総監部門 口答試験予想問題 マネジメント

 はH16年度にポチが聞かれた問題(類題を含みます)です。

1.総合技術監理が必要とされる背景は何だと思いますか?

 科学技術の巨大化・複雑化が進展しており、事故や環境汚染などが発生した場合の社会への影響が、従来に比較して大きなものとなっている。
 このような状況の中で、組織活動を継続的、発展的に運用してゆくためには、業務全般を見渡した俯瞰的な把握・分析に基づいて、技術の改善、より合理的なプロセスによる安全性の確保、外部環境負荷の低減などを行う必要があり、複数の要求事項を総合的な判断により全体をバランス良く監理していくことが必要となっている。

2.総合技術監理部門に要求される技術者像は何と思うか?

 国際的視点や高い倫理観を持ち、公益の確保を最優先に置き、相反する複数の課題(要求事項)に対して総合的な判断を下せる技術者

3.総合技術監理部門に要求される能力の養成はどのようにすればよいか?

@経済性管理、人的資源管理、情報管理、安全管理、社会環境管理の5つの管理を個別に理解、
A技術者倫理に対する理解、
B科学技術の進歩への関与、
C社会環境変化への対応
等の知識を習得すると共に、
D常に俯瞰的立場で総合的に判断する習慣を日々の業務を通して実践しながら身につけていく。
 つまり、正しい知識の習得と日々の実践の両立が必要ということであり、さらに、その技術力の向上を図る努力を常に継続しなくてはならない。

4.総合技術監理部門の今後について、どのように考えますか?

 5つの管理の要求事項を総合的な判断により全体を管理、運営していくことは、企業活動の持続・発展において不可欠の要件であり、あらゆる事業やプロジェクトの推進において、発展・浸透していくものと考えます。(PFI、第三者委託や民営化等経営上の選択肢が増えている。)

5.問題点を洗い出すとき、どんな方法をしているか?

 (皆様の実践されている手法を紹介して下さい。)

 KJ法を利用して、ブレーンストーミングと親和図の作成を通して問題点の整理をしている。

6.総合技術管理面から何が重要か?

 「バランス感覚」
 5つの管理の課題解決においてトレードオフの関係にある複数の問題事項を、優先順位や経済的実施手順の検討等、経営全般を勘案した改善策を判断すること。

7.結局、総合技術監理とは何か?

 幅広い観点で、バランス感覚を持ちながら事業を成功させること。

8.上下水道部門と総合技術監理部門との違いは何か?

 上下水道部門は個別の技術の理解、応用という能力を問われている。
 総合技術監理部門は業務全般を見渡した俯瞰的な把握・分析に基づき、トレードオフの関係にある複数の要求事項を総合的に判断して、全体を監理していく能力である。

9.総合技術管理面で苦労した点は?

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

@ 建設推進派である私たち技術者の技術提案と財政担当者の経営的立場(財政面)とのトレードオフ問題での対立
A 技術的最善策(Bestな対策)にのみ固執する技師の説得(Betterな案で納得させること)

10.技術提案が受け入れられなかったとき、あなたはどうしますか?

 反対者が何を理由に反対するのかを十分認識することが大切です。
 反対理由が自分の提案と相容れない価値観の相違にある場合は、反対者の価値観に沿った代替え案を複数案提示し、自分の提案の優れている点を十分にアッピールする必要があります。反対者の反対理由に対する適切な返答は不可欠です。
 関係者が判断に必要な情報や知識を持ってない場合は、関連する事項や過去の事例を付け加えます。

11.あなたの職場での総合技術監理の必要性は?トレードオフの関係にあるものは何か?○

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

 水道サービスの向上としての安全・安定面の技術的推進や環境対策と財政的な健全経営基盤の確立がトレードオフの関係にあり、総合技術監理が必要となる。 

12.それに対する対応策についてあなたの考えを述べよ?○

 (11.に続いて皆様のケースを紹介して下さい。)

 まず、建設投資に回せる資金計画をたてます。資金計画上のリソースを踏まえ、水道事業の各部門で特定されたリスクマネジメントをしっかり行い、事業の優先順位と必要とする事業規模や程度をハッキリさせた上で、効率的投資を行うことです。
 建設資金を造る方法は、料金値上げ、リストラの推進(退職者の不補充)による給与費の削減、必要な投資の先送り(優先順位の設定による重点投資)の3点しかない。

13.相反事項に対し何にプライオリティを置くか?

 公益の確保

14.トレードオフの実例について述べよ。○

(皆様のケースを紹介して下さい。)

(ア) 耐震管路化への対応と配管布設費の高騰による布設替実施距離の減少、老朽管の残存距離の増加
 φ150mm以下はPE管を採用予定。PE管の価格交渉・・・鋳鉄管T型と同程度とする。
残存させる管の選定は漏水時に大事故とならないもの。

(イ) 水質試験室を維持するか、委託に切り替えるか?
 水質試験項目の必要性と高度化は年々高まっている。そのための技術者育成や機器の整備とコスト(試験の委託の方が安い)のトレードオフ。
 試算では直営の方が高くついていたが、河川管理者所管の水質試験を委託することでトータル的にペイすることとなり、自前の技師の確保と水質試験設備の充実に踏み切った。
GLP:優良試験所規範
水質検査機関は、「国民の信頼を得るために、信頼性保障システムを導入すべし」という考え方。
日水協が認定業務を開始するための準備プロジェクトチームを設けて対応する。H17年度から受け付け開始された。
20条機関:水道事業者は必要な水質試験施設を設けなければならない。厚生労働大臣の登録を受けたものに、委託してもよい。

15.日頃、仕事を行う上で心がけていることは何か?

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

 まず、「職場の雰囲気は良いか。」という点です。
 次に、仕事の方向性、「目指す目的は正しいか?」というチェックです。目指す施設の機能アップを含む更新計画とコストとのバランス問題です。

16.環境保全や安全管理において、それらの項目について、何を基準に審査しているか?

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

 建設工事における廃棄物処理状況や発生汚泥の処分状況はマニュフェスト管理
 深夜電力使用量については深夜電力使用比率の動向
 浄水場職員の健康状況は半年ごとの検便チェック 

17.暴力団のようなところが絡んだ場合、どう対処しているか?

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

 1億円以上の建設工事の発注があった場合、エセ同和団体からの受注業者紹介依頼がしょっちゅうありました。「現場代理人名は個人情報であり教えられない。」旨を伝え、ハッキリとお断りしています。

18.工事中に地域からの苦情(環境問題)が発生したらどうするか?○

(皆様のケースを紹介してください。)

 浄水場建設においては、周辺住民の井戸の枯渇、住環境に関する騒音、振動、大気汚染、交通障害、電波障害等の苦情が考えられる。いずれにしても、住民と十分な対話を行い、恒久的な措置、緊急避難的な措置の対策案を示し、納得してもらって、工事に協力して頂けるよう働きかける。
 約束したことは必ず守り、信頼関係を築くことが大切です。そのためには、約束事項を遂行する工事計画書を作成して、作業員まで徹底することと、日頃のコミュニケーションを密にするよう、相手の家に出向いて行って、その後の意見を聞くような努力が必要です。

19.水道事業におけるリスクマネジメントのポイントは何か?

 都市の水道は他に代替えのない給水手段となっていて、重要なライフラインであることを踏まえ、リスク(安定=断水回避、安全)の特定をしっかり行うことです。必要不可欠で優先順位の高い投資の選定を間違えずに行うことが、水道財政の健全化とのトレードオフを解決する不可欠の課題です。

20.浄水場建設中に遺跡が発見されたらどうするか?

 一般的には、遺跡の重要度と対応方法(遺跡の発掘調査と保存方法、費用負担、調査期間等)を関係機関と協議し、対応することとなります。 

 ポチの場合は、実際に、配水池建設用地買収後そこに中世の山城(出城的なもの)遺跡があって、遺跡調査のため工事を1年間遅らせた経験があります。
 行政の担当機関と相談し、調査等の対応策、費用面の煮詰めをして対応しました。用地費60万円で購入した土地に対して、遺跡調査費が800万円の見積もりで1年間の工事延期が結論でした。

21.水道の今日的テーマである高度浄水処理の導入に関して総合技術監理の立場から見解を述べよ

 高度浄水処理の導入は水道料金の値上げ(事業体の実施例では15円/トン程度)を伴う、投資額の大きなプロジェクトです。このため、導入の必要性が重要で、「飲料水としての水道水の味をおいしくする手段」である場合と「THM対策等水質的安全性の確保のため」とでは考え方が違います。
 後者は、他に有効な代替え手段がない場合は必要不可欠な装置なので導入を前提に資金計画を立てる必要があります。
 一方、前者は、料金値上げの負担を容認してでも水道水の味をおいしくする必然性があるかどうかを、お客様である需用者と十分なコミュニケーションを行い、社会的受容を受けるべきと思っています。

22.小さな浄水場の管理は何人ぐらいで可能と思うか?

 水源水質、遠隔操作及び監視システムの整備状況、緊急時の対応体制等の条件により一概には言えないと思う。
 集中管理センターで24時間常時監視を行い、緊急時の動員体制等の対応体制が整っている場合、数万トン処理の浄水場で月曜〜金曜の日勤のみで5〜6人で可能と思う。数千トンクラス以下の場合は日常点検でも対応できるでしょう。(ポチの見解で、オーソライズされたものではありません)

23.経験論文について書かなかった残りの2つの管理について述べなさい。

(皆様のケースを紹介して下さい。)

24.経験論文の安全管理について、リスクマネジメントの面から述べよ。

(皆様のケースを紹介して下さい。)
 リスクマネジメント的な言い方が出来るように前もって準備しておかないと難しいかもしれません。

25.管理項目のうち、現在から見た反省点は何かありますか?

(皆様のケースを紹介して下さい。反省点ですので慎重にテーマを選んで下さい。「ありません」でも良いと思います。ただし、試験官が疑問に思うことがあって、具体的に細かい点を聞くことになれば答えざるを得ないですね。)

26.経験論文の業務がどうして総合技術監理部門にふさわしいと考えたのか?

(皆様のケースを紹介して下さい。)
25.26.の問題は試験官が具体的な問題点を感じている場合の質問と思われます。

27.プロジェクトマネジメントの目的は何か?

 ISO10006はISO9000と合わせて活用することが前提で、プロジェクトの目的を達成するために求められる要求事項を規定している。
 プロセスの考え方は
@ 戦略プロセス
  現場をどのような思想で施工していくか?(作業所方針)
A 相互依存のマネジメントプロセス
B 範囲に関するプロセス
C 時間に関するプロセス
  工程表の作成
D コストに関するプロセス
E 経営資源に関するプロセス
  実行予算書の中に自分の経営的な思惑を反映させる
F 要員に関するプロセス
G コミュニケーションに関するプロセス
  設計は意匠・構造・設備チームのコミュニケーションが大切
H リスクに関するプロセス
I 購買に関するプロセス

28.プロジェクトマネジメントとリスクマネジメントの違いは?

 プロジェクトマネジメントは特別な目的のプロジェクトを達成するための要求事項が規定されており、広義の品質マネジメントといえる。
 リスクマネジメントは組織に潜在するリスクを特定し、発生確率と被害規模を想定し、対策の優先順位を決めて対策を決定する管理手法。

29.プロジェクトマネジメントとリスクマネジメントの優先順位は

 一概には言えないと思いますが、リスクマネジメントはそれぞれ異なる管理項目のリスクを総合的に判断する意味で、上位になるのではと思います。

30.総合技術監理としてのリスクマネジメントとは?

 異なる管理項目のリスクを総合的に判断し対応を検討するための有効な技術だ。リスクマネジメントは、組織のあり方や最適な対処法を検討・改善するのに適している。

31.自分の業務の中でリスクマネジメントをどのように活用するつもりか

 事業の中のあらゆるリスクを洗い出し、ISO9000、ISO14000、OHASA18000のシステムを採用し、PDCAサイクル方式で管理したい。

32.どのようなリスクマネジメントをしているか?

 (皆様のケースを紹介して下さい。)

@地震・風水害・雷等による水道施設被害による断水事故の発生原因(停電、故障、漏水)と対策(材質、設計施工手法、維持管理手法)
A浄水システムの安全に関するリスク(毒物、クリプト、薬品注入ミス)と対策 
B幹線管路の漏水事故対策(管材のストック、業者の緊急対応体制、漏水調査)
C個人情報の漏洩対策、ウイルス対策

33.リスクマネジメントに必要な要素は何ですか?

 被害規模と発生確率を勘案したトレードオフ的対策決定(保有、低減、回避、移転)。

34.リスクマネジメントの流れについて説明しなさい。

 リスク対応方針を立て、リスク特定を行い、それぞれに対してリスクアセスメント(リスク分析:シナリオ分析+リスク算定、リスク評価)を実施し、リスク対策を行う。

35.リスクアセスメントとは?

 リスクの発生確率と被害規模の算定を実施し評価(優先順位)すること。リスク分析とリスク評価のこと。

36.我が国においてリスクマネジメントを低調にさせてきた理由は?

 我が国ではリスクを封じ込める手法が一般的に取られてきた。(リスクの封じ込めはリスク対策の1手法ではあるが、)リスクマネジメントは確率的思考やトレードオフ的意志決定を要求するものである。
@我が国では潜在するリスクに対して注目することが比較的少なかった。経済成長が持続する環境下にあったことがリスク認知を低調にしてきた。
A官民一体となった産業政策やメインバンク制、終身雇用などがリスクを分担もしくは覆い隠す機能を果たしてきた。

37.リスクアセスメントの重要性が強調される背景での組織活動の課題は何か?

 リスクアセスメントとは、組織活動に潜在するリスクを把握し、それぞれのリスクに対してアセスメントを行い(発生確率と被害規模を想定し、対策の優先順位を決める)明確な対応方針に基づいて対策を決定することであるが、課題はトレードオフの事象をバランスよく整理することである。

38. リスク対策方針は何故大切なのか?

 人命優先や環境被害の最小化と安全確保等の基本的な考えをトップが示すため。

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