口答試験の注意事項

1.口頭試験は1人を落とすための試験である。では、誰が落ちるのか?

 口頭試験は筆記試験合格者について、毎年11月の下旬から12月に東京で行われています。口頭試験の不合格者は10%程度でしょう。10%の不合格者を作るということは、2名1組の試験官チームが朝9時〜16時ないし17時まで、20分間隔で試験を行ったとして、20名近くの受験者を扱うことになりますから、1チームが受け持つ受験者の中から誰か1名〜3名を落とす作業をするのが口頭試験ともいえます。

 ご存じのように、口頭試験で不合格になると、翌年新たに筆記試験からチャレンジしなくてはなりません。この屈辱とハンディは耐え難いものがあります。「耐え難いものがある」と言い切れるのは、ポチ自身が上下水道部門の口頭試験で落ちた経験があるからこその思いであります。(返すがえすもクヤチー!)

 ポチが口頭試験で落ちたことは、ポチが住んでいる地域では有名なことらしいのです。それは、ポチが受験する際、会う人みんなに「技術士を受験するからね。」とふれ回っていたからでしょうね。自分の身の回りに筆記試験を落ちた人はいくらでもいますが、口頭試験を落ちた人はめずらしいでしょう? それで、「落ちた原因は何? いつものようにシャベリすぎたの? 試験官を言い負かしたの? その愚問に答えます等ナマイキを言ったの?」とわざわざ勉強に来る受験者も何人かいました。頭に来ますネー。

2.落ちるパターン その1

 余談ですが、ポチの知人で口頭試験を落ちた希な体験をお持ちの方が、ポチを含めてナント5人もいるのです。類は友を呼ぶのかなー(笑い)
 このうち、ポチを含む3人は、どうヒイキ目にみても、ヤッパリ自信過剰気味で生意気そうなキャラの持ち主です。

 試験官との対決は厳に慎むようにしてください。試験官も人間ですから、このようなキャラの持ち主や何となく存在感のある方とはツイつい対決的になる傾向があるのかも知れませんねー。強気のキャラの方はご用心!最初からハンディを背負っているようなものと諦めて、あくまで謙虚に。不幸にして試験官と口論(論戦)になった時は、すみやかに論戦を打ち切るべきです。試験をパスさせて頂くために東京まで出向いてきているわけですから。

 ポチが試験官経験者の方から聴いたことなんですが、口頭試験問題は前もって事務局?がかなりの数を用意していて、その中からその受験生にふさわしい問題を選んで聞いているとのことでした。ですから、試験官が、問うている問題について熟知した上で聞いているとは限らないということを、基本的に考慮しておいてください。試験問題について、よく知らずに(偏った知識の元で)聞いているケースもあるということです。ですから、「私の主張は正しいんだ」との確信があるあまりに、意固地になって試験官を言い負かしてやろうとハッスルしないようにして頂きたいものです。試験官にもメンツがあって、いやしくも「よく知らないんだが質問しているんですよ」とは腐っても言えないし、しかも合否の判断権限を持っているのですからね。

3.落ちるパターン その2

 コロ君は「落ちるべきことを喋った」から落ちたのだと推測できます。「落ちるべきこと」とは、技術士としてふさわしくないことです。
 技術士試験で最も難しいテーマは「技術士の備えるべき資質」を的確に捉えることだとポチは感じています。技術に関する知識は本を読むことで補えられますが、技術士たるべきことは「技術士法の精神を自分の仕事を通して具体的に述べられるか」ということです。これが難しいんですよねー。参考になるテキストがあったら教えて下さい。未だにポチも的確には捉えきれていませんが、極力、記述の中で触れていくように努力してみます。

 コロ君の場合は、倫理に関する問題に対して、「その立ち場になってみないと解りません」と答えています。倫理に関する問題は、相手・立場・場面がいかなるものでも毅然として正しい行動を取ることを述べなくてはなりません。

 次に、ポチが落ちた理由ですが、最初は見当が付きませんでした。口頭試験が終わった瞬間に「通った」と確信したからです。だって、30問ちょっと聞かれた中で、点数にすると90点以上は正解しているはずでしたから。落ちて2年間ほど理由を考えた結果、「多分こういうことかな」と悟った?ことを紹介します。正しいかどうかは当時のニックキ(失礼)試験官に聞いてみない限り解りませんが。(ヒキツリ笑い)

 口頭試験は筆記試験と違い、正解の確率(点数)を競うのではないのでしょう。ところが、ポチは点数を意識していました。だから、「95%は正解のはずだ」と安心していたのです。ところが、問題は間違った5%の方なのです。「間違った」ということは「ウソを言った」ということです。技術士は技術的に正しいことをアドバイスすべき立場なのに、ウソを堂々と言ってはいけません。筆記試験なら、不確かでも「当たれば儲け」とその場で思いつく適当なことを苦し紛れで書きます。5択問題では解らなくてもどれかに○を付けます。このノリで口頭試験を受けてはダメです。不確かな場合は、不確かな状況をことわった上でシャベることが肝要です。
 もちろん、誤ったことを述べてしまった場面もありましょう。その時、試験官から誤りを指摘されたら、素直に「誤り」もしくは「知識の不確かさ」を認め、後日、その件についてフォローの勉強をしておくことを約束できれば満点でしょう。

<ある意見>
 ポチは以上の理由で落ちたものと思っていますが、口頭試験は加点方式であるという人もおられます。
 加点方式だとすると、多くの試験問題を提出してもらう方が得策ですので、解らない問題では、「解りません。今後勉強致します。」というパスを有効に使って、次の問題を促した方が良いことになります。

4.落ちるパターン その3

 知識不足が露見した場合です。口頭試験は「正解の確率を競うのではない」と記しましたが、ある程度は質問に答えられないと合格は論外です。受験者には、「不確かな場合は“解りません”と答えなさい」とアドバイスしていますが、ほとんどが「解りません」では合格はダメでしょうね。

5.口頭試験の注意事項

 ポチは、いままでの経過からして、口頭試験についてコンプレックスを持っていますので、皆さんに適切なアドバイスができる自信はありませんが、市販の参考書やWEBに書いてあることを参考にしながら、自分が体験した感じを踏まえて注意事項をまとめてみます。

口頭試験の目的は、筆記試験結果だけではわからない事項を面接により確認して、技術士にふさわしい人を選ぶことでしょう。ふさわしい人の条件は、
  @技術士にふさわしい十分な経歴
  A専門的技術力や技術的見識が高いこと
  B技術士としての資質(倫理観、継続研鑽を通しての向上心、品位のある人格)
でしょうか?とにかく、
技術士としての適格性の判定を主眼におき、筆記試験の繰り返しは避けようと心がけておられるようです。

 受験者の年齢や経験、経営者・管理職・技術担当者、公務員・建設会社・コンサルタントでは質問が違うみたいです。
 30歳前後の若い技術者には厳しくイヤらしい質問が多い感じがします。  
 当然のことでしょうが、「自分で判断できる立場でもなかろうに、こんなに若くして技術士たり得る経験があるわけないだろー。ただ知識だけを詰め込んでいるんだろうから、化けの皮をはがしてやろうか!」という意識が試験官に生じても不思議ではないですねー。(「馬鹿にするな。試験官はもっと立派だヨー」という声を期待したいですー)
 若い方の対策としては、あくまで謙虚に答えることでしょうか!謙虚に答えられると、ボロがなかなか見抜けにくくなるのです。カチンときてついつい早口で多めに喋りますとボロが出やすくなります。絶対的自信があれば別ですが、どんな人にとっても、謙虚に振る舞うことは口頭試験対策の最重要ポイントですね。

 総合技術監理部門では5つの管理に分類しながら説明するとか、トレードオフの事例に対する対処方法が聞かれるみたいです。
 ポチの場合、上下水道部門では一般技術論として答える質問で答えやすかった思い出があります。しかし、総合技術監理部門では「実務においてどのように対処しているか?」という質問が目立ち、国策として進められている方向性には必ずしも沿っていない事業体の運営状況をバックにした答弁となったため、(ある程度、実態を知られているのではとの懸念があって)厳しい内容になって困りました。(詳しくは「平成16年度総合技術監理部門口頭試験を体験して」に記していますので参考にして下さい。)

一般的な注意事項は以下のとおりです。

@ 平成13年度から経歴書に資格、特許、業績の記載欄が無くなったため、試験官に自分の業績をアピールすることも必要です。研究発表、論文や報文の投稿、受賞経験、特許取得等答えられるように準備しておくことです。
 経歴の説明は大抵の場合、第1番に聞かれる問題です。若い人の場合、自分が中心となる業務は希だと思われますので、自分の立場を考えて、「その業務でいかに自分が技術的に成長していったか。」という観点で述べることも大切だと思います。また、その業務のもつ技術的課題を触れることも良いでしょう。

A 好印象が大切なので、やはり、当日の格好は背広にネクタイでしょう。
 試験部屋に入ったら、椅子が多分二つあります(一つは自分の着席用、もう一つは鞄やコートを置くためのモノ)ので、その前に向かい、立ったまま受験番号と名前を告げ、許可が出たら着席します。その時、「おはようございます」とか「宜しくお願い致します」という言葉を使えば更に良いと思います。
 ちなみに、試験官との距離は3m位離れています。長机に2人仲良く?並んで座っておられます。赤本なのでしょうか?何か資料をめくりながら質問してきます。何が書いてあるのか不明ですね?見える距離ではありません。

B 答えるときは、まず「結論」を述べ、続いてその理由を簡潔に説明されたらいかがでしょう。その時、試験官の反応を見て、冷静に(無理かナー)対応して下さい。ハッキリ解りませんが、説得力や説明能力というコミュニケーションの力も試験内容という記述もありました。
 質問を聞いたら、即、答えるのではなく、例えば、つばをごくりと飲み込んでから喋るとか、一呼吸おいて答えるくらいの冷静さが欲しいものです。(これはポチには全くできない芸当です。すぐ、ムキになって答えてしまうのですから。)

C 質問の意図がハッキリ分からない時は、遠慮せずに再度確認して下さい。恥ではありません。

D 問題に答えられない場合は、ポチのように当てずっぽのことを言うのではなく、正直に「解りません」を使った方が良いでしょう。「後日調べておきます。」等のフォローがあればグッドです。

E 解答に確信が持てないときは、「私の知る限りでは」とか、「専門分野ではないので」とかの前置きを入れて話すのもテクニックです。

F 若い方等で経験不足が心配な場合は、「自分のこれまでの技術士としてふさわしい経歴」を必ず聞かれますので、その答えの中に、「自分が是非聞いて欲しい項目」をさりげなく入れておいて、その項目に誘導質問を誘うことも有効です。

G 試験が終わった後は、答えた内容をメモしておいて下さい。不合格の場合の参考になりますし、ポチに教えて下されば更に有り難いと思います。

6.事前勉強のポイント

 事前勉強のポイントは以下の3点だと思います。

@.筆記試験の答案の概要をメモしておく
 口頭試験では答案を参考に質問が展開される場合があるみたいです。

 「経験論文」で書いたことの具体を聞かれるケースは多いようですね。表現力とか説明力を調べているんですかね?とにかく、書いた内容を聞きやすく説明することが必要です。業務を必要とする背景、業務内容の概略、技術的に工夫した点(技術士としてふさわしい点)を簡潔に述べることがポイントでしょう。ただし、「技術士としてふさわしい点」はハッキリと明快に述べねばなりませんよ。また、自分の立場(役割)を説明しなければなりませんが、主体的に関わった(上司の指示に従ったような言い方はダメ)ことは強調しましょう。
 試験官が筆記内容を詳しく記憶していない(ヒョッとしたら全く読んでいない)ことを基本にしゃべれば間違いありません。また、「簡潔に」とは、どんなに長くても3分以内ということです。

 記述内容について誤りがあった場合は、その点について質問があること等が理由のようです。
 記述内容について誤り、もしくは不足があった場合は、その点について質問があるそうです。この場合、口頭試験でその不備な点をうまくフォローできれば、自分が成長してきている証になりGoodですね。
 嫌みな試験官もいるもので、高度な質問を吹っ掛けてくることもあります。試験官がその分野に長けていると思ったら、論破することなく適当な頃合いを見計らって「勉強になりました。帰って考えてみます。」といって逃げましょう。間違っても論破してはダメですよ。
 自分の能力を超えていて解らない質問の場合は、素直に「解りません。」を使いましょう。
 業務の結果、「その後、何に役立っているか?」という質問も考えられます。用意だけはしておくように。応用力が試されるので気を付けましょう。

 どの参考書にもこの必要性が書いてありますが、ポチが3回口頭試験を受けた限りでは筆記試験の内容について質問されたことはありませんでした。(筆記内容が完璧だったんですかネー。アドバイスになってないナー!)

A.上下水道部門、総合技術監理部門それぞれ基礎知識を復習しておく
 それぞれ想定問題を作成しておきましたので、想定問題に答えられれば大丈夫ですよ。

B.技術士法を理解する
 技術士法については必ず質問されます。特に、技術士の目的(第1条)、定義(第2条)、義務(第4条)、公益確保の責務(第45条の2)、資質向上の責務(第47条の2)、及び技術士法の改正点とその背景技術士倫理要綱を熟知したうえで、業務上でいかに配慮しているかという点を解答する必要があります。すなわち、法律条文そのままを答えるのではなくて、自分の業務に即して(一般論でもかまいませんが)自分の言葉で、具体的に述べられるように用意しておきましょう。以下に例を書いておきます。

信用失墜行為の禁止
 技術者の最高資格である技術士としての自覚をもち、辱めるような言動は避けること。
守秘義務
 正当な理由がある場合を除いて、業務上知り得た秘密を他に漏らさないこと。
 正当な理由とは?
 @発注者が真義に反する(契約違反、犯罪行為、倫理に反する行為)行為をした場合
 A緊急避難、犯罪行為、人命救助等、国民の生命・財産を守るためのやむを得ない行為
名称表示の場合の義務
 自分の専門分野を偽らないこと
公益確保の責務
 個人や会社の利益より、公共の利益を第一義に行動しなさいということ。
資質向上の責務(BCP)
 技術は日進月歩進化しているので、自分の技術が時代遅れにならないように、グローバルな動向、社会や顧客のニーズの変化、最新の技術、高い倫理観の保持等に注意を払って、日々研鑽すること。
 総合監理部門口頭試験の技術士法関連を参考にチェックして下さい。

7.読者からのアドバイス

 実際口頭試験を受けられた方からの感想とかアドバイスも多く寄せられています。その中からかいつまんで紹介いたしますので参考にして下さい。

1) 経験と技術体験論文
@ 多くのケースは「10分で説明して下さい」なのですが、何人かの方から「5分で説明して下さい」と言われたケースもありますので、5分、10分それぞれのケースを用意しておくことが安全です。
A 10分の場合、経歴2分、業務8分で用意しました。
・経歴、業務1の概要、業務2の立場、課題、技術的対策、成果と評価、展望について、どの部分が何分かかるか認識しておく。
・練習では普通にしゃべるスピードで10分にまとめること。
・頭に染みこむくらい完全に暗記しておくこと。
B 「技術的体験論文」についての質問はかなりハイレベルなものもあります。特に、「記載項目以外の検討は行わなかったのか?」という質問も多くあります。コストとのトレードオフの関係がありますので、必ず代替え案とそれを採用しなかった理由は考えておくべきです。体験論文での応答状況は非常に大切です。
C 試験官が、体験論文とほぼ同じような内容の論文が発表されていることを知っており、偽装を疑われて苦労しました。
 ポチの知っているケースでも、「多くの同僚が受験に際して同じテーマを選んで書いたためなのか?」、ほぼ同じ内容で昨年合格点をとっていた体験論文が、今年は不合格となったというケースがあります。試験官は3年連続で担当するらしいので気を付けましょう。
 無いとは思いますが、他人の経験を自分の体験と偽って記述することは、技術士倫理的にもすべきではありません。
D 相手の質問の真意・目的がハッキリしない場合、慎重にしゃべることが大切です。質問の真意がハッキリと分かれば、こちらの知識をどんどんしゃべった方が自分自身に勢いがつきます。

2) 体系的専門知識
@ 2人の試験官はまじめに受験者と向き合ってくれている感じがしました。専門知識に関する質問事項は、受験者の専門と思える内容のものを選んでくれていると思います。答えやすい反面、専門分野の知識力を鋭く探られる面もあります。その分、うまく答えられれば、好印象が得られます。自分の担当している分野については、国等の新しい指針や水質基準の改正等があれば、必ずチェックしておきましょう。
A 自分の専門以外の分野も幅広い知識の保有をチェックするために聞かれます。ポチさんのHPの口頭試験で聞かれた質問事項を参考に、自分の専門以外の項目をチェックしておくことが大切です。
B ごく最近改定された(あるいは改定されそうな)テーマを聞かれるのでびっくりしました。最近の話題はチェックしておくべきですね。自分が現在担当している分野のものならなおさらです。

3) 技術士制度
@ 目的、罰則等この分野は自分の言葉で説明できるよう(自分の意見としてしゃべる)準備をしておくことが大切と思います。

4) 口頭試験時間
 
20分経過する前に、口頭試験が終了した場合は、「もういい、帰れ!」的なことが無い限りは、合格の可能性が高いようです。この方の場合は18分だったそうです。
 試験時間が延長される場合は、試験官が受験者の技量を引き出そうとしている場合で、「どうにか救えないものか」という思いからのようです。

5) 退出する際の2人の試験官の表情
 
「にこやか、穏やか」であればOK

6) その他の意見

@ 「あがらないこと」が必要条件ですね。合格するための最も大事な要件です。
A 勉強して受験に望むことは非常に大切ですが、等身大の自分を評価してもらおうとする謙虚さが何よりも大切であると感じました。

2005.11.25 第1回更新
 「3.落ちるパターンその2」と「6.事前勉強のポイント」の内容を補間しました。
2006.11.17 「5.口頭試験の注意事項」に若い方用アドバイスを加筆
2007.11.13 「2.落ちるパターンその1」を加筆
2009.10.01 「7.読者からのアドバイス」を加筆