給配水の新技術

2021.08.14

逆止弁付メーターパッキン(2020.9.10日本水道新聞)

 クロスコネクション等による給水装置から配水管への逆流事故が生じれば、逆流事故周辺地域で異臭や濁りが発生するなどの水質汚染事故に発展する恐れがあります。東京都や札幌市で利用されている逆止弁付メーターパッキンを紹介します。

 東京都や札幌市では、給水管から配水管への逆流防止のため、口径40mm以下の水道メーターの直後に逆止弁付メーターパッキンを取り付けることと逆流防止基準を設けられています。

 

 札幌市では最も多く使われている口径13mmの水道メーターについては、同口径の逆止弁付メーターパッキンでは損失水頭が大きいので、20mmに口径を上げるブッシング継手を使って、口径20mmの逆止弁付メーターパッキンを使われています。また、メーター部の損失水頭を下げるため、25mm以下のメーター止水栓は甲型止水栓からボール止水栓に変更されています。

2020.12.8

既設フランジ継手部の耐圧補強(2020.1.30日本水道新聞)

 渇水、地震、事故時等の断水リスクが高くなっているため、多くの事業体で、隣接する給水エリアを連結する連絡管の設置が検討されていることと思います。給水区を連結拡大する場合、各給水区の配水圧に高低差がありますと、低い圧力配水区の配水管路の耐圧性能を超える圧力がかかる恐れが生じます。

 兵庫県企業庁では、令和3年度末完成を目指し、三田浄水場(三田市)と多田浄水場(川西市)の給水エリアを結ぶ三田西宮連絡管(φ600mmダクタイル鋳鉄管、L=11Km)の整備をされています。既設神戸支線送水管は、通水時=0.86MPa、ポンプ締切時=最大0.98MPaの水圧がかかりますので、フランジ・制水弁・空気弁部には10K耐圧(使用圧力1.0 MPa)の規格品を使用されています。しかし、連絡管完成後には、通水時=1.26MPa、ポンプ締切時=最大1.51MPaの水圧がかかることになり、16Kのフランジ対応が必要となりました。
既設配管の耐圧補強を行うには
@ 曲管部の不平均力対策
A 空気弁の交換
B 制水弁(空気弁用補修弁)の交換
C フランジ部材の交換
が必要で、B制水弁、Cフランジ部材の交換には送水を停止しなくてはなりません。受水団体への影響を考えて、断水期間の短縮のため、フランジ継手部材の交換ではなく、フランジ継手部を補強する手法を採用されました。

1) ガスケットの補強
 フランジとフランジを接合するガスケットは、清水合金製のマルチガスケットを活用しました。この製品は16Kまでの耐圧性能を持ちながら、呼び径が同じなら、7.5K、10K、16Kのどのフランジ形状のフランジにも対応できます。
清水合金HPより

2) フランジ接合するボルトの補強
 フランジ接合するボルトは、φ100mmの時、10K=M16×8本、16K=M20×8本のように、耐圧性能、呼び径ごとに本数・ボルト径がJISで決められています。ボルト補強ではボルト径を大きくするか、ボルト本数を増やす必要があります。兵庫県は、ボルト本数の増加効果を期待し、フランジ継手の耐震補強金具である大成機工製の補修弁用フランジサポートを用いました。
大成機工HPより

3) フランジ鋼材部分が10K規格であることの対応 
 既存T字管は10K仕様であるため、フランジ鋼材部分は16K規格の基準寸法が確保できません。フランジ鋼材部分の腐食による断面減少を防ぐため、当該箇所の防蝕工事を行う予定です。

 兵庫県ではこの工法を採用するにあたって、10K対応のフランジを用いて1)2)の手法でフランジ接合した模擬配管に対して、以下の2つの試験を行い、耐圧性能が確保できることを確認されています。
@ 水圧試験:16Kフランジの使用最高圧力である2.2MPaの負荷をかけ5分間保持
A 脈動試験:水圧0MPa⇔1.6MPaを10万回繰り返えす

2020.10.22

送水ポンプ運用管理を利用した仮想発電所(VPP)の電力管理(2020.6.11日本水道新聞)

 2012年に制定された固定価格買い取り制度(FIT)で日本各地に再生エネルギーの発電施設が誕生しました。日本の再生エネルギーの設備容量は2019年に約9746万KWと2014年から87%増だそうです。経産省は「再生エネルギーを他の電源に比べ上位の主力電源にする」と表明していて、発電量に占める再生エネルギーの割合を、2018年度の17%から2030年には22〜24%に高める目標を掲げています。2020年10月に政府は2050年にCO2ゼロを目指すと表明しました。火力・原子力発電から再生エネルギーや水素発電等の電源が注目されそうです。

 しかし、発電量が安定しない再生エネルギーを中心に据えた電力供給は、電力需要と発電所や需要者の発電量とを統合制御しなくてはなりません。統合制御がうまくいかず電力需給が崩れると停電するリスクが生じます。

 省エネ・創エネ・畜エネ技術の進展や災害時における電力需給の逼迫を踏まえ、分散した多種多様なエネルギーリソース(発電事業者の発電量)をITの力で統合制御し、一つの大型発電所のように機能させるバーチャルパワープラント(VPP)が注目されています。

 VPPは、工場や家庭など需要者側が保有する発電設備、蓄電池、電気自動車等のエネルギーリソースをIoTで繋ぎ、AIで再生エネルギーの発電量を予測して重要を統合制御することで、電力需給バランスの調整をする仕組みのことです。各需要者の設備の制御をリソースアグリゲーター(RA)と呼ばれる事業者が一括して担うことで、電力需要の抑制・創出を通じた電力負荷の平準化や再生可能エネルギーの吸収・供給が期待されます。

 関西電力は「関西VPPプロジェクト」を2016年に立ち上げ、参画したRA各社が各分野のエネルギーリソースを統合制御するシステムや技術の確立に取り組んでいます。関西電力は各RAが制御した電力量を束ね、送配電事業者や電気事業者と電力取引を行う「アグリケーションコーディネーター」(AC)を務めます。

 電力事業者は、電気料金の動的な設定や余剰電力の買収などで電力需要のパターンを変化させる「デマンドレスポンス」を求めています。一例として、事前の契約に基づき需要者がピーク時の節電を行い、対価として報酬を得る「ネガワット取引」があります。

 2019年度からRAとして関西VPPプロジェクトに加わった日立製作所は、「デマンドレスポンス」である「水の安定供給」と「送水ポンプの消費電力の調整」の両立を目指し、高槻市水道部と連携して、市内のポンプ場2か所で電力需給調整を含めた送水ポンプ運用計画の最適化に取り組みました。送水ポンプは消費電力が大きく、また、配水池の貯水能力を水需要変動のバッファとして活用できます。

 実証実験では、配水池で一定水準以上の貯水量を確保しながらデマンドレスポンス要請に応じて送水ポンプの運転台数を削減・追加稼働するため、変更可能な運転時間と電力量を独自のアルゴリズムで算出し、最適な運用計画を策定します。令和3年度からの実運用を想定した手法の有効性も検証されたそうです。

2020.1.6

高速炭酸水(水塊流)を使用した配水管内洗浄工法(2019.4.25日本水道新聞)

 老朽化した配水管の管内面洗浄工法として「高速炭酸水洗浄工法」があります。炭酸ガス給水車から消火栓を使って炭酸ガスを注入し、排水口として下流の消火栓やドレン弁から管内洗浄廃水を排出します。

 炭酸ガスを間欠的に配水管内に注入することで、水の塊と気泡の塊が交互に高速で流れる「水塊流」を発生させます。管内水流の通常時流速が0.3m/秒とすると、炭酸ガス注入後は10倍の3m/秒程度まで高速になるそうです。

 高速になった「水塊流」のせん断力により、配水管内の汚れやサビ等の夾雑物を排出します。「水塊流」は気体と水の混合物なので、配水管の形状や口径に左右されることもなく、短時間で長距離の配管洗浄が可能であり、夜間作業のみという短時間施工にも向いているそうです。炭酸ガス注入口より上流部では汚濁障害は発生しません。

 炭酸ガスは水道水のpH調整にも使われる食品用炭酸ガスで、液体化したものをヒーターで温めて気体化させて使用します。

2019.1.16

多口径に対応し、サビの発生を防ぐ分水栓(3D SEAL分水栓)(2017.12.21水道産業新聞)

 水道本管から給水管を取り付ける分水栓は、図−1のようなサドル式分水栓が一般的に使用されています。サドル式分水栓には
 ・ 穿孔穴部が錆びることによる赤水の発生や分岐管断面の縮小
 ・ 水道本管の管種・口径に合わせた分水栓を使用しなければならない
 ・ 水道本管サイズが大きくなるほどサドル分水栓の単価が高くなる
 ・ 分水栓からの取り出し口の方向が固定される
という問題があります。

図−1 サドル式分水栓

 3D SEAL分水栓はサドルの代わりにステンレス製スリーブを利用し、水道本管に穿孔後、分水栓とゴム輪を穿孔穴に挿入し、挿入後、拡径することにより、固定・止水を行う構造です。サドルを使わず、管内面・穿孔断面・管外面の3方向(3Direction)から多面シールして、直接水道管に分水栓を取り付けるのです。

@ 穿孔部のサビ発生を防止
 分水栓部にサビが発生する要因は、穿孔した断面に直接水が接することです。この分水栓は穿孔断面部を圧力がかかった状態のゴム輪で覆い、水の浸入をガードするため、サビの発生を防げます。それにより、サビによる分岐径縮小や水質低下等様々な課題を解決しました。

A 多口径に対応できる
 従来のサドル分水栓は、配管径に合わせたサドルが必要でした。このため、各種サイズのサドル分水栓を準備しなければならず、またサイズが大きくなるほど単価や保管スペース等も上がる為、コスト面や在庫効率面でも非常に負担になっていました。
 3D SEAL分水栓はサドルを必要とせず、直接水道管に取り付けるため、どんなサイズの水道管であっても同一分水栓で分岐を取ることができます。サイズ毎に在庫をしておく必要もなく、大口径管ほどコストも低減することになります。現時点では、ダクタイル鋳鉄管(3種管、内面モルタルライニング)のφ75〜300mm、PE管φ75〜100mmです。

B 分岐方向は自由に変えられる
 取り付け後は、分水栓を回転させる事により360度自由に取り出し方向を変えることが出来ます。

 でも、モルタルライニング管の穿孔の場合、穿孔時にモルタルを破損し、破損部にサビを生じる危険性は、サドル式分水栓と同様に解消はできませんね。

  
図−2 3D SEAL分水栓

2019.1.3

多言語の音声コードを印字した検針票(2017.10.12,2018.3.15水道産業新聞)

 「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」が2016.4.1から施行されました。社会インフラすべての個人情報について、視覚障害のある人が情報を読めないという課題があります。また、外国人労働者が増えることが予想されますが、日本語に不慣れな外国人に対しての情報発信も大きな課題となるでしょう。

 北海道の長幌上水道企業団は水道使用量の検針票に、視覚障害者向けサービスとして、2017年8月から、音声コード「ユニボイス」を印字しました。検針用ハンディターミナルに音声コード作成ソフトを組み込み、検針票に音声コードを印字します。音声コードの位置は用紙の下部に半円の切り欠きを入れ、その切り欠きの上に印字することで、目の不自由な人が音声コードを探しやすくしています。
 「検針票の字が小さくて読めない。」という高齢者の需要もあるようです。

 愛知県蒲郡市は視覚障害者の他に、市に在住する外国人世帯用に日本語と英語で聞くことができるバーコードを採用しました。
 蒲郡市は人口約8万人の中に約1300世帯の外国人がいます。外国人の声として「市からいろんな通知が送られているが、日本語でしか書いてないのでよく解らず、そのまま捨ててしまう」という声があったそうです。そのまま捨てられてしまう書類の中に、水道料金や市税の納付書も入っています。
 ユニボイスの二次元バーコードは日本語・英語の他多言語の情報発信ができるので、外国籍の方にとっても有効なツールとなるのではという考えで採用されました。水道料金滞納が減ることも期待されています。
 日本語以外の音声情報の組み込みについては、それぞれの言語の文章を作成する必要があります。「日本語情報を入れるだけで、アプリが多言語に変換してくれるようになれば」というのが現場の声です。

 「水道事業者が検針情報を全ての方に理解されやすい形で提供できる有効なツール」という認識で採用されているのが良いですね。

 ユニボイスとは、漢字を含む文字データを約800文字記録できる携帯電話対応二次元バーコードです。検針票に印字された二次元バーコードに、携帯電話(ガラケー)やスマートフォンで、音声コードを読み取るためのスマートフォンアプリ「ユニボイス」をかざすと、文字データを読み取り、水道の使用期間、使用水量、料金、口座振替のお知らせなどを音声で聞くことができます。非通信環境でも使えます。
 他の音声コードとして、「SPコード」がありますが、読み取り専用機器が必要です。

 検針時の作業はこれまでと変わりませんが、検針票の用紙が少し長くなるため、これまで1ロールで140件ほど発行できていたものが、100件程度になるようです。


    

2018.2.16

現場へ行かない工事検査手法(2017.10.12水道産業新聞、2017.10.23日本水道新聞)

 東京水道サービスは工事の検査・確認の効率化を目的に、給水管分岐工事の検査や漏水修繕、配水管布設工事の確認業務を、現場に行かずに実施できる「現場管理システム」を開発しました。このシステムは、スマートフォンの写真機能を活用して検査・確認する作業項目ごとの施工状況を施工業者が現場で撮影し送信すると、事業体職員が庁舎でクラウドサーバーに送信された画像をリアルタイムで検査・確認することが可能となり、施工指導も行えます。

 水道事業体職員は、庁舎にいながら同時に複数の工事の検査・確認を行うことができ、移動時間を短縮できるため、広域化するエリアや職員の減少に対応できます。

 施工業者は検査員の現場到着を待つことなく施工を進めることができます。また、クラウドサーバー上には検査項目ごとに写真が整理・ひも付けされることから、自動で写真帳や工事報告書を作成することができます。システム上で提出処理が完了するため、施工業者が提出のために事業体窓口へ行く必要はありません。
水道事業体、施工業者の双方にメリットをもたらすツールと思えます。

 具体的な工事検査の流れは、まず、施工業者は受付窓口で工事申請を行い、事業担当者は工事日程を調整のうえ、受理した情報を現場管理システムに登録します。施工業者は、申請時に登録した工事の情報をアプリケーションによりスマートフォンに取り込みます。

 工事当日、施工業者は端末用アプリを操作して工事開始を発信します。工程進捗に合わせ検査・確認に必要な項目を選択し、該当工程の工事写真を撮影すると、端末アプリが項目にひも付いた写真を自動でサーバーに送信します。
 事業体の検査担当者は、工事写真をリアルタイムに取得し、確認・検査、必要に応じて施工指示を行います。
 施工業者は担当者の到達を待たずに施工開始でき、施工指示や検査結果を受信して内容を確認しながら、自分のペースで施工を進められ、業務品質の向上も期待できます。

 工事終了後、施工業者はサーバーアプリに登録された工事写真を確認、選択します。検査項目ごとに写真が整理・紐付けされると共に、コメントも書き込めるようになっています。写真帳や検査報告書が自動作成できるうえ、現場管理システムで提出処理をすることで完了しますので、水道事業体窓口へ出向く必要がありません。

 帳票類はエクセルを活用したもので、検査項目やチェック表などは各事業体で容易にカスタマイズできるようになっています。


2018.2.14

民間による水道事業への小水力発電設置・運営事業(2017.6.12日本水道新聞、2017.10.19水道産業新聞)

 ダイキン工業は水道管に設置するマイクロ(小)水力発電システムを用いて発電事業を行います。同社はH25年からこれまで4水道事業体と実施してきた実証実験や共同研究により、100KW規模以下の水道管における水力発電のビジネス化を始めます。(100KW以下の小水力発電を「マイクロ」と表現します。)

 まず、同社負担で、事業体が所有する管路施設に発電システムの企画・設計を行い、地元施工業者等を使ってマイクロ水力発電システムを設置します。その後、発電電力を送配電事業者に売電すると共に、発電システムの運用・保守を行い、売電益の中から水力及び場所提供に対する対価を事業体に還元し、事業体のコスト・運用・申請等の負担が無いシステムを考えています。水道事業体は投資、業務負担とも不要なので、事業体にとっても都合の良い話です。
 導入スケジュールは、契約締結から詳細設計、各種手続き、資機材の手配、工事、試運転調整から発電開始まで約10か月間を見込み、年度内には完結できることを強みにしています。

 マイクロ水力発電システムは水車と発電機をパッケージ化したものです。22KW、75KWの2クラスを製品化しており、有効落差は25〜65m、流量は250〜1800m3/時の小流量域をカバーします。設置個所は浄水場の着水井や配水池の流入管など、導送水圧を一旦開放する場所が対象となります。
 システムの中核となる水車は、汎用品のポンプを逆方向に回転させ、「ポンプ逆転水車」として使用しています。縦型インラインポンプの上部空間に発電機とコントローラーを一体化して設置しますので、設置面積が従来技術の半分以下で済むそうです。専用設計は不要なことと、インバーターも同社が空調で多く使用しているもので、安価に導入できることでコストを縮減できたようです。自社が保有するモーター技術、インバーター技術、流体力学技術を応用したシステムです。

 厚労省と環境省がH27年に実施した「水道施設への小水力発電の導入ポテンシャル調査」では、全国1536事業体のうち発電ポテンシャルを持つと想定されたのは275事業体(536か所)で、発電出力20KW以上の導入可能性がある地点は約半数の274か所、発電出力の総量は19000KWとのことです。

 水道界は国内総電力消費量の0.8%を占めていて、更なる省エネ化を進めるニーズはありますので、発電装置と維持管理を含めたフルサービスの提供は興味を引くかもしれません。

<長岡京市が小水力発電を導入:2017.10.12日本水道新聞>
 2017.9.26、長岡京市はダイキン工業系DK-Powerと再生可能エネルギー導入(小水力発電)事業に関する協定を締結しました。

 発電事業は長岡京市の北ポンプ所内の京都府営水道受水施設の既存バイパス管に22KW級のマイクロ水力発電設備を設置したうえで、事業運営を20年間行い、その間、市にエネルギー活用及び土地提供等の対価を払う民説民営方式です。事業開始は2018年5月の予定で、年間発電量は184MW時、CO2削減量は108tだそうです。

2018.2.6

水道メーターによる高齢者見守り(2017.9.7水道産業新聞)

 長野県企業局、坂城町、東京計器の3者は、2017.9.1、毎日使用する水道の使用状況から、一人暮らしの高齢者などの見守りを行う「高齢者元気応援システム-KIZUKI」の実証実験を行いました。

 長野県企業局は、県内の一人暮らし高齢者が増加傾向になることから、東京計器が開発した高齢者見守りシステムを活用し、水道の使用状況を把握して、その情報を事前に登録した家族などにメールで知らせるしくみです。

 モデル地区を、長野県企業局の給水エリアであり、コンパクトな規模の坂城町を選びました。坂城町は2,017年3月時点で、65歳以上の割合が約34%、H27年国勢調査では、全世帯(5466世帯)の約10%にあたる550世帯が65歳以上の単独世帯だそうです。
 町は、H29年4月から町内一人暮らしの高齢者を対象に、ダイレクトメールや訪問をして、見守り対象者やその家族の意向調査や募集をし、2017.9.1現在で32件のメーター設置をしました。

 このシステムは、水道メーターの信号機と電話回線を見守り装置に接続することで、毎朝の水の使い始め、長時間の不使用、水の連続使用を検出し、電話回線を使用して、松本市のマルチセンターに届けられ、そこから家族等にメール配信されます。
 町では、家族が遠方にいてすぐに駆けつけられない場合は、社会福祉協議会や民生委員を通じて、様子を確認できる体制を構築しています。また、情報共有掲示板機能もあり、見守る人が複数いる場合は、そこに状況を書き込むことで、情報共有を図れるようにもなっています。

  電子式水道メーターの設置費は企業局(27100円/基)、見守り装置設置・管理費等は坂城町(1350円/月)、サーバ利用やメール受信などのシステム利用料は利用者(970円/月)が負担します。

 町長は「一人暮らしの高齢者が、このシステムを通じて、家族や近所との付き合いがより深くなるという、副次的な効果にも期待しています。」とおしゃっています。

 利用者からは「今は元気ですが、いつ何があるかわからなくて不安があり申し込みました。」、「朝起きたら顔を洗う。普通に生活しているだけで、生きていることが解ってもらえればよい。」、「母の行動の妨げにもならず、離れた家族にとっては安心につながります。」という意見もありました。

2017.6.26

山間部の遠隔水道検針技術(2017.3.13日本産業新聞)自動検針用低消費電力の無線技術(2017.3.30水道産業新聞)

1.山間部の遠隔水道検針技術

 JFEエンジニアリングと神奈川県企業庁・箱根水道パートナーズが箱根地区で共同研究している水道メーターのスマート化に関して、センサスジャパン、ミライト・テクノロジーズ、KDDIが280MHz帯無線ネットワーク(FlexNet)を活用した遠隔水道検針に関する技術検証を始めました。

 通信が届きにくいと予想される山間部の水道スマートメーターから、280MHz帯無線ネットワークを通じて、流量などの計測データを遠隔収集し、可視化された計測結果を提供しようとするものです。基地局と2Km程度離れている水道メーターをFlexNetで接続し、計測データを自動で収集できるかを検証します。また、遠隔収集された計測データはKDDIのネットワークシステムを介してクラウドに保存されますが、迅速に漏水検知などの異常が発見されるかも検証するとしています。

 民間の技術が水道事業の広域化に貢献することを期待したいですね。

2.自動検針用低消費電力の無線技術

 第一環境と京都大学は横須賀市で、Uバスを採用した水道スマートメーターの導入とWi-SUN規格の多段中継無線通信技術(Uバスエア)の通信実験を開始しました。

 無線機は新国際無線通信規格IEEE802.15.10に対応したもので、特定の端末だけ電力消費が大きくならない送信機会均等アルゴリズムが搭載されています。ある通信端末で特定の送信回数を超えたら別のルートを探すことで、低消費電力を実現します。15分に1回送信したとすると単3乾電池2〜3本の電源で10年間は持つそうです。

2017.6.25

水道用ポリエチレン二層管3種(2017.4.17日本水道新聞)

 クボタケミックスは、PE100を材料とした水道用ポリエチレン二層管3種(JIS K 6726)を2017年5月から販売を始めました。呼び径20、25、30、40、継手類をラインナップしています。EF(電気融合)接合により一体構造管路を構築でき、接合コントローラも配水用ポリエチレン管と同じものが使えます。国交省の国道浅層埋設通達の要求性能も満たしています。管の構造は二層管1種と同様なため、露出配管も可能としています。

2017.2.2

LSPフランジ結合補強具(2016.11.3水道産業新聞他)

 東日本大震災では空気弁や消火栓が吹き飛ぶ漏水事故が多数発生しました。
 原因の一つは、ボルトナットが均等に締め付けられていない片締めが原因の場合も多くありました。片締め部分のパッキンが揺れや振動で壊れ、ボルトが緩むことが繰り返されると、脆弱部ができます。更に大地震が起こって本管内にウォーターハンマーが生じた場合は、フランジ部の漏水事故が起きやすいのではないかと考えられています。

 フランジパッキンの締め方は、4穴以上のフランジは下右図のように対角線上に締めつけるのが原則です。施工の良し悪しは現場施工技能者の技量に左右されますが、片締めが起こっているかどうかは、施工管理上は見分けることが難しいのも事実です。

 協和工業が開発したLSPは、下左図のように、誰が作業しても片締めを起こさないよう、ステンレス製芯金板にSBRゴムをライニング加工したOリングを持ったパッキンと、緩み止め機構を持ったボルトナットを組み合わせて使用することにしました。

 図のように、パッキンの円周内側はGF溝を挟む形でOリングが二重に配置されており、突起部のOリングが均一に潰れることで止水できる構造となっています。使用できるフランジは大平面座形RF、溝形GFで、溝幅を調整することにより両タイプ兼用型になっています。
 「ボルトを締める順番も自由」と会社は言っていますが、ポチは、やはりボルトの締め方は基本通りにやって欲しいと思いますね。

 SUS製ボルトナットはボルト溝に噛み込むフリクションリングを持つU-ナットを使用し、高い緩み止め機構を備えました。フリクションリングはボルトの中間位置でも緩み止め効果を発揮します。手で仮り締めをすると、ボルトのねじ山がフリクションリングに接地し、手動ではそれ以上締めることができないため、締め忘れを一目で確認できます。
 常に揺れを生じている水管橋や橋梁添架管にはボルトの緩み防止上有効ではないかと思えます。

   

2017.1.21

蓋設置型漏水監視装置を使った検針業務における漏水検知(2016.10.6日本水道新聞、水道産業新聞)

 第一環境は、検針業務に漏水調査業務の提供を行えるよう、蓋設置型漏水監視装置(L−Chaser:エルチェイサー)を開発、提供します。検針業務で収納率の向上だけでなく、有収率・有効率の向上にも寄与できることから、新たな給水装置管理業務の創出を視野に入れています。

 L−Chaserは水道メーターの表示部と蓋の間に挟み込む形で設置します。最初は水道メーターの蓋を取って、そこに載せる装置を考案していましたが、水道メーターは蓋を含めて全体が形式承認の対象になっていることと、蓋の裏に検満シールを張るため、挟み込み形式にしたとのことです。
センサー部がメーターのガラス面に接触し、漏水発生に伴う微量な振動を感知して、漏水と判定すれば、LEDランプが点滅し、検診時に検針員が目視確認することで、漏水発見ができるという仕組みのものです。

 漏水検知器は、短時間による計測では、通常時のエアコン等の音や振動・風の音などのノイズの影響を受け、誤検知が発生しやすい懸念があります。L−Chaserは、センサーの作動間隔をあらかじめ設定されています。設置後、一定期間中に設定された一定間隔で感知モード起動をさせ、継続的な異音と感知できた場合のみ漏水と判定します。
定点設置による継続的な監視により、漏水修繕後に付近の別な場所で漏水が発生する復元漏水についても対応できます。個別音聴では調査員のスキルに漏水発見の精度が左右されますが、そうした誤検知も最小化されると期待されています。

 装置は20〜25mm用(金色)と13mm用(銀色)の2タイプです。取り付け、取り外しはワンタッチででき、専用用具でしか外せないようロック機能も備えています。
原則、製品としての販売は想定しておらず、同社が提供する給水装置管理業務サービスに活用するものです。