筆記試験の注意事項

はじめに−シェルパの「ポチ」が技術士情報を提供する主旨−

 技術士に合格できる人ってどんな人なのでしょう?

 「さしたる苦労もせずに合格しました。」と言う人がいます。「そんなはずはないでしょう?試験の傾向を分析して、ある程度の努力をしないと受からないと思うのですが?特に、総合技術監理部門は仕事に直結している場合が少ないのでは?」と聞くと、「もちろん、ある程度は頑張りました!」と返答されます。
 こういう人は常日頃から業務をこなす中で、技術士にふさわしい実力を蓄えられているのです。試験の傾向を前もってチェックしておき、「対策としての知識を増やしていこう」という姿勢で日常の仕事をこなしておられます。当然、他の受験者と比較して、すんなりと合格されていることでしょう。また、何度受験されても受かる実力の持ち主と思います。このような方が技術士資格を取得するにふさわしい方と思いますし、受験勉強の王道でしょう。天才的な才能をお持ちの方以外はこのような生活習慣で毎日を過ごして欲しいですね。

 でも、このホームページは、「仕事に追われる多忙な技術者で、しかも、仲間や相談する人がいない方に、受験に役立つノウハウを提供できれば」というのが目的です。
 短期間に試験の出題傾向を分析し、「必要最小限+α」程度の努力で合格を実現できるためのお手伝いができればと願っています。

 世間では「何であの人が技術士なの?」と実力のなさで悪口を言われている技術士もおられます。近年の技術士受験にも受験テクニックを磨くことが必須条件となりつつあり、「たいした技術力がなくても受験テクニックに優れた人が多く合格している。」という批評も聞きます。

 このような批評にあえて背き、受験テクニック的な情報を中心に公開しようと思ったのは、
「技術士を目指す」という志を持つ人を大切にしたい。技術士受験を経験する上で技術士たるもののあるべき姿に目覚める可能性が高いからです。また、技術の継承が必要とされている今の水道界に技術士は必要です。
・ 試験の合格には技術的実力以外に「コツ」も必要だ。
という考えから、「今年は受かるかもしれない」という見通しのもとに受験のモチベーションを持ち続けて欲しいと願うからです。

 受験参考書や技術士関連のホームページ等に、「仲間と力を合わせての受験勉強が効果的」というアドバイスが多く載っています。
 私は、上下水道部門「上水道及び工業用水道」科目と総合技術監理部門を取得しています。上下水道部門の受験対策は仲間と二人で取り組みましたが、総合技術監理部門は一人でした。確かに、一人の場合は二人で対処した場合と比べてかなり大変でした。

 技術士の合格には二次試験の筆記が大きなポイントでしょう。時間内に答案用紙を埋めなければ合格は望めませんが、埋めれば良いというものではなく、記入した内容が合格レベルであることが不可欠です。
 「ポチ」の知人に「升目はほとんど埋めたのにダメだった。」と嘆いた人がいます。用意した答案例の内容が合格ラインに達していなかったのでしょうね。残念ながら、この方は何回受けても今のままでは合格は難しいと思います。

 人には、分野によって得手不得手がありますから、一人で受験勉強をしている場合は、多くの分野の答案例を自主作成することそのものが一苦労である上に、自分の用意した答案例が果たして合格レベルにあるのかどうかが大きな不安になることと思います。

 ある大企業の話しですが、毎年、受験希望者に対し、技術士が中心となって技術指導や答案の添削指導等をグループで行い、大きな成果を上げていらっしゃいます。合格レベルの答案例を作成指導した結果と思いますが、指導者の力量がすばらしいのでしょうね!

 では、圧倒的な技術力も無く、仲間もいない方にとっては何が刺激や励ましになり、何が支えになるのでしょうか?
 こういう方は、今までは、受験セミナー等を利用するしか方法はなかった?のではと思います。これからはWEBのメリットを享受するのも一考に値すると思います。

 シェルパの「ポチ」もそのような方々のお役に立てれば幸いと思って、余暇の許す限り情報を提供していくつもりです。

1.願書の経歴

 ポチには副票そのものが試験にどの程度のウェイトを占めるのかは解りません。試験官は副票と論文で技術士にふさわしいかどうか採点するのでしょうから、当たり障りのない内容では加点要素にならないと思います。でも、「ポチ」はあまりこの点には配慮しませんでした。

 業務経歴では、前後関係に矛盾のないことはもちろんですが、誇れる業績(技術士にふさわしい業務経験・実績)は口頭試験のポイントとなるので考慮しておいて下さい。口頭試験で、「何か誇れることがありますか?」と聞かれたことがあります。研究発表、投稿経験、特許取得実績等と聞かれれば答えやすいのですが、「誇れる実績は?」と改めて聞かれると、若干のおこがましさもあってギクッとした思い出があります。
 口頭試験に経歴を聞かれることが多いので願書はコピーしておいて、記述内容と矛盾しないよう配慮して下さい。

 技術士法では、技術士とは、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項について、「計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導」の業務を行う者と定義されています。この7業務の経歴に沿った経験年数が必要ということを念頭に置いて作成しなくてはなりません。気を付けることは、「施工」がないことです。施工に関する経歴が入ってないかは要チェックです。

 総合技術監理部門を受験される場合はマネジメント(管理)部門の経歴が必要ですので、役職や担当等仕事の立場がハッキリと解るような記述を心がけて下さい。

2.勉強時間はどのくらい必要か?

 「どのくらい勉強したら受かるのか?」ということに興味をお持ちですか?(興味のない方はこの項は読み飛ばしちゃって結構です。)

 ポチの尊敬するジョン君は多くの受験生の面倒を見ていて、当然の如く、多くの技術士合格者と面識があります。ポチも「ジョン様」のお陰で技術士の資格を頂いたようなものなのです。
 そのジョン君から「ポチは受験勉強に何時間ぐらい費やしたか?」と聞かれました。ポチは、キリの良い日から物事を始める癖がありますので、「5月1日から試験日が8月第3週の日曜日だったので、約110日間、1日平均勉強時間を2時間とすると、約220時間だね。」と答えたのです。すると、「ヤッパリナー。いろんな人に聞いてみて分かったことなんだが、当落の分かれ目は200時間だなー。(上下水道部門での話しですよ。)」と言うのです。

 ポチはこんなことを調べたことがないので、真偽のことは分かりかねますが、ジョン君の統計的調査結果は、
 「集中して勉強をし始めてから200時間以上頑張ること。」
だそうです。
 「集中して」というのは、「試験日が近づいてきて、ほぼ毎日のように習慣的に勉強し始めて」ということみたいですよ。

 「よゐこ」の皆さん、合格したければ最低でも、受験日までの連続した勉強時間を200時間以上とって下さいね!

 この項目の人気(信奉者)は高く、200時間突破を目指して頑張っておられる受験生が多いと聞きます。頑張る目安としては解りやすいですよね。

3. 経験論文

 経験論文の扱いが2007年度から変わりました。今までは、筆記試験の最初に試験会場で設問を見て記述する方式でしたが、筆記試験合格者のみ、3000文字以内で、設定された設問に対して技術士としてふさわしい経歴を紹介するということになりました。提出期間は合格発表後約2週間くらいしかありません。そのため、筆記試験の合否に関わらず、前もって経験論文を仕上げておく必要がありますね。論文内容は2007年度の場合は以下の通りです。

上下水道部門

 あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」について実際に行った業務のうち、受験した技術士部門の技術士にふさわしいと思われるものを2例挙げ、それぞれについてその概要を説明せよ。さらに、そのうちから1例を選び、以下の事項について記述せよ。
課題
(1)あなたの立場と役割
(2)業務を進める上での課題及び問題点
(3)あなたが行った技術的提案
(4)技術的成果
(5)現時点での技術的評価及び今後の展望

総合技術監理部門

 あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」について実際に行った業務のうち、総合技術監理部門の技術士にふさわしいと思われるものを2例挙げ、それぞれについてその概要を説明せよ。さらに、そのうちから1例を選び、以下の事項について記述せよ。
課題
(1)あなたの立場と役割
(2)業務を進める上での課題及び問題点
(3)あなたが行ったもしくは行うべきだったと考えている総合技術監理の視点からの提案
(4)総合技術監理の視点からみた提案の成果
(5)総合技術監理の視点から見て今後の改善が必要と思われること

@ 論文作成上の基本事項 

 論文作成に配慮すべき文章の「できばえ」についての注意事項をまとめてみました。これは、経験論文に限らず、一般・選択論文も同様と考えて下さい。

1) 読んで解る文章か?

 自分では仕事内容が解りすぎているため、結果として、言葉足らずの説明になっていないか?ということです。試験官が記述分野に詳しく、文章内容から類推してくれるとは限りません。「試験官は自分の記述分野に精通していない」ことを基本に書くべきです。
 そのために、専門外(奥様など)の人に読んでもらい、書いた内容が自分の思い通りに理解してもらえるかどうかチェックしてみて下さい。

2) 「て・に・お・は」等のささいな表現で、書いたことの意味が不明瞭になったり、ニュアンスの異なった内容になっていることはないか?

 これは技術的にやや未熟な技術者や文章の苦手な人に見うけられる欠点です。「どうしようもないこと」と言ったらそれまでなのですが、同業の専門技術者(できれば技術士)に読んでもらい、自分が書こうとしている内容と記述しているニュアンスに相違がないかチェックすることを勧めます。

3) 汚い字でもかまわないか?

 字が綺麗であるに超したことはないでしょうが、7時間も綺麗に書き続けることは至難の業でしょう。ある試験官経験者の方にこの点をお聞きしましたら、「字が汚くても、極力、書かれた内容を理解するよう努めていました。」とおっしゃいました。
 全ての試験官がこの方のような考え方かどうか解りませんが、汚くても読んで頂けるように、できるだけ丁寧に書くよう心がけて下さい。

4) 最後のページは空けないこと。

 書くことが少なくて最後の1枚を書かなかった場合はかなりの確率で不合格になるみたいです。ある試験官は「経験論文、一般問題、選択問題でチームを分けているが、それでも一人の試験官が読む量は膨大です。そのため、全ての答案用紙に字が書いてあるかどうかを最初にチェックします。」とおっしゃっていましたので参考にして下さい。

 次に、基本的に配慮することは以下の4点です。

1) 厚生労働省、経済産業省、国土交通省等監督官庁の事業目標を捉えること。

 まず、基本的なことですが、技術士試験は国家試験ですので、業務の監督官庁の考えを真っ向から否定しない論旨でなくてはなりません。
 上水道は厚生労働省、工業用水道は経済産業省、下水道は国土交通省が管轄しています。これらの事業の目標としている方向性を十分に把握しておいて、その方向性に沿った内容の論文であるべきです。

 監督官庁の事業目標(こちら)を参考にして下さい。

2) 高等の専門的応用能力を自らが発揮した内容となっているかどうか?

 前例踏襲ではなく、コスト縮減、工期短縮、品質の向上、環境対策、業務の効率化等において自らの創意工夫がみられること。最も大切なポイントです。「設計指針や技術指針通りにやりました。」では評価は得られません。自分はどのように課題を捉え、どのように考え、工夫して対処していったかという内容が読み取れなくてはダメです。

3) 倫理規範を遵守していること。

 業務の目的、遂行過程が適法であり、社会的倫理観に沿うものであること。これに反した場合は、全く合格は望めません。(口頭試験も同様です)

4) 選択した「部門、科目、専門とする事項」に含まれる分野の技術内容であること

 願書を書く時点で業績論文の内容を十分吟味していない場合に起こることがたまにあります。気を付けて!

A 経験論文作成のポイント

 経験論文が大きなウェートを占めていると言われていますし、大切なポイントでしょう。

 自分が経験したことですし、試験までに十分な時間がありますのでやりすぎるぐらいの手間をかけて文章の推敲を行って下さい。「自分が経験したことなんだから、まとめるのは簡単だ。」と思っている方がおられるかも知れませんが、答案用紙の字数に限りがありますから、あなたの訴えたいことをストレートに試験官に誤解無く伝えられ、しかも、「なるほどなー!工夫したんだナー。」と感心されるような内容まで磨き上げることは案外大変なことなんですよ。
 それから、口頭試験においても、経験論文の内容についてはかなり「悪意を込めて」質問があることも覚悟しておかなくてはなりませんので、口頭試験での質問を考えながら推敲に推敲を重ねるべきだと思います。。

 自分が過去の経歴を披露して技術士としてふさわしいことをアッピールする論文ですので、技術士としてふさわしい内容でなくてはなりません。

 では、「ふさわしい内容」って何でしょう?
 ハッキリ言ってポチにもこれだという確信はつかみ切れていないのが実情ですが、それではアドバイスになりませんので、ポチなりの考え方を2点ほど述べてみます。

1) 何を伝えたいのか?

 経験論文は、「自分は技術士としてこのようにふさわしいのだ。」ということを論文形式で主張する作業です。結局、「試験官に何を伝えたいのか」を整理することといえます。
 具体的には、
 a 業務を行うに当たって、課題は何だったのか?
 b 課題に対する技術的解決策をどのように考えついたのか
 c その成果を定量的にどう評価したか?
 d その評価の中で、将来的な展望とか考察はどうなのか
ということが記述されているかということでしょうかネ。

 要するに、
 @課題の把握
 A専門知識と応用能力を用いた課題解決能力
 Bコストと施設の高度化のようなトレードオフの関係にある問題に対する代替え案の提示と判断力
 Cこれら一連の業務を論理的に説明できる表現力
が試されるのかなーと思います。

2) どのように文章表現しているか?

 技術士は、説得力のあるレポートを論旨正しく書けないとダメですよね。「文章表現力や口頭での説得力のあること」が技術士の資質であると思うのです。

a 論旨は整然としているか?
 論旨の展開が「起承転結にうまくまとまっているか」ということです。

b アッピール力があるか?
 「文章に迫力があるか」ということですが、文士じゃあるまいし、難しいですよね。必要条件ではなく十分条件として捉えて下さい。好結果が得られた状況を淡々と説明するのではなくて、「どのように考え工夫して取り組んだか」について、「なるほど苦しんだのだなー」というもがき苦しんだ姿が文章中から読み取れればいいのですがねー。

B 口頭試験を考慮した注意点

 口頭試験が15分延長されたことから、経験論文で記した内容は口頭試験の対象として大きなポイントとなることが予想されます。このため、経験論文に記した業務内容の弱点をチェックしておくことを勧めます。

 皆様が技術士にふさわしい業務経歴を選んで紹介する訳ですが、その業務に欠点?が全くなくて他の模範になるようなケースなら問題ありません。しかし、大抵の業務では、ベストの選択が出来ることは希で、経済性・品質・安全性・社会環境面・人的側面等多面的に優劣を考えたときトレードオフの関係に少なからず悩み、ベターの選択を余儀なくされたというケースが多々あると思うのです。

 明確に説明できない場合は、試験官の目がそのような方向に向かわないような書き方の配慮をしておいた方が口頭試験で突っ込まれない秘訣でしょうね。

 これが、自分でチェックできる人は既に技術士たる力量をお持ちの方と言えるでしょうけれどね。そうでない方は、やはり、意見を聞く人に、このような視点を前もって伝えておいて、何人もの人に論文を読んでもらって感想を聞いておくということでしょう。人によって考え方は大きく違うこともありますので、参考になるし、人生勉強にもなりますよ。最終的に意見を取捨選択するのは、あくまで自分が納得できるかどうかによるべきであって、決して権威者や先輩の判断に依存してはだめですよ。あくまで、自己責任に基づく自分で判断するべきです。

 例えば、コスト縮減を意識したあまり、品質・環境配慮・人的負担や安全性等にベストの選択を出来なかったというケースです。このような場合、あるべき最高の姿をイメージしておき、そこまで達成しなくても良いと判断した根拠が明確に説明できるか?という点をチェックしておくべきと思うのです。

4.一般・選択科目

 受験対策のノウハウも各種発表されています。あれもこれも十分に深く勉強することが一番でしょうし、正しいと思います。でも、日常業務に忙しい大多数の方はそこまでできないし、「そこまで頑張らなくては受からない。」ということも無いと思います。
 「ポチ」の廻りにいる技術士の方も勉強の手法は千差万別です。合格レベルの答案例を記憶することが大切ですが、書いて覚える人、野帳に書いて常に持ち歩いて覚える人、テープに記録し何度も聞きながら覚える人、キーワードに整理してあらゆる出題バリエーションに対応できるよう考えている人等さまざまです。自分の好みに合った方法を選ぶしかないと思います。

 「ポチ」の論文対策に関する考え方は、
@ 試験問題を予測し、(勉強の手間を減らす)
A その問題に対する合格レベルの答案例を前もって用意し、
(実際に升目に記入してみて、必要字数をチェックしておくこと)
B ほぼ完璧にその内容を覚えておく
C 試験当日、その用意した答案例にほとんど似通った問題が出題され
D あまり考え直すことなく(少しは取捨選択の調整が有りますが)ほとんど丸写しに近い状態で答案用紙の升目を埋めることができれば、
 (考える時間は数分間が限度。じっくり考えていたら記述時間が足らなくなったり誤字・脱字のチェックができません。)
高い確率で合格できるというものです。

 「あたりまえ!」と言ってしまえばそれまでですが、合格を勝ち取るには「これしかない」と信じています。答案を記述している途中で、消しゴムを使う頻度が多いようでは、合格はかなり難しいのではないでしょうか。

 言い方を変えますと、合格するには「100点でなくても、60点以上取れればいいや。」という考え方といえます。一般・選択科目では、「適切なキーワードを用いて、そのテーマの持つ今日的な課題を整理し、その対応策を明確な論旨で述べる。」という単純?作業と思って頂ければよいのです。
 そうしますと、「キーワードを使って要点を次々と述べていく」という、いわば「情報てんこ盛り型論文」になります。ポチの論文はまさにこの「情報てんこ盛り型論文」なのです。
 そこで、「はじめに」「おわりに」が大切になります。やや格調高い内容の物を数例前もって作っておき、それを出題状況に応じて選ぶというパターンで対応します。この手法ですと、ほとんど文章構成の考察をせずに、いきなり升目に文字を書き込んでいく作業に取りかかれますよ。

ポチの具体的筆記試験対策方法

 HPの投書に「ポチの対策方法は、ある程度力量のある人を対象としているのではないか?」という意見がありました。万人向けかどうかは疑問なのですが、具体的にポチが行っている勉強方法(上記しているABの具体です)を紹介します。誰にでも当てはまる優れた方法と思っていますが、皆様の参考になれば幸いです。

1.まず、Aの合格レベルの答案例を作ります。

 あまり実力のない方や経験不足で多くの分野の知識が少ない方にとっては、まず、合格レベルの答案例を作ることが至難の作業になると思います。ポチの答案例作りを紹介しますので、参考にして下さい。もっと早くから紹介しとけば良かったですかネー。ごめんなさい。

 苦労に苦労を重ねて答案例を仕上げれば一番理想的な姿と思いますが、手間も掛かるし、多くの分野に精通していない若い技術者にはかなり無理というものです。楽してレベルの高い答案例を作るように心がけましょう。ポチがやっている3例を紹介します。

@ 最も手っ取り早いのが、参考書やWEBサイトに掲載されている答案例を参考にして、自分なりにバージョンアップする方法です。
 答案例は合格レベルなのでしょうから、それを自分がバージョンアップしたら内容が悪くなるなんて考えられませんよね。手を入れれば入れるほど改悪してしまうという方が居られましたら、その方は合格は難しいですよ。ほんとに!
 答案例を読んで自分が理解できないキーワードや項目があれば削除します。とにかく、自分が納得できる内容のみで固めなくてはなりません。理由は答案内容に対する自己責任の確立といったら格好いいですが、参考にした答案例を全体的には信用しないということですネ。どんな人が作ったのかもハッキリしないのですから。
 答案例を見れば、そのテーマに関するキーワードが理解できますので、日々は、このキーワードを頭の片隅に記憶しておいて、何かの場面で出くわした場合、更に知識を深め、答案内容をアップさせていくよう心がけて下さい。

 答案例では、ポチの例のように「情報てんこ盛り型」といって、「これでもか」と言うぐらい技術情報量を多く掲載しているタイプと、技術内容は数点と少ないのだけれど、文章の表現力でうまくカバー(何となく、技術力のありそうな雰囲気を醸し出している)しているような「表現力型」があります。
 どちらのタイプが試験の評価が高いのかはポチには判断できかねますが、「表現力型」はコンサル等で検討書等を書き慣れている方でないとうまく表現しかねるのではと危惧しているんですが。(失礼、「中身の乏しいのに表現力でもってカバーしている」という意味では決してないのですが・・・そう言っているよナー!)端的に言うと、あまり経験の多くない技術者がやると「冒険かなー」というか実力バレバレになる恐れがあると思うのです。「ヤマが大きくはずれて、仕方なくあるテーマを選んだけれど、思いつくキーワードが少なくて、字数を稼ぐのにやむなくうまい言い回しに苦労したんだ」と言ったケースなら仕方ありませんがネー。極力、こういう展開にならないように日頃から準備しておきたいですね。

 「情報てんこ盛り型」の利点は、情報量そのものは用意しているわけですから、字数に合わせて内容を間引くという手段がとれます。記入時間が少なくなったら、箇条書きで逃げる手もあります。(箇条書きにすると段落替えにすれば字数は稼げますよ)内容を間引く余裕があったら論文のまとめは相当楽ですよ。
 というわけで、「表現力型」の論文は、ポチはあまり勧めませんネ。表現力に乏しいので、ポチのやっかみ半分のところもありますが!!

  ポチの答案例はどれも3ページ目のほとんど全ての行を使って書いています。これがベストという意味ではなく、皆様方が参考になさるとき少しでも多くの情報を載せておこうという意味なのです。3ページ目の半分ぐらい字が埋まっていたらOKでしょうから、皆様方が例題を作成されるときは、全行ギッシリと埋め尽くしておく必要はないと思いますよ。

A 技術的なテーマの場合は、基本的には「水道施設設計指針2000」の記述内容に忠実に作ります。ポチの答案例ではこの指針の引用が圧倒的に多いのです。今こそ、「水道事業体の責任でもって施設整備をやっても良い」ことになりましたが、一昔前までは、事業認可を受ける場合、上級官庁の認可担当者は「設計指針の何処(何ページ)によるものか?」と口癖のように考えの拠を聞いていました。当時(今でもそうですが)設計指針はバイブルであり、施設整備における法そのものだったのです。
 例えば、Q201やQ220は、施設指針「2.9地下水の取水」のまとめに他なりません。

B 監督官庁の対策指針、専門誌の評論もGoodですね。
 監督官庁の対策指針は水道施設設計指針と同様の扱いです。コンパクトにまとめてあり使いやすいですよ。
 あるテーマを理路整然とまとめてある評論に出会うと嬉しくなりますよね!ポチの「よもやま話」は評論や文庫本をまとめたケースが多いんですよ。賢明なGuestの方はポチの「よもやま話」をまとめて論文例を作っていらっしゃる方もおられます。「よもやま話」がまとめにくい内容の場合は苦情もあるんですよ!コロ君は「ダム貯水の水質保全対策」なんか、「このまままとめれば、論文例になるね」と誉めてくれました。そのつもりで作っているのですが、皆様いかがでしょうか?(え、自画自賛も甚だしい?陳謝・陳謝!)

2.この論文の要旨をまとめます。

 この答案例が「Q201 深井戸に生じる障害を挙げ、その機能回復対策についてあなたの考え方を述べよ。」であったとします。

 内容を覚え字数を計るためですから、洒落た言い回し等があれば、それも記しておきます。要旨を忠実に文章化できれば字数はちゃんと合うはずですよネ。「字数も大切だ」と思っていますので、この要旨に沿って概略を暗記します。

1.はじめに
 深井戸とは被圧帯水層取水の井戸、ケーシング、スクリーン、水中モーターポンプ、揚水管。
 被圧地下水は水質良好、水温一定、水道水源に適、狭い用地から比較的多量の水を得る、適正揚水量の範囲内で取水する
 揚水位や観測井による自然水位の変化や水質を常時監視、比湧水量の経年変化を記録、水位低下や揚水量の変化、水質の異常を早期に発見

2.揚水位の低下、揚水量の減少
 比湧水量の異常を察知:揚水位や自然水位の調査、揚水試験の実施、テレビカメラによるストレーナ、ケーシングの異常確認・・原因を確定
@過剰揚水
井戸の相互干渉や揚水量の減少、地盤沈下や塩水化
 自然水位、揚水位、揚水試験結果を過去の記録と比較・・過剰揚水・・揚水量の減少修正
Aスクリーンの目詰まり
 目詰まりの原因は1.鉄又はマンガン酸化物の付着2.生物塊、嫌気性微生物の異常繁殖3.細砂、シルトの詰まり
 スワビング、過大断続揚水、高速ジェッティング、バックウォッシング、薬品処理法
B井戸の腐食
 ケーシング、ストレーナが腐食し穴があく・・砂の流入・・原水の濁り、ポンプインペラーの摩耗、揚水量の減少、井戸の崩壊、
 濁度計による毎日監視
 水中テレビカメラでケーシング、ストレーナの状況検査で場所を特定し、補修する。原因は、迷走電流の電食や局部電池作用の自然腐食等
 対策としてはケーシングの電気防食工事を行う。
C溶解性物質による水質異常
 地下水の水質は、地下水と地質との相互作用に依存、過剰揚水や水位低下により変質する。
 浄水処理工程で対策を要するケース・・鉄、マンガン・・スクリーンの目詰まりや赤水の原因・・塩素の酸化とマンガン砂の触媒作用で除去

3.水質汚濁事故
1) 汚染井戸対策
 揮発性有機塩素化合物(トリクロロエチレン)帯水層に浸透・・非常に遅い速度で進行・・長期間取水停止
@排水を目的に汚染井戸から連続揚水を続ける。
A汚染井戸を封鎖・・地中防護壁の構築、セメントミルクの充填・密閉
B揮発性の高いトリクロロエチレン等の汚染・・バッキ装置(ストリッピング)を設置して、大気に気散除去。大気汚染・・活性炭吸着処理

2) 井戸の汚染防止対策
1.汚染水が井戸の遮水工を通って浸入する恐れがある場合、上部スクリーンまで遮水工にセメントミルク等を注入し、遮水補強を行う。
2.汚水がケーシングの腐食孔から浸入する恐れのあるときは、二重ケーシングとセメンティングの併用で遮断する。

3)汚染土壌の浄化対策
 汚染土壌の除去、土壌中の汚染地下水の揚水、汚染物質の気化回収

4.おわりに
 地下水の保全・・人為的汚染を防止&個々の井戸の過剰揚水を戒め
 自然地下水位の動向に注意、経年劣化した井戸・・機能診断、早急な修復工事、適正管理・・良好な地下水環境を利用者全員で保全していく心構え。

3.目次の作成と暗記の励行

 次に、暗記をスムーズに行うための暗記用目次を作ります。内容は次のようなものです。

題:深井戸に生じる障害を挙げ、その機能回復対策についてあなたの考え方を述べよ。(2)
「はじめに」
1.揚水位の低下、揚水量の減少(4)
  過剰揚水、スクリーンの目詰まり(原因3、対策5)、井戸の腐食、溶解性物質による水質異常
2.水質汚濁事故(3)
 汚染井戸対策(3)、汚染防止対策(2)、汚染土壌の浄化対策(3)
「おわりに」

 筆記試験間近になると、この目次を見て内容が言えるかどうかをチェックするのです。
 まず、このテーマでは述べる論点は2つであることを題の最後の数字は表します。2つを言えるかどうかチェックします。
 言えた場合、最初の論点(揚水位の低下、揚水量の減少)では4つの項目を述べます。述べられるかどうかチェックします。項目に数がある場合は、その数だけの内容が言えるかさらにチェックを行います。
 次の論点のチェック方法も同様な作業です。
この論文には「はじめに」と「おわりに」がありますので、概ねどんなことを述べるべきかチェックします。

 この作業は、できれば筆記試験の1ヶ月前位から入ることができればBestですが、2週間位前でも十分ですね。休日以外でも、1日に6テーマくらいはこの方法でチェックできますから。ポチの方法は概ねの字数も把握できるのが利点だと思っていますが、皆様はどう思われます?

ヤマの勧め

 「ポチ」は受験勉強に十分な準備などありえないと思っています。そこで、ヤマをはるのです。
 ヤマをはるのは受験対策時間に限りがあることと、合格レベルの答案を作成しようにも多くの問題には対処し難い力量的事情があるからです。多くの答案例を作っても合格レベルに達していなければ意味がありません。
 この点は大切ですので、ヤマが当たった答案例が複数あっても、「自分が最も自信のある答案は何か?」ということを吟味しておくべきです。(当然解っているよね!)

エピソード1

 「当然解っていること」を実際に実践したハチ公を紹介します。
 平成13年の一般問題「既存システムの高水準化」と選択問題「A水道施設の更新計画」に関する解答は概ね同じ内容になります。
 ハチ公は老朽施設の更新計画には絶対的な自信を持っていました。1分ほど迷ったあげく、「一般問題と選択問題では、試験官が違うだろう!」と推測し、同じ内容を書いたというのです。ハチ公はみごと合格しました。

総合技術監理部門の論文対策

 総監部門の対策はほとほと困りますよね。傾向がコロコロ変わっていまして、ほんと「どうしましょう?」という気分です。総監部門といえどもポチの対策は基本的には上下水道部門と同じですが、平成17年までの対策はこうでした。

 経済性・安全・情報・社会環境・人的資源管理の5つの課題のうち記述指定される課題が2つ、残りの3課題の中から1つを自由選択できる内容です。どの課題が指定されるか解りませんので、選ぶテーマは当然5つの管理を網羅した業績を選ぶ必要があります。
 答案は、600字詰め原稿用紙(24文字×25行)2枚の1200文字に書くので、「ポチ」は、「はじめに」=10行(240文字以内)、5つの課題=各10行、「おわりに」=9行(1行分は予備に当てる)で説明できるよう組み立てました。
 「はじめに」と「おわりに」は5つの課題のうち、どの3つが選ばれようとも同一文で文章が成り立つように工夫しました。

 しかし、平成17年度総合技術監理部門の筆記試験では、ナント経験論文と一般科目が同一問題として出ました。(結果として1問必須ということです)
 「全部門の共通問題は何があるか?」という観点では非常に優れた問題でしょうネー。共通問題でないと、専門とする部門によっては難易度が変わることになりますからネー。この出題パターンは今後の代表的出題傾向となる可能性が高い確率であると思いますよ。
 今までの出題傾向と共に準備しておくことを勧めます。基本的な対策は上記と同じですが、字数が多くなりますのでそれなりに調整して下さい。

 ポチの予想どおりに出題されれば、各文章は完璧に暗記していますので、当日はそのまま原稿用紙に写すだけの作業です。全く楽勝!!
 総監部門は3時間30分間ぶっ通しの試験ですから、体験論文は楽勝で素早く書けることが合格への近道です。・・・思い通りうまくことが運べばの話しですがネ!

5.「ポチ」のおすすめ参考書

 「ポチ」のおすすめの参考書は次の4つです。挙げればキリがありませんが、少ない労力で最大の効果という点ではこれでしょう。

@ 水道施設設計指針(日本水道協会)

 上下水道部門の選択問題に対する技術論には、この設計指針に則った方向で作成すべきと思います。ただし、設計指針に載っている事項は全てOKということではありません。自分が知っていて(知らなくても勉強して理解できたことならOK)、しかも効果的と思えるモノのみしか取り上げないことを勧めます。なぜなら、設計指針の通りにやることが技術士の資質ではないからです。やはり、設計指針は参考にするが、「自分はこのように考え、このように対処しました」という自分らしさが必要だからです。
 例えば、コンクリート構造物のひび割れ防止策(P48)として「伸縮継手間隔の一般論と共に、間隔を大きくとる傾向もある」と記述してあります。「ポチ」ならば継手間隔を大きくすることには賛成しかねる立場で書くと思います。ある試験官経験者が「自分の考えが無く、ただ設計指針の通りを書いている場合は減点する。」とおっしゃっていました。
 「設計指針の内容には沿いながら自分の意見を少し入れる」という姿勢が大切みたいです。

A 技術士ビジョン21(日本技術士会)&技術士法

 技術士のあるべきイロハが書いてあります。技術士法と共に必読と思います。
 日本技術士会のHPからダウンロードできます。

B 水道ビジョン(厚生労働省健康局平成16年6月)

 言わずと知れた21世紀の水道事業の進むべき方向性です。5つの長期的目標は知っておいて下さいね。
 概略で良ければ、「監督官庁の事業目標」(こちら)を参考にして下さい。

C 技術士制度における総合技術管理部門の技術体系第2版(日本技術士会)

 いわゆる青本です。総監部門の必読書ですが、読みにくいことこのうえない本です。「ポチ」の友人の「ジョン」達は「最初は読みづらいが、よくまとめてあり、600円どころか何千円でも売れると思うよ!味のある本だ。」と絶賛しています。何千円で売れることは賛同しますが、「ポチ」には何度読んでも(何度も読んでませんが)味が解らず、理解しがたいのです。
 でも、この本をはずしての試験勉強は成り立ちません。5択問題はこの本から大部分が出題されます。平成16年度の5択の問題の内、数問は本にない項目が出題されたのではないでしょうか?でも、60%の正解で合格ですから気にすることではありませんけれど!
 情報管理関連は新しいキーワードがどんどんでてきますので、他からの知識補充が必要と思います。新聞やメディア等で出てくる言葉をその都度理解していく程度で良いのではと思います。
 「ポチ」は青本の理解に苦しみました。そこで、5つの管理のキーワードに対する説明文をExelで一覧表にして、何回も読み直しながら覚えました。この表にまとめる作業が極めて大変でしたがねー!青本の記述では理解し難かったキーワードはWEBで検索して補いました。「もう一度この作業をやれ」と言われればゾーとします。何しろ、普通の仕事をしている人が5つの管理内容に最初から精通していることなんてアリエナイですからね。

その他に

@ 日本水道新聞、水道産業新聞

 最近の話題がタイムリーにしかもまとめて論調されています。話題の重要性をチェックするには最適でしょう。でも必要条件ではありません。ポチのトピックスに話題性のあるテーマは載せるよう努力します。 

A 水道公論

 上下水道の話題を要領よくまとめてあると思います。論調もしっかりしています。余裕が有れば目次だけでも目を通すことを勧めます。

B 「水道の水はどこから」−水道水源開発Q&A(改訂版)(日本水道新聞社)

 水源に関する論述が詳しく参考になりました。ポチのよもやま話にちょくちょく引用しています。

雑感

 市販の参考書は高いですねー。でも、試験の傾向を調べるには仕方ないですよね。トホホ。「ポチ」も何冊か購入しました。傾向分析は必須ですから、「ポチ」のホームページではせめて試験問題くらいはお知らせしようと一覧で載せました。
 参考書の中には優れている内容のモノももちろんありますが、中には、「これが合格ラインの論文なのかなー」と首をかしげるモノもありました。合格ラインが解らないので何とも言えませんが。全て受験者の自己責任と言うことでしょうネー。

2005.8.21 初版
2006.2.15 予想問題を独立させるためにはずす。受験対策を補足しました。
2006.5.15 「ポチの具体的筆記試験対策法」を追加しました。
2006.5.22 「ポチの具体的筆記試験対策法」に「合格レベルの答案例の作り方」を載せました。
2006.10.12 「2.勉強時間はどのくらい必要か?」を追加しました。
2007.11.19 「3.経験論文」の内容をUpDateし、加筆しました。
2010.06.23 若干の補足