浄水処理対応困難物質対策

1.浄水処理対応困難物質の特定

 平成24年5月に利根川水系で発生したホルムアルデヒドによる大規模断水を伴う水道水質事故の原因物質は、ヘキサメチレンテトラミンでありました。この物質は、水道法による水質基準項目、水質汚濁に係る環境基準項目、水質汚濁防止法に基づく有害物質にも該当していませんでした。浄水処理により水質基準項目の有害物質であるホルムアルデヒドを生成する物質であったのです。

 このような事故の再発を防止するためには、浄水処理により副生成物として人の健康の保護に関する項目に該当する物質を高い比率で生成するような物質を「浄水処理対応困難物質」として、特定する必要があります。「浄水処理対応困難物質」として、以下の14物質が特定されました。

 なお、「浄水処理対応困難物質」の副生成物である水質基準物質を検査することにより、水質異常事故の発生は感知できますので、「浄水処理対応困難物質」そのものを新たに定期的な水質検査対象にする必要はありません。

2.「浄水処理対応困難物質」を排出する事業者側の管理体制の強化

 「浄水処理対応困難物質」は事故等により水道原水に流入した場合、通常の浄水処理では除去が困難な物質です。このため、「浄水処理対応困難物質」が公共用水域への流入が無いよう、「浄水処理対応困難物質」を取り扱う事業者の管理対策を強化して頂く必要があります。

 「浄水処理対応困難物質」を水道水源に排出する可能性のある事業場が、水道水源の上流にある水道事業者は、排出側での未然防止が図られるよう、「浄水処理対応困難物質」が浄水処理では対応が困難であることを排出側事業者に情報提供しなくてはなりません。

 また、万が一、「浄水処理対応困難物質」が水道水源に流入した場合は、原因者から環境部局や水道事業者に速やかに連絡する体制を構築すべきです。

3.水質事故把握のための体制整備

 水源を共有する水道事業者間の連携を密にする必要があります。

 そして、河川管理者、環境部局等の関係行政部局、研究機関との連絡体制の強化、実施可能な措置と果たすべき役割を明確化し、事故発生時の状況を正確かつ迅速に把握できる体制を構築します。

4.水道事業体における対策

 水安全計画の手法も活用しながら、浄水施設に対するリスクの把握を行います。

 水質事故発生の影響を緩和し対応能力を強化する策としては次のことが考えられます。
@  十分な配水池容量を確保する。
A  水源の複数化予備水源の確保
B  浄水施設を含む水道施設の排水機能を強化する。

5.過去に水質事故の原因となった物質

 「浄水処理対応困難物質」以外に、過去に水質事故の原因となった物質として、以下の物質が挙げられました。これらの物質についても、「浄水処理対応困難物質」に準じた対応を求められています。