渇水対策について

はじめに

 近年、地球温暖化の影響か、雨の降り方が多雨か小雨の二極化傾向があり、さらに、多雨の年と小雨の年の差が大きくなっている傾向があります。水道は、国民の健康で快適な生活と経済社会の発展を支える根幹的な施設です。大部分の国民にとって、水道が事実上唯一の水確保手段となりつつある中で、渇水によ水道の減断水が生じると、国民生活や産業に重大な影響を及ぼします。たとえ渇水時であっても、給水栓から安全で良質な水道水を確保できるよう、水道事業体は最大限の努力を行う必要があります。

<過去の出題例>
H15年A.水量的な安定性の確保のために水源から給水まで水道システムを通じて配慮すべき項目と具体的な対応策について述べよ。
H9年A.渇水時における水資源の有効利用方策について述べよ。
H8年B.節水型社会を推進するに当たってあなたの考えを述べよ。

1.今後の渇水の見通しは

 気象研究所の調査によりますと、日本では過去100年間に、大雨と雨が降らない日が増加した一方で、弱い雨の日が減少し、雨の降り方が二極化傾向にあるそうです。
 一日に100mm以上の雨となった日は、全国51地点の平均で、1901年から4年間では0.89日/年、2001年から4年間の平均は1.11日/年で約25%増加しています。百年前と比べて、無降水(1mm未満)日も年241日から255日に増えていますが、逆に弱い雨(1〜5mm)の日は49日から42日に減少しています。
 大雨は温暖化で大気の水蒸気量が増え、積乱雲などの雲ができやすくなったことが一因としていますが、無降水日が増えた原因は分かっていません。
 温暖化が進む世紀末(2081年〜2100年)の平均では、100mm以上の年間日数が全国的に増え、多いところで3日増え、無降水日は広い範囲で1日〜8日以上増えると予測しています。
 気象庁の気候統計では、2005年は渇水でした。東海から四国にかけて降水量が少なく、名古屋市、津市、室戸市など5つの地点で年降水量の最小値の記録を下回ったそうです。特に名古屋市は平年の58%900.5mmでした。地域的には、年降水量は平年と比べ、東海72%、近畿74%、四国77%でした。

 また、多雨の年と小雨の年の差が大きくなっていて、特に1960年代半ばからその傾向が顕著になってきているそうです。降雨の二極化に伴い、大災害をもたらす短時間の大雨による洪水対策と共に異常渇水時での安定給水の確保が重要なテーマになるものと思われます。

<2018.9.2日本経済新聞>
 「はじめに」と1.の上記文章は2006年時点での水道関連新聞に載った記事ですが、猛暑となった2018年夏に関する2018年9月2日付け日本経済新聞の水関連記事を紹介します。

 2018年夏は記録的な猛暑が世界各地を襲いました。7月には東京で40度超えを記録し、米サンフランシスコは高温が原因で大規模な山火事に見舞われました。スウェーデンも、今夏「建国以来最悪」と言われるほどの山火事が発生しています。首都ストックホルムで2018年8月31日までの6日間、130カ国以上の政府や企業など約380組が参加した国際会議「世界水週間」が開かれ、分科会では異常気象を踏まえた水不足の問題が取り上げられました。地下水の減少やIoTで水資源を管理できないかといった議論がありました。

 参加したグローバル企業も水対策に本気で取り組むようです。20世紀は石油をめぐる戦争でしたが、21世紀は水をめぐる戦争になるのではと言われています。企業が長期的に成長するためには「水の確保」が重要なテーマとなるみたいです。 

2.水道水源の開発

1) 水源の分類

 水道水源は地表水、地下水、その他に分類されます。
 地表水は、河川自流水、湖沼水、ダム水があります。自流水や湖沼水は農業等さまざまな取水がされており、新たな水源を求めることは困難と思われ、ダムの開発が一般的です。
 地下水は、不圧地下水(浅井戸)、被圧地下水(深井戸)、伏流水があります。

 伏流水は地表水が地下に潜った状態の水ですから、地表水の水利権が必要になります。
 地下水は、降雨の影響をほとんど受けず安定的に取水ができ、水質も良好な場合が多く、施設建設費や維持管理費が安いメリットが多くあります。しかし、大量の水をくみ上げるには限度があり、地盤沈下対策として揚水規制があるところもあります。良好な水質のものを得ることができれば、小規模の水道事業には適した水源です。

 その他の水源としては、非常に安定した水源として海水がありますが、現時点では給水コストが高くつき、高度な処理技術が必要なことから、島嶼部の水が逼迫したところや渇水が日常化している地域に利用が限定されます。(詳しくは水道よもやま話の「海水の淡水化」を参考にして下さい)

2) ダム建設

 水道水源は水量・水質の両面で安定して利用できるものでなくてはなりません。河川水は水量の変動が大きいことから、年間を通じて利用できる水量は限定されます。また、地下水も、賦存量や地盤沈下等の影響から利用できる量には限りがあります。従って、新たな水源を確保するにはダムの建設に依存する場合が最も多くなります。
 河川の利用が進むにつれて、同じ河川で同じ量の開発を行う場合、一般的には後発のものほどダムの規模は大きくなります。このため、水資源の開発効率(単位ダム容量当たりの開発水量)は低下しダム建設に要する費用は増加します。
 水資源の開発は
@ 開発の適地が限られていること。
A 施設の建設に長期間を要すること。
B 水道、農水、工業用水、河川管理者等利水関係者が多いこと。
C 近年は脱ダムの市民意識が広まっており、ダムの建設促進に関する理解が得にくいこと。
等の問題があり、総合的な見地で合理的に計画・実施する必要があります。

3) その他の河川開発

 河川の水資源開発方法には、ダム建設の他に、河口堰の築造、湖沼あるいは既存ダムの再開発(湖沼の流出部に堰を設けたり、嵩上げして、新たな貯水量を生み出す手法)、流況調整河川(複数の河川を水路で連絡し流況を調整・改良する)などがあります。

3.ダム水源の有効利用

1) 用水転用の推進

 農業用水は相次ぐ減反政策により遊休田が多くなっていますし、工業用水道は企業の用水合理化の徹底や進出企業の撤退等で、共に余剰水を抱えているケースがあり、その水源を水道水に転用する方法が考えられます。水の有効利用という観点からも推進すべき施策と言えましょう。用水転用を行うには、確保できる水源量とその安定性、転用する水源と浄水場との位置関係、譲渡コスト等を十分に検討する必要があります。

2) 渇水時における水利使用の調整

 渇水でダム貯水量が減少し利水者に被害を及ぼしそうな状況が予測されますと、河川管理者と利水者からなる渇水調整協議会が開催され、渇水被害を最小限に食い止めるための取水制限率を定める等の渇水調整を行います。各利水者は会議の内容に従って、代替え水源の確保や給水制限、農水等の取水制限や水稲の節水栽培の指導等を行います。
 ダム管理者は同一水系内の複数のダム群全体の総合効果を最大限に発揮するような運用、すなわちダムの統合管理を行うよう努めます。

4.水使用の合理化

 将来にわたり水道が断水のない安定した給水を確保するには、水需要に見合う安定した水源を確保することが第一ではありますが、水道事業体においても水使用のあり方を見直すことも重要です。水供給が需要を賄いきれない恐れのある事業体では、積極的な節水対策の推進が必要です。以下、その具体策について触れてみます。

1) 原水あるいは浄水の運用面

@ 原水調整池
 原水調整池は取水施設と浄水施設との間に一時的に原水を貯留する池で、水需要の変動を調整したり、事故時等の緊急時においても必要な原水を確保できる施設です。大都市や人口集中地域では用地的な問題があり、施設を地下に建設したり、導水施設との共用化が検討されています。

A 相互連絡管
 多系統に水源を有している場合や他の事業体が隣接している場合、あるいは広域水道が隣接している場合、原水もしくは浄水の相互連絡管を整備して、水系間あるいは事業体間の相互融通を行えば、保有水源の有効利用が図れ、渇水時の安定性が大幅に向上します。

B 浄水施設の水資源ロスの削減
 漏水が顕著な老朽した水道施設の更新や浄水場内の水のクローズドシステム化を図り、水使用の有効利用度を向上することが重要です。

2) 配水運用面

@ 漏水防止対策
a 老朽配水管の布設替
 石綿セメント管や印籠継ぎ手鋳鉄管のような漏水多発管や腐植の著しい老朽配水管は計画的な布設替により更新することが漏水防止対策の基本です。
 配水管や給水装置の耐震化は漏水防止の観点からも有意義です。
b 定期的漏水調査の実施
 音調調査・相関分析・リークゾーンテスト等による定期的な漏水調査は漏水の早期発見、漏水事故の未然防止上非常に有効なものです。管路の老朽度を考慮した配水区域を数年間で一巡する漏水調査計画に基づく定期的漏水調査の継続は重要です。
c 漏水の早期発見システムの構築
 配水管網の小ブロック化を推進し、ブロック内の配水量監視と異常発見時の可搬式流量計による時間配水量の計測により、漏水の早期発見が可能となります。
 また、加圧施設では時間配水量の常時監視システムによる漏水発見が有効です。
d 配水圧の適正化
 配水管網のブロック化や減圧システムの整備により配水管圧を適正に保ち漏水量を軽減させるものです。

A 配水池容量の増大
 配水池は配水量の時間変動を調整する機能と共に、非常時にはその貯留量を利用して需要者への影響の軽減を図ります。配水池容量の増大は、事故時の安定給水上有効に働きますが、時間断水解除時での急激な使用量増大に備えるためにも必要な措置です。

3) 雑用水の利用

 雑用水利用とは、生活用水の中で、水洗トイレ用水、冷却・冷房用水、散水などの用途に、下水・産業排水等の再生水や雨水・地下水等、水道水と比較して低水質の水を使用することの総称として使われています。

 雑用水利用の目的や効果としては次のことが挙げられます。
@ 再生水や雨水・地下水等を利用することにより、渇水対策としての水道水の使用を減少できる。
A 再生水を利用する場合は、下水道における排水量や汚濁負荷量を減少することにより、排水処理施設の負担軽減と共に公共用水域の水質保全にも寄与できる。
B 利用者にとって渇水時の給水制限時の水利用に有効である。

 導入方式としては、その規模によって次の3種類があります。
@ 個別循環方式
 ビル等の個別の建築物内で処理・利用される雑用水システム
A 地区循環方式
 大規模な集合住宅群や市街地開発地域等の複数の建築物において共同で利用される雑用水システム
B 広域循環方式
 一定の地域内の複数の建築物に対し、一般に下水処理場などから広域的かつ大規模に供給される雑用水システム

 課題としては次のようなことがあります。
@ 利用コストが高い
 再生水を利用する場合は、汚水を個別小規模に高度処理し、水道とは別系統の配管で給水するため、一般的には上水道より高くつく。
A 水道と間違えない工夫が必要
 水道水より低水質な水を供給するため、飲用に供されないことを大前提に、保健・衛生面から安心できる利用方法を確立することが重要です。

5. 節水による水使用の抑制

1) 節水PR

 市民に対し、水源開発の現状、水事情の動向や節水意識の浸透や節水行動の啓発等節水PRや学習会・シンポジウムの開催を通して節水に協力する市民意識の醸成を図ります。
 風呂の残り湯を利用した洗濯や散水等具体的な節水行動を解りやすい広報で広める工夫が必要です。

2) 節水機器や雨水利用機器の普及と補助制度

 節水機器としては、節水コマ、シングルレバー式湯水混合蛇口、追い炊き式風呂釜、風呂水吸引ポンプ付節水型洗濯機、節水型皿洗い機、節水型便器、家庭用バスポンプ等さまざまな製品が開発されています。これらの節水型機器の使用を奨励すると共に購入に対する補助制度を設けている自治体もあります。

 家庭や企業において、雨水の利用を促進するため、雨水の貯留タンクやポンプ配水システムに対して補助制度を設けている自治体もあります。

3) 企業による節水傾向(2018.9.2日本経済新聞)

 足元の企業活動ではあまり顕在化はしていませんが、温暖化でじわじわと水不足の懸念は高まっています。地震や豪雨といった災害対策とは別に、水資源の確保に向けた水使用量の削減が、企業のリスク管理能力として問われる大きなテーマとなりつつあります。

 半導体製造工場で多量の水を使う三菱電機は「環境対策の柱は温暖化ガスの削減だったが、これからは水不足対策も重点を置く」とのことで、2018年度は一定の売上高当たりの水使用量を1%削減する目標を設定しました。日産自動車は1台の車生産に使う水使用量を2022年には2010年比で約20%節減する計画としています。味の素は生産量当たりの水使用量を2030年度に2005年比の80%削減、、コマツは生産金額あたりの水使用量を2030年までに2010年比で国内では50%減、国外で20%減としています。

 ノバルティス製薬・ネスレ・フォードモーター・P&G/ケロッグなどグローバル企業も水使用削減策を打ち出しています。

6.水資源の保全策

1) 水源涵養設備の整備

 市街地での地下水の涵養を促進するため、透水性舗装雨水浸透枡の整備も有効に働きます。

2) 水源涵養林の整備

 水源地域の森林は、水源の涵養やダム貯水池への流入土砂の軽減という機能があります。このため、森林の水源涵養機能の保持のために、造林作業、林道の整備、崩壊地の予防や修復等、森林育成の計画的実施が不可欠となります。
 水道事業体でも、自らの水源林を保有し管理を行っているケースもありますし、都道府県の「水源の森基金」等に参加し、水源涵養のための水源林の造成・整備に協力している事業体も多くあります。

<参考> 水源税と環境新税
@ 水源税
 森林が持つ水源の涵養機能に着目して、森林経営が困難になる中での森林の保全・整備に要する費用を税の形で水道事業者から徴収しようとする水源税導入の動きが時折浮上します。
 水道事業体は
@ 森林の恩恵は広く国民が享受しており、水道使用者のみに賦課徴収することは公平性に欠ける
A 水道料金の実質的値上げにつながる。
という、反対意見を出しています。
 水源林基金等による水源林整備の費用負担は、逼迫する水受給に対して水源地域への友好的関係に配慮する事情によるもので、林業経営の不振に対する財源確保のための基金とは性格が異なるものとポチは思っています。幸いにして、水源税の導入は今のところ実現していません。

A 環境新税
 「水源税がダメなら」ということもないのでしょうが、森林の保全や水源の涵養など、「環境対策」を目的に掲げた新税を導入する県が相次いでいます。2005年6月時点で全国47都道府県のうち27県が森林の保全や水源の保護を目的とした独自課税を決定済みか検討中とのことです。県民税に上乗せして徴収する「超過課税」方式が一般的で、一般住民に対する事実上の増税となっています。環境目的なら住民や議会の理解を得やすいということでしょうかね。自治体独自の課税が総務省(当時自治省)の許可制から協議制に緩和された00年4月以降にこの動きが始まったそうです。

7.渇水時における渇水対策

1) 渇水の初期段階

@ 需要者に対する節水広報
A 工業用水道大口需要者に対する自主節水要請
B 官公署、公共施設等に対する節水協力要請
C 河川管理者や各種利水者による渇水調整会議の開催

2) 渇水対策時

@ ダムの統合管理の実施
A 需要者に対する節水広報の強化
B 需要者に対する節水コマの配布
C 農業者に対する節水栽培方法の徹底、水の反復利用の強化、水使用時期の調整
D 工業用水大口使用者の給水制限
E 緊急代替え水源の確保
F バルブ調整による官公署・公共施設・大口使用者等に対する使用・給水制限
G 減圧・時間給水による全市給水制限
H 給水車による緊急給水

8.渇水関連トピックス

8−1.水バンク制度の導入

 国土交通省は2007.7.31、地球温暖化の影響などで減少が懸念される水資源の有効利用に向け、同じ水系やダムを共用している地方自治体などの水利権者同士が未利用水を売買できる「水バンク」制度を導入する方針を固めました。2008年の通常国会に河川法など関連法の改正案を提出し、夏にも導入したい意向です。

 現行の河川法は水利権者の協議により、水利権で定めた水量の範囲内で融通し合うことは認めていますが、未利用水の売買はできません。水利権は財産性を有しており譲渡も可能なのですが、それは既に利用目的が定まっていて水利権を認められている水量についてのみ譲渡可能と言うことなのです。例えば、農業用水として水利権は持っているものの、減反等の事情で使用量が減り、その結果河川水が増量しているという実態が認められれば他用途にその減量分を譲渡しても良いということです。水使用権はあるものの実質的な利用の形態が無い未利用水については、現行河川法では売買はできないという実態があります。

 水バンク制度では、国、自治体などが作る新組織や独立行政法人「水資源機構」など、公的な第3者機関が水バンクとして未利用水を購入して、水不足の水利権者に販売します。売り手が得る収入は、水道用水なら水道料金の値下げ、工業用水ならダムの建設負担金の償還等に充当できます。将来の水不足に備えた受給権の「貯蓄」も可能にするといった経済原理を導入し、用途ごとに生じている水資源の過不足を円滑に調整するのがねらいです。

 財政状況が厳しい買い手については、分割払いを認めるほか、渇水時の飲用水をはじめ公共性が高い場合は無償提供します。投機的な水取引で水の価格が高騰しないよう、民間企業は水バンクとしては認めません。2006年現在で、未利用水は工業用水の23%に当たる13.35億トンが、水道水の9%に当たる10.79億トンが存在しています。水バンクを介した売買により、夏場に不足しがちな飲用水や農業用水向けなどへ転用する需要が見込まれます。

<水利権>
 水利権とは、河川法で認められている河川などの水を利用する権利です。水道用・工業用水用は地方自治体が、農業用は土地改良区組合が水利権を保有しています。国など河川管理者が権利を与え、10年に1度更新しています。河川法では、水利権を持っているもの同士の一時的な水の融通は認めていて、融通元の経済的な損失は両者が調整し保証します。

8−2.早明浦ダムで人工降雨実験

 気象庁気象研究所や東北大学・京都大学等が参加する研究グループが、四国の水がめ・早明浦ダム(高知県)の周辺で、来年の夏から渇水対策を目的とした人工降雨実験を行う計画を明らかにしました。

 実験は、2008年5月〜7月にかけて実施されます。上空の雲に航空機から塩の微粒子か又はドライアイスを散布するもので、氷点下の雲では、水蒸気を主成分とする雲にドライアイスをまいて急激に水蒸気を冷却し、それによって出来た氷の粒が大きくなり、落下しているうちに溶けて雨となるという仕組みです。また、雲の温度が零度以上の場合は、1μm程度の塩の微粒子をまき、塩の微粒子が塩の持つ吸湿性により周囲の水蒸気を集めて雨粒を作って雨を降らすというしくみです。

 散布実験は10回行い、大気の状態等のデータを収集します。この計画は、文部科学省の科学技術振興調整費(2億円/年)得て、2006年度から研究をスタートし、2010年まで毎夏、四国で実験を行うそうです。

 研究チームが群馬・新潟県で行ってきた冬場の人工降雪実験データでは、理論的には一冬最大40%の降水量増加が可能ということです。人工降雨実験は戦後本格的に始まったものですが、効果の確認が困難であるため、十分なデータが得られていないのが実情で、世界的に最新・最大規模のこの実験に期待が寄せられています。西日本でちょっと渇水傾向が報じられると、早明浦ダムの水位低下がすぐに話題になるほど水資源に逼迫した地域ですので、この実験が成功することを祈りたいですね。

8−3.巨大水袋による水輸送成功(2007.10.24朝日新聞他)

 07.2に下記のようにお知らせしました、「巨大水袋による水輸送」は07.3に実験されましたが、水袋が破れて失敗に終わっています。今回、07.10.22〜23に行われたリベンジの実験は成功しました。

 前回と同じ大きさの長さ44m、幅10mでウレタン樹脂コーティングした高強度の複合繊維製の水袋を牽引するための金具部分周辺が破れないように強度を高める等の改良を施し、1000トンの真水を入れて、和歌山県新宮市からタグボートに引かれて紀伊半島を横断し、約170Km離れた徳島県阿南市に無事到着しました。

 水資源機構などによるこの実験は、災害や渇水の際に低コストで水を運ぶ手段を確立することが目的です。流線型をした水の抵抗を抑えた袋を海に浮かせて引っ張る手法は、高いレベルで衛生状態を保つ必要がある飲料水をケミカルタンカー船に積んで運ぶより低コストで済むそうです。水の恵まれる新宮市から、慢性的な工業用水不足を抱える阿南市まで水を運びました。

 更に改良を加えて実用化を目指し、飲料水不足に苦しむアジアや中東などでの実用化も考えられています。

<参考>巨大水袋による水輸送(2007.2.23朝日新聞他)
 渇水時や災害時の飲料水、工業用水の供給を目的に、水を貯めた巨大バッグを船で引っ張り輸送する国内初の試験が2007.2.22紀伊半島の熊野灘で行われました。

 巨大バッグは高強度の複合繊維製で全長44m、幅10m、厚さ4mあり、約1000トンの水が入ります。

 この日は、水を満タンにした巨大バッグをタグボートで引っ張り、新宮港(和歌山市新宮市)から潮岬まで片道約50Kmを時速7Kmで約11時間かけて往復しました。この牽引試験は2007.2.26〜3.4迄の日程で新宮港と徳島県阿南市の富岡港間約170Kmを2往復します。富岡港では水を陸揚げする試験も行われるそうです。






8−4.節水推進へキャンペーンを実施(2009.5.19官庁速報)

 高松市を中心とする香川県讃岐地方は毎年のように渇水に悩まされています。その高松市における節水対策を紹介します。

 高松市は、6〜8月を節水強化月間とし、節水意識を高めるために、水道使用量を一定量減らした市民や事業所に特典を与える節水キャンペーンを実施します。対象は、市水道局発行の検針票が届く市民や事業所です。今年の8月か9月検針分の水道使用量が昨年同期比で3%以上節減できた場合にキャンペーンへの応募資格が与えられるというもので、抽選で、市民には食器洗い乾燥機やミニサイズの雨水タンクなどをプレゼントします。事業所には、節水取り組み推進事業所を示すステッカーを交付し、市ホームページで事業所名を公表します。

 水環境対策室は「家庭や事業所でさなざまな節水工夫をしてもらい、キャンペーンに応募してほしい」と願っています。

2006.01.26 初版
2007.12.25 「8.渇水関連トピックス」を追加
2008.01.22 「8−2、8−3」の加筆
2009.05.27 「節水推進へキャンペーンを実施」を加筆