・研究機関

 水道分野の専門知識を修めた人材の輩出、水道に関する先進的な知見の発信、新しい水道技術の検証や実用化、水道事業者への技術面・経営面での助言を行う。

8)住民

 多大な投資を必要とした装置産業である水道事業の性格をよく理解し、それに見合う対価を支払う納得感を持てることが重要です。水道事業者とのコミュニケーションを図りつつ、水道は住民の財産であり、自らが水道の経営者であるという認識を持って、住民と水道事業体が協同した水道つくりを実現します。

2013.06.24 初版