・ 高度経済成長期に整備された施設が老朽化。年間2万件を超える漏水・破損事故が発生。
・ 耐用年数を超えた水道管路の割合が年々上昇中(H27年度13.6%)。
・ すべての管路を更新するには130年以上かかる想定。
・ 水道管路の耐震適合率は4割に満たず、耐震化が進んでいない(年1%の上昇率)。
・ 大規模災害時には断水が長期化するリスク。
・ 水道事業は主に市町村単位で経営されており、多くの事業が小規模で経営基盤が脆弱。
・ 小規模な水道事業は職員数も少なく、適切な資産管理や危機管理対応に支障。
・ 人口減少社会を迎え、経営状況が悪化する中で、水道サービスを継続できないおそれ。
・ 約3分の1の水道事業者において、給水原価が供給単価を上回っている(原価割れ)。
・ 計画的な更新のために必要な資金を十分確保できていない事業者も多い。
これらの課題を解決し、将来にわたり、安全な水の安定供給を維持していくためには、水道の基盤強化を図ることが必要。
人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、所要の措置を講ずる。
① 国、都道府県及び市町村は水道の基盤の強化に関する施策を策定し、推進又は実施するよう努めなければならないこととする。
② 都道府県は水道事業者等(水道事業者又は水道用水供給事業者をいう。以下同じ。)の間の広域的な連携を推進するよう努めなければならないこととする。
③ 水道事業者等はその事業の基盤の強化に努めなければならないこととする。
① 国は広域連携の推進を含む水道の基盤を強化するための基本方針を定めることとする。
② 都道府県は基本方針に基づき、関係市町村及び水道事業者等の同意を得て、水道基盤強化計画を定めることができることとする。
③ 都道府県は、広域連携を推進するため、関係市町村及び水道事業者等を構成員とする協議会を設けることができることとする。
① 水道事業者等は、水道施設を良好な状態に保つように、維持及び修繕をしなければならないこととする。
② 水道事業者等は、水道施設を適切に管理するための水道施設台帳を作成し、保管しなければならないこととする。
③ 水道事業者等は、長期的な観点から、水道施設の計画的な更新に努めなければならないこととする。
④ 水道事業者等は、水道施設の更新に関する費用を含むその事業に係る収支の見通しを作成し、公表するよう努めなければならないこととする。
地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、厚生労働大臣等の許可を受けて、水道施設に関する公共施設等運営権※を民間事業者に設定できる仕組みを導入する。
※公共施設等運営権とは、PFIの一類型で、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を地方公共団体が所有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式。
資質の保持や実体との乖離の防止を図るため、指定給水装置工事事業者の指定※に更新制(5年)を導入する。
※各水道事業者は給水装置(蛇口やトイレなどの給水用具・給水管)の工事を施行する者を指定でき、条例において、給水装置工事は指定給水装置工事事業者が行う旨を規定。
・2019.4.12に改正水道法を2019.10.1~施行することを決定した。
・水道施設台帳の義務化は令和4年(2022年)9月30日まで適用しない。
〇 法律の目的における「水道の計画的な整備」を「水道の基盤の強化」に変更する。(第1条)
〇 国、都道府県、市町村、水道事業者等に対し、「水道の基盤の強化」に関する責務を規定する。特に、都道府県には水道事業者等の広域的な連携の推進役としての責務を規定する。(第2条の2)
〇 国は、水道の基盤を強化するため、基本方針を定めることとする。(第5条の2)
〇 都道府県は水道の基盤を強化するため必要があると認めるときは、関係市町村及び水道事業者等の同意を得て、水道基盤強化計画を定めることができることとする。(第5条の3)
○ 都道府県は、水道事業者等の間の広域的な連携の推進に関して協議を行うため、水道事業者等を構成員として、広域的連携等推進協議会を設置できることとする。(第5条の4)
○ 水道施設の適切な管理(維持管理水準の底上げ)
・老朽化等に起因する事故の防止
・点検・補修履歴等を含め、水道施設の適切な把握に基づく管理の実施
○ 大規模災害時等の危機管理体制の強化
・大規模災害時に円滑に応急対策活動できるよう、水道施設の基礎情報を整備・保管
○ アセットマネジメントの精度向上
・施設の長寿命化による投資の抑制
・保有資産の適切な把握とその精度の向上
・水道施設の更新需要の平準化
○ 広域連携や官民連携等のための基礎情報として活用
・広域連携や官民連携等の実現可能性の調査・検討等に用いる施設整備計画・財政計画等の作成に活用
○ 水道施設の点検を、構造等を勘案して、適切な時期に、目視その他適切な方法により行う
(例) 点検のルール化を明示するもの 点検内容
・点検計画書 ・対象の施設
・点検の方法 ・マニュアル
・点検記録表等 ・点検の頻度等
○ 水道施設の点検の結果、異状を把握した場合には、維持又は修繕を行う
○ 特に、基幹となる水道施設に多く用いられ、また、点検及び補修等を適切に実施すると、施設の更新需要の平準化に有効となるコンクリート構造物については、運転に影響に与えない範囲で目視が可能なものについて、次のとおりの対応とする
・ 概ね5年に1回以上の頻度で点検を行う
・ 点検した際は、「点検の年月日」、「点検を実施した者の氏名」、「点検の結果」を記録する[同施設を次に点検を行うまで保存]
・ 点検した結果、施設の劣化を把握し、修繕を行った場合には、その内容を記録する。[当該施設を利用している期間保存]
∴ 水道事業者等が点検を含む維持・修繕を行うにあたり参考となるよう、「水道事業の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン」を作成予定
○ 管路調書:管路区分・設置年度・口径・材質・継手形式毎の管路延長
○ 施設調書:管路以外の水道施設の名称、設置年度、数量、構造又は形式、能力
○ 水道施設の全体像を把握するための配置図
・ 市区町村名とその境界線
・ 給水区域の境界線
・ 主要な水道施設の位置及び名称
・ 主要な管路の位置
・ 方位、縮尺、凡例及び作成の年月日
○ 水道施設の設置場所や諸元を把握するための平面図
・ 管路の基本情報(管路の位置、口径、材質)
・ 制水弁・空気弁・消火栓・減圧弁及び排水設備の位置及び種類
・ 管路以外の施設の名称、位置及び敷地の境界線
・ その他地図情報(一般図の記載事項、附近の道路・河川・鉄道等の位置)
○ 形式を問わず整備すべき情報
・ 管路の設置年度、継手形式及び土かぶり
・ 水道メーターの位置
・ 制水弁・空気弁・消火栓・減圧弁及び排水設備の形式及び口径
・ 道路、河川、鉄道等を架空横断する管路の構造形式、条数及び延長
・ 給水管に関する情報(口径・材質など)
・ 工事図面
・ 写真情報
・ 制水弁の開閉状況など
・ 過去の工事記録整理
・ 職員OBへの聞き取り調査
・ 現地調査で把握
・ 当該市町村の他の社会資本の整備状況から推測
・ 隣接市町村の同種施設(例えば、同種管路等)の整備年度から推測
水道事業者等は、長期的な観点から、水道施設の計画的な更新に努めなければならないこととし、そのために、水道施設の更新に要する費用を含む収支の見通しを作成し公表するよう努めなければならないこととする。(第22条の4)
○ 最低限の生活を保障するための水道の経営について、市町村が経営するという原則は変わらない。
○ 一方で、水道の基盤の強化のために官民連携を行うことは有効であり、多様な官民連携の選択肢をさらに広げるという観点から、地方公共団体が、水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、水道施設の運営権を民間事業者に設定できる方式を創設
○ 具体的には、地方公共団体はPFI法に基づく議会承認等の手続を経るとともに、水道法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けることにより、民間事業者に施設の運営権を設定。
※運営権が設定された民間事業者(運営権者)による事業の実施について、PFI法に基づき、・運営権者は、設定された運営権の範囲で水道施設を運営。利用料金も自ら収受。
・ 地方公共団体は、運営権者が設定する水道施設の利用料金の範囲等を事前に条例で定める。
・ 地方公共団体は、運営権者の監視・監督を行う。
○地方公共団体以外の水道事業者が事業の休止・廃止に関わる水道法第11条第2項に規定する政令で定める基準については、許可申請を義務付ける給水人口の要件を「5000人を超えるもの」としている。
○ 従来(H8年度以前)は、各水道事業者が独自の指定基準で給水装置工事を施行する者を指定していたが、規制緩和の要請を受け、平成8年に全国一律の指定基準による現行制度を創設。
・ 各水道事業者は給水装置工事を施行する者を指定できる(水道法第16条の2)
(参考)
各水道事業者は給水装置(蛇口、トイレなどの給水用具・給水管)の工事を施工する者を指定することができ、条例において、給水装置工事は指定給水装置工事事業者が行う旨を規定。
・ 指定要件の全国統一化・明確化(水道法第25条の3)
⇒指定要件(3項目):給水装置工事主任技術者の選任、工具の保有、欠格条項
・ 給水装置工事主任技術者は技術上の管理を担う者として国家資格化(水道法第25条の4)
○ 広く門戸が開かれたことにより、事業者数が大幅に増加。
H9:2万5千者→H25:22万8千者、約9倍
○ 現行制度は、新規の指定のみで、休廃止等の実態が反映されづらく、無届工事や不良工事も発生。
・ 所在不明な指定工事事業者:少なくとも約3千者
・ 違反工事件数:1,740件/年
・ 苦情件数:4,864件/年
・ 各水道事業者が公表している指定給水装置工事事業者リストに連絡がとれない指定給水装置工事事業者が掲載されている。(一部水道事業者が確認しているだけで約3千の不明工事事業者が存在)
・ 不明工事事業者は、水道事業者からの指導監督や情報提供が行えないため資質の低下が懸念。
・ 連絡がとれないなどといった水道利用者からの苦情の原因。
・ 無届工事や構造材質基準不適合などの違反行為は、水道事業者が把握しているだけでも1,740件発生。
・ 直接水質事故につながりかねないクロスコネクション(※)のほかに、虚偽報告等の悪質な違反行為も発生。
※給水装置と給水装置以外の管(工業用水道など)を誤接合すること
図1 違反行為の内訳(複数回答を含む)
・ 水道利用者からの苦情件数は4,864件に上る。苦情の内訳は「連絡不通」、「対応が遅い、悪い」、「費用が高額」が多く、修繕の施行不良など技術力の不足による苦情もある。
・ 国民生活センター、消費生活センター等に寄せられた水道工事や水道等の修理サービスに関する消費生活相談は約1,000(件/年)であり、横這い傾向で減っていない。
図2苦情の内訳(複数回答を含む)
○ 工事を適正に行うための資質の保持や実体との乖離の防止を図るため、指定給水装置工事事業者の指定の更新制(5年)を導入する。 従来の指定の要件を変更するものではない。
(参考) 指定の基準
・ 事業所ごとに、給水装置工事主任技術者を置くこと
・ 切断用器具等の機械器具を有する者であること等
・平成10年4月1日~平成11年3月31日に指定を受けた事業者=1年
・平成11年4月1日~平成15年3月31日に指定を受けた事業者=2年
・平成15年4月1日~平成19年3月31日に指定を受けた事業者=3年
・平成19年4月1日~平成25年3月31日に指定を受けた事業者=4年
・平成25年4月1日~平成26年9月30日に指定を受けた事業者=5年
・平成26年度以降に指定⇒施行後5年は指定が有効
更新申請の受付期間は、「その期間の合理的な範囲内で、各水道事業者が別途設定できる。」1年間必要とするものではない。
厚労省は、更新制導入に関する条例改正が、改正水道法施行日である2019.10.1以降となっても支障はないとしている。
1 更新手数料を徴収する場合の条例等の改正
2 指定事業者に関する規定要綱等の改正
3 既存の指定事業者のデータ整理
4 指定事業者への更新等に関する周知・広報
5 指定事業者への有効期間の通知
6 更新申請の受付作業や申請場所等の検討
7 手数料や申請の受付作業等に関する予算措置
○ 指定工事事業者講習会の受講状況
○ 利用者が指定工事事業者を選択する際に有用な情報となるようなわかりやすい情報発信の一つとして活用することが有効。
○ 主任技術者等の研修会の受講状況
○ 配管技能者の配置状況
○ 指定工事事業者の業務内容
○ 確認した情報をもとに、指定工事事業者を指導することで、資質の保持を図り、安全で信頼される給水装置工事の確保と違反行為・苦情・トラブルの減少につなげる。
○ 利用者が指定工事事業者を選択する際に有用な情報となるようなわかりやすい情報発信の一つとして活用することが有効。
改正水道法第2条の2第2項で、「都道府県はその区域の自然的社会的諸条件に応じて、広域的な水道事業者間の連携の推進、その他の水道の基盤の強化に関する施策を策定し、実施するよう努める」とあります。この「水道基盤強化計画」に先行して、2019.1.25に、広域化の推進方針や当面の具体的取組等を記した「水道広域化推進プラン」の策定を都道府県に要請し、2022年度末までには策定・公表することを求めています。求められる記載事項は以下の3点です。
① 所管する水道事業者ごとの経営環境と経営状況の現状と将来の見通し
自然・社会条件、水道事業のサービスの質、職員や経営体制、施設整備、経営指標について、現行の経営形態で継続した場合の、40~50年程度の期間を見据えた将来見通し
② 広域化のパターンごとの将来見通しのシミュレーションと広域化の効果
広域化による中長期の施設整備や更新投資額の削減の状況、給水原価上昇の抑制幅、求められる料金値上げの抑制幅を示す。
③ 今後の広域化に係る推進方針
当面の具体的取り組み内容とスケジュールについて記載する。スケジュールは地域の特性や個別の状況を踏まえて「合理的な期間」とする。
都道府県域を超えた取り組みを行う場合は、いずれかの都道府県のプランに記載されるよう調整して欲しい。
2019.1.25、総務省は、簡易水道事業の公営企業会計摘要の推進を要請しました。経営の「見えるか」により経営基盤の強化を図り、持続可能な経営の確保を目的としています。
総務省は、H27~31年度までに、人口3万人以上の市町村の簡易水道の公営企業会計の適用を求めていました。H30年4月1日時点で、人口3万人以上の団体で、「適用済」、「適応に取り組み中」の割合は95.8%です。人口3万人以下の団体では、27.6%です。
礼和元年度から5年間を「拡大集中取組期間」とし、人口3万人未満の市町村についても移行を求めたものです。
都道府県には、個別市町村の状況を的確に把握し、取り組みを総合的に支援することを要請しています。
総務省は、摘要の取り組みや支援に関する会議・研修の開催、市町村への個別相談、専門人材の養成経費について、普通交付税措置を実施します。
資本費平準化債の発行可能額が減少する場合は、新たに激減緩和措置を設けます。
2018年12月に改正水道法が成立し、総務省や厚生労働省も広域化に向けた交付税や補助金を拡大する方針で政府をあげた取り組みが進んでいます。更に、財務省が水道広域化を後押しする制度を2020年度から始めます。
活用するのは国債を発行して低利で貸し出す「財政融資」と呼ばれる制度です。現在でも水道事業を対象にした地方債には、例年、約6千億円を振り分けています。2019年度からは、水道事業を対象にした地方債について、今までの約6千億円の配分枠は維持したうえで、広域化を進める自治体分を優先して引き受けるようにする考えで、地方債を引き受ける基準を見直し、2019年4月から適用します。
日本政策投資銀行の試算では、水道インフラの更新のためには30年後に水道料金を全国平均で1.6倍、過疎地では3.2倍に上げる必要があるということで、水道事業の効率化は国を挙げての喫緊の課題です。
「財政融資」の活用で事業の効率化を後押する訳ですが、上下水道事業の広域化に取り組む自治体の地方債を優先的に引き受けるのです。具体的には、設備更新時に浄水場を共同設置したり事務処理システムを統合したりする取り組みを想定しています。
効率化に取り組まない自治体は地方債を低利で発行できず、採算が悪化する恐れがあります。
上水道設備の老朽化や人口減少で水道事業の維持が難しい水道事業体も多いことから、経済産業省と厚生労働省は、作業の効率化のために、全国の水道の情報を統一する「上水道共通プラットフォーム」(水道施設情報システム)を作ります。
厚労省は、生活基盤施設耐震化等交付金の「水道事業におけるIoT活用推進モデル事業」を活用し、
プラットフォームの標準仕様に基づく「水道施設情報システム(仮称)」の導入を図るため、モデル事業への参加希望者の募集をします。概ね2022年度までにシステムモデル事業を開始できる事業体が対象です。
「水道施設情報システム」は、データ流通仕様等が統一され、セキュリティが担保されたクラウドを活用したシステムです。プラットフォームは制御装置等に接続されたIoT機器がアクセスする共通基盤で、個別のアプリケーションへの標準インターフェースを提供します。
事業体別に施設・機械・設備ごとに設計が異なる水道事業関連システムのデータ仕様の標準化を図り、「ベンダロックイン」を解除することで、水道施設の運転監視データや施設情報等の各種データが横断的に利用可能になり、水運用への応用等もできます。アプリケーションやデバイスも汎用化されることで、コスト低減が見込まれます。
結果として、コスト縮減による水道料金の上昇抑制、迅速な災害時の復旧作業の進行、水道事業者の再編や統合に繋がること等が期待されます。
自治体や施工業者が、随時、他の地域の上水道の状況を知ることができることにより、同じ時期にまとめて設備を発注したり、改修工事の時期を調整したりすることで、作業の効率化にも貢献しそうです。
これを受け、経産省では、2019年度予算でプラットフォームを整備する民間企業等への補助事業を行います。プラットフォームを利用したサービスは2020年度から提供される予定です。
全国の水道の情報を統一する「上水道共通プラットフォーム」(水道施設情報システム)を、国が提唱する理由について、ポチが類推することに一致した論説が日本経済新聞(2019.10.21「命の水」の命が危ない)に載っていましたので紹介します。
水道は地域の重要な社会インフラの一つであります。電鉄、電気、通信等は、少数の巨大企業が運営していますが、水道の運営は、市町村等が主体の地方自治体が運営する1300もの公営事業体があります。水道事業体の7割は給水人口が5万人未満で、年間給水収益が10億円に満たないところも多く、経営的基礎体力が脆弱な状況と言えます。
具体的には、以下の3点の問題があります。
① 技術系職員の高齢化が進み、水質管理や効率的な施設の更新等技術の継承に困難していること
② 人口減少に伴う慢性的な水需要減
③ 高度成長期に敷設された水道施設が耐用年数を迎え、更新投資の負担増が避けられないこと
要するに、「需要が減って収入は少なくなっているのに、必要費用は増えている」ということです。結果的に、水道事業が今の独立採算性を維持しようとすれば、長期にわたる断続的な値上げが不可避になると推測されます。政投銀の試算では、何も手を打たなければ、現時点で全国平均172円/m3の水道料金が、2046年度には281円/m3と6割増の値上げになるとしています。一人当たり300L/人日の使用量とすると、一人当たりの水道料金負担増は12,000円/年です。4人家族なら負担はその4倍となります。
全国平均ですから、農村部のような閑散とした地域ではもっと急激な値上げが予想されるでしょう。
水道事業運営の基本となる「水道施設情報システム」を全国統一化の方向に導き、導入費用の削減を含め経営の効率化を図れる土台を整理し、広域連携(事業合併)をしやすくするための提案なのでしょうか。
より安定的かつ効率的な事業運営の実現に向けて、民間企業等が保有するICTなどの新技術の活用・普及を目指すために、東京都・横浜市・大阪市水道局は「水道ICT情報連絡会」を立ち上げました。
3者の狙いは、大規模事業体の共同発信によるスケールメリットの発現や幅広い業種からの情報収集です。水道事業の課題解決にICTは不可欠と考え、この連絡会をプラットフォームに、スマートメーター等ICTの新技術を現場の実務に導入し,業務の効率化を目指しています。ICTは水道現場における課題解決に対して高いポテンシャルを持っているのでしょうが、実務に導入するには汎用性と価格が課題です。スマートメーターやAIはコストが課題となるので、事業体のニーズをはっきりさせ、多くの事業体で仕様を統一させる必要があります。
職員数が少なくなってくると1人で何でもやらなければならなくなるので、ペーパーレスによる事務改善や営業業務の効率化、給水装置関係事務の簡略化、VRを利用した仮想空間での技術指導、漏水の予兆の早期発見等、ICTへの事業ニーズは高まってきます。
また、ICTは極めて専門的な若い学問領域のもので、日本を代表する事業体の若い精鋭の人たちが連携して取り組む必要があるものです。このような状況から3者による連絡会が発足しました。
全国的な課題解決の一助になればとの思いも持たれています。
活動内容は、
① 事業体のニーズの発信
② 民間企業が保有する新技術の募集
③ 事業体と民間企業との意見交換
です。
事務局である東京都水道局の公式サイト内に連絡会のHPを開設し、各事業体が抱える課題についての職員の声、事業体職場が必要としている技術の掲載、「技術募集フォーム」を設け課題解決に役立つ製品・技術を募ります。
連絡会の主旨に賛同する事業体は参加を認められます。