消火設備

連結散水設備

 地階のみに設置する設備で、火災発生に備えあらかじめ天井又は天井裏に散水ヘッドを備え、消防ポンプ自動車から建物に設けた送水口、送水配管を通じて送水しヘッドから散水させ、たとえ消防隊が地下へ進入できなくても消火活動が可能となるようにする設備
 床面積の合計が700m²以下の比較的小規模な地下街に設けられ、ポンプ車で加圧した消火用水を送水して散水ヘッドより散水することにより消火活動を行う。湿式配管で、火災による熱で散水ヘッドが開栓し、散水開始する「閉鎖型」と、散水ヘッドに感熱部が無く、乾式配管に送水することで散水が開始する「開放型」とがある。送水口は連結送水管のものと類似しているが、開放式散水ヘッドが4個以内の場合は単口型が用いられることもある。
開放型:送水区域内のヘッドから一斉に散水する
閉鎖型:火災の加熱を受けた部分のヘッドだけが開放されるので、散水も火災部分に限られ、他への水損も少なくてすむ利点がある。

散水ヘッド   送水口格納箱   送水口格納箱

スプリンクラーとの違い

 スプリンクラー設備とよく似ているが、スプリンクラー設備は水源、加圧送水装置を有し、自動的に火災を感知して消火する点で異なる。

スタンド式送水口

連結送水管

 消防隊専用栓とも呼ばれ、外部からの消火活動が困難な、7階建て以上の建物、または5~6階建てでかつ延べ床面積が6,000m²以上の建物、もしくは面積1,000m²以上の地下街に設けられる。 送水口、送水配管、放水口で構成され、ポンプ車より加圧された消火用水を送水口から放水口へ送水する。

• 送水口 - ポンプ車が容易に接近できる場所に、床面からの高さ50cm~1mの位置に設けられる。スタンド式と壁面埋込式とがあり、接続口が2つある双口型が用いられる。

送水配管 - 通常時は配管内を空にする乾式と、常時配管内に水を満たしておく湿式とがある。乾式は比較的小規模な連結送水管や寒冷地などに採用され、消火訓練や放水試験などで使用したあとは、腐食防止のため排水弁から配管内の水を抜く。11階以上・高さ70m以上の建物は原則湿式とし、高さ70mを超える建物には、ポンプ車による送水を補助するため、非常電源設備を備えた加圧送水装置を設ける。

• 放水口 - 各階の階段室や非常用エレベーターのロビーなど、消火活動を行いやすい場所に、床面からの高さ50cm~1mの位置に設けられる。開閉弁を収納する放水口箱には放水口を示す標識が取り付けられる。

 連結送水管、連結散水設備とも基本的に消防隊員以外が使用するものではないが、通常時より送水口や放水口の近くに、消火活動の妨げとなるものを放置しないことが求められる。

屋内・屋外消火栓設備

 消火栓には、屋外の地中や道路の脇に設置される屋外消火栓と、消防法の規定によって防火対象物に指定される建築物内に設置される屋内消火栓の2種類の消火栓がある。この二種類の屋内用と屋外用の消火栓の設置基準が大きく異なる点の最大のポイントは、その使用者と考えても良い。

① 屋外消火栓
 屋外消火栓を使用する大半のケースは消防隊員が消防活動を行う際に利用するケースが大半である。その為、消防隊員の消防活動に支障をきたさないように様々な配慮がなされた設置基準が定められている。屋内消火栓より放水の能力が高いため、屋外に設置し軒高の高い工場、倉庫などの消火、延焼阻止に用いる。屋外消火栓の設置は1,2階に限定され、3階以上に消火栓が必要な場合は、屋内消火栓が併設される。

② 屋内消火栓
 屋内消火栓設備は、放水量および有効射程が大きい為、消火器では消火不可能な段階の消火を目的として屋内に設置され、建物の内部に及んだ火災を人が操作することによって消火する設備です。水源、加圧送水装置(消火ポンプ)、起動装置、屋内消火栓(開閉弁、ホース、ノズル等)、配管・弁類及び非常電源等から構成されています。
 ポンプの起動方式は、主にポンプ起動押しボタン(専用)によるもの、自動火災報知設備の発信機を押す事によるものがあります。 また、最近では消火栓弁を開放する過程で自動起動するものや、ホースの延長操作による自動起動等もあります。

 屋内消火栓を使う実際の火災時には、消防隊員以外の一般人が消火栓設備を使用するケースも考えられる。その為、より簡易的に消火活動が行える設備構成や、わかりやすい消火栓の位置の表示など、屋外消火栓とはまた別の配慮がなされている点を把握しておく必要があります。

 屋内消火栓の種類には、放水圧力、放水量及び操作性によって、工場、倉庫など消化力の強力な二人操作による1号消火栓や、旅館、ホテル、病院などには、操作性を重視し、より簡単・的確に消火活動を行える易操作性1号消火栓及び2号消火栓等を設置するよう指導され、それぞれ、設置する防火対象物及び水平距離が定められています。
 屋内消火栓の開閉弁の配置に関しては消防法によって、床面から1500mm以下に設置する事が義務付けられている。1号消火栓の開閉弁の高さ規定を設けているのは開閉弁の位置が建築の都合であまりにも高い位置に配置されると、「女性が届かない」「開閉弁がまわしづらく放水が開始できない」など利便性を考慮したものです。

 その水源に連結する加圧送水装置(消火ポンプ)は、点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること。消火ポンプはうず巻ポンプであるため、起動する時は、羽根車が入っているケーシングの中は水で満たされている必要があります。起動するたびに呼び水を入れるわけにはいかないので、呼水槽を設けケーシングの中を満水にするのです。そのために、水源が床下にある吸い上げ方式には、吸込管の先端にはワイヤ付フート弁が必要となります。

 屋内消火栓設備には非常電源を附置すること、とされています。
<注>「附置」とは、主とするものに付けて設置することの意味。

泡消火設備

 泡を使用するとこにより、水よりも消火能力が高くなり特に油火災に威力を発揮するため、駐車場などに使用されることが多い。ただし、水を含んだ泡を用いるため充電部やコンピューターなどがある部屋での使用には向かない

水噴霧消火設備

 開放型スプリンクラーとほぼ同等の設備であるが、水を霧状に噴射し、油火災や変電設備等普通の消火設備では適応できない火災を鎮圧する設備である。特に屋外タンクなど建物そのものが容器になっている様な建築物の場合、水を噴霧することで、タンクの破損などによる火災の拡大を防ぐ効果を持つ。ただし、天井の高い空間には向かない

粉末消火設備

 適応はガス系消火設備や泡消火設備と酷似しているが、凍結の恐れがある場所等で良く用いられる。特にホースを持って移動する移動式については、設置の容易性と経済性から、駐車場に使用されることが多い。

不活性ガス消火設備

 電算室、変電室、駐車場等に用いられる特殊な設備である。二酸化炭素・FM200等の代替ハロン・窒素・イナートガスを使用したものがある。
 二酸化炭素消火設備は汚損の危険は無いが、放射時、区域内で人間が生存できない、アナウンスがあれば直ちに避難する事が緊要である。 ハロン規制により危険の少ない窒素等の消火設備が多くなってきたが、容器のスペースの関係上、二酸化炭素が使用される場合も多い。
 窒素ガス消火設備は、汚損の可能性もなく、放射時に区域内に人がいても健康な成人であればまず無害である。

非常警報設備

 非常警報設備は、消防法に規定された防災設備のひとつで、音響を用いることで防火対象物の収容人員に対して火災を知らせるものです。建物内にいる人員に対して火災などを知らせるなどし、避難を促すための設備をいいます。
 収容人員が20人以上50人未満の場合は、非常警報器具の設置義務が発生します。非常警報器具は、警鐘、携帯拡声器、手動サイレンなど、比較的簡易な器具のことです。
 非常警報設備は非常ベル、自動式サイレン、放送設備のことで、自動火災報知設備の作動に連動、または、放送設備の操作部を人が操作することで、建物内に設置されたスピーカを通して災害の発生及びその状況等を人々に知らせるものです。多数の者がいる防火対象物等に設置が義務付けられています。旅館や病院では、収容人員が20人を超えると、非常警報設備が必要になります。収容人員が50人以上または、地階・無窓階(窓があっても格子等で容易にできなければ無窓階と判断します)では、放送設備が義務付けられています。