1.ステンレス製配水池の得失

はじめに

 ステンレスは鉄(Fe)を主成分にクロム(Cr)やニッケル(Ni)を含有した合金鋼で、表面を酸化被膜(不動体被膜)と呼ばれる緻密で薄い被膜で覆われる特徴があるため、錆にくい素材です。ステンレスの語源はステイン(黄色っぽい汚れ≒錆のこと?)がless(無い)ということらしく、「錆びない鋼材」という意味のようですが、この酸化被膜の働きの御陰なのでしょうね。でも、実際は錆びます。錆びにくいというだけなので、ステンレスの得失を熟知し、錆びさせないためのメンテナンスを適切に行うことが必要です。

 衛生性、耐食性に優れ、経年劣化が少ないため、外面塗装や内面防食の必要がないのが大きな特徴です。配水池の内外面に腐食が生じないわけではありませんが、外面的には簡単な清掃で、内面的にはタンク内に沈殿堆積した汚濁物の清掃を定期的に行うことで、ステンレス特有の衛生的な表面状態に戻すことにより、半永久的な使用が期待されています。

 このように今後普及が期待されるステンレス製配水池ですが、その得失について考えてみましょう。水槽の貯水水深は一般的な3〜4m程度のものを想定し、RC製貯水槽と比較します。

1.配水池用のステンレス鋼

 ステンレス鋼とは「鉄を主成分とし、ニッケルやクロムを含有させた合金鋼で、約12%以上のクロムを含有し、耐食性を目的とした鋼」です。日本のステンレス配水池製造メーカーは、水道水が接する部分(貯水部分)にはSUS444または445(3社)、あるいはSUS304(1社)を使っています。また、頂部等水に接しない部分は、湿度が100%近い上に水道水の塩素が揮発し、濃いめの塩酸が水滴として生じますので、耐候性により優れたSUS329を使用しています。

 鋼種 SUS304  SUS444  SUS445   SUS329
 分類  オースティナイト系  フェライト系  フェライト系  二相鋼
 引張強さ(N/mm  520以上  410以上  410以上  620以上
 伸び(%)  40以上  20以上  20以上  18以上
 硬さ(HV)  200以下  230以下  230以下  320以下
 磁性  非磁性  強磁性  強磁性  磁性

2.ステンレス配水池の長所と短所

1)長所

1.軽量である
 ステンレスは素材強度が高く、材料板厚を薄くすることができるため軽量であり、平時も地震時も基礎への負担が少ない。軟弱地盤上に建設する際には大きなメリットとなります。

2.衛生的である
 内面防食が不要で衛生的であり、清掃メンテナンスも容易で安価です。

 内面防食を行わないコンクリート打ちっぱなしのRC製タンクの場合は、水道水に含まれる塩素により中性化が進行し、表面のセメント分が劣化して、砂が漕の表面に露出したり、底部に落下し溜まります。汚濁物質に加え劣化した砂分が回収されるため清掃がやや手間取り、掃除仕上げ後も劣化したコンクリート面はざらざらしていて、ステンレス漕のような美観は得られません。大型の配水池ですと、劣化して砂と化した堆積物が大量に搬出されますので、見た目でコンクリート劣化の深刻さが心配されますが、収集した砂量から配水池内部の劣化面積を計算しますと、それほど劣化が進んではいないことが理解されると思います。

 ステンレス水槽は、排水の利便性や点検作業・清掃時の容易性を考え、底はフラットに作ってあります。掃除後の美観はコンクリート水槽の比ではないくらい衛生感が高く感じられると思います。

3.内面防水工事は不要
 防水塗装等の内面防水を施したRC製タンクと比較すると、LCC(ライフサイクルコスト)的に見れば維持管理費は安くなります。

 RC製タンクの内面防水業者の防水塗装保障期間は一般的に10年くらいです。実際には10年以上は持ちますが、基本的には塗装工事ですので、長期間の使用は無理があり、一定の劣化状況が認められれば、再塗装が必要となります。この時、配水池内部のコンクリートは十分に湿っているため、再塗装の品質に問題が生じるケースが多いみたいです。防水補修はコストが掛かる上、再塗装の品質に問題があれば、内面防水工事の不要な工法を採用する方向が主流になると思われます。そのため、配水池内面にステンレス版を張る補修工法が採用されてきているものと思えます。

 同じRC製配水池でも、あらかじめ塩素による内部コンクリートの劣化を想定し、「劣化しろ」として、土被り厚さを1cm以上大きくとる対策により、内面防水を施していない配水池の場合は、維持管理費はSUS製配水池とほとんど変わらなくなります。ちなみに、被り厚を1cm余分にとれば、約60年の中性化劣化に耐えられることになります。(これはある事業体における浄水施設の劣化状況から考察したポチの私見です。)

4.外面塗装も不要
 外面塗装の必要性がなく、埃を払ったりもらい錆びに気を付ければ、維持管理費はほとんど不要です。

 ただし、風致地区や民家の密集地では、「周囲の風景にそぐわない。」とか「ステンレスの輝きが気になる。」等、ステンレス製であるがゆえの意匠が問題となる場合があります。周辺環境によって外面塗装を余儀なくされれば、ステンレス製としてのメリットが生かせなくなります。

5.長期間の耐用年数が期待される
 「適切な維持管理を施せば、半永久的な使用が期待できる。」というのが、この業界最大のセールスポイントです。ただし、企業保証できる耐用年数は、RC並みの55〜60年程度と断っているのが面白いですね。やはりメンテナンス次第ということでしょうか?事業体が「適切な維持管理をやってくれる」見通しが立たないのでしょうかね。

 「適切な維持管理」とは、「配水池内に汚泥堆積物が溜まらないよう適切な期間で清掃を施さねばならない。」ということです。

 一般的には、浄水といえども微細な濁質を含んでいます。浄水直後、浄水処理された水全量は、まず初めに12時間程度配水池に貯留されます。この時、濁質の沈殿堆積が必ず生じます。塩素に死なない微生物は多数存在していて(クリプトスポリジウムやジアルジアは人の健康を阻害する恐れがある病原中のため、水道事業者に注目されていますが、人の健康には全く問題を及ぼさないが塩素で死なない細菌類は数多く存在するそうです。)、これらのバクテリア類が配水池内の沈殿堆積物の中に巣食うと、ステンレス鋼のバクテリア腐食を生ずる懸念があります。ひとたびバクテリア腐食が発生しますと、ステンレス鋼は鉄鋼の10倍程度腐食の進行が速いと言われており、貯水槽内での各種バクテリアの繁殖を防ぐ必要性から、あまり堆積物が溜まらない期間内に、池内清掃をしなければならない必然性があるのです。メーカーの担当者の話では、バクテリア腐食と思われる錆腐食によりステンレス劣化が生じた例が数例あるとのことでした。

 SUS反対派の方の意見として、SUS躯体は半永久的にもったとしても、タンクの設置に必要な基礎部分(コンクリート製)が半永久的にもたないので、躯体だけもったとしてもダメなのではないか?という疑問もありました。

6.美観
 好みにもよりますが、意匠的に優れていると思います。(ポチの主観ですけどね。)

 パネル構造は美観的に好きだという人が多いのですが、薄い鋼材で強度を得るという目的と共に、ステンレス材は熱伝導性が悪く溶接ひずみが起こりやすいため、パネル構造にした方がひずみを目立たさなくする効果もあるとのことでした。結果的に綺麗だということなのでしょうね。

7.現場での建設工期が短い。
 各部材は工場製作され、現場では、基礎工事と本体の溶接・組み立てを行うので現場作業が少なく、本体工事の工期は短くて済みます。

8.溶接によって損傷部の補修は迅速に行える。
 これは、ステンレスや鋼の持つ大きな利点ですね。

2)短所

1.イニシャルコストが高い
 一般的に建設コストがRC製に比較し1.5倍程高価です。

2.定期的な配水池掃除が欠かせない
 長所の5の裏返し的なことですが、ステンレスの酸化被膜を健全に保つために、浄水場発の汚濁物の堆積を防ぐ必要があります。RC配水池なら配水水質に支障を及ぼさない限り、配水池への少々の濁質堆積そのものは大きな問題となりません。このためかどうかは何とも言えませんが、配水池の清掃はあまり頻繁には行われていないのが実情です。

 しかし、SUS配水池ではバクテリア腐食の発生を防ぐため、適宜な配水池の清掃は欠かせません。

 最近、写真のような下駄基礎の上部に配水池を設置する例も増えてきました。ステンレス構造は比較的軽いので配水池の高さが足らないような場合でも、下駄基礎をコンクリートで作り、その上に上部構造であるSUS製配水池を載せるのです。このような構造ですと、日常的に配水池底面を黙示監視することができ、腐食による水漏れの有無を容易にチェックすることができます。
 また、配水池を上げ底構造にすることで、緊急貯水槽としての給水拠点としても利用できます。

3.メンテナンス上、もらい錆びの発生防止対策が必要である。
 もらい錆びとは、ステンレスの表面に刺さったり付着した鉄粉が錆び、それがステンレス部分にまで広がってしまう現象のことです。ステンレスは表面に酸化皮膜ができ、それ以上の酸化(錆び)が進行しませんが、その酸化皮膜が鉄粉等によるもらい錆びにより破れてしまいますと、ステンレス部まで錆が進行します。もらい錆びが発生したら、速やかにもらい錆びを磨き取る必要があります。磨いた後は自然に酸化皮膜が出来ますので そのままでOKです。 配水池の頂部や内部で作業する場合、靴等の汚れや鉄製工具の置き忘れ等注意する必要があります。

4.貯水温度の上昇
 100t程度以下の小規模な配水池では、夏場、灼熱の太陽光線により頂部鋼板が熱く熱せられ、若干の貯水温度上昇が生じることが懸念されます。ある程度大きな配水池(500t以上)では外気温の影響はほとんど無いとされています。

5.騒音と振動の発生と対策

 矩形パネル式タンクは内部に多くの補強材が設置されていますが、流入水がこれら補強材や壁に当たり音を発生するケースがあります。一般的に、流入管は送水管事故時の逆流を防止するため、HWLより上からの落とし込み式としますが、水の落下音やその振動が配水池そのものや周辺苦情を生じる恐れがありますので対策が必要となります。
頂部等は鋼材厚が薄いので、流入時や水位変動による振動が懸念される場合は、20〜30年以上経過した時点で、金属疲労の発生をチェックする必要があります。水圧のかかる貯水部は鋼材厚もある程度大きくとり、安全性も高いので金属疲労の懸念は少ないと思いますが、頂部はコスト上薄く仕上げますので、注意は必要かもしれません。金属疲労が発生するということは、金属を何度も曲げた時にできる白っぽくなるひずみ色が生じますので、定期的なチェックで発見しやすいと言われています。

 流入時の振動・騒音対策として、流入管を配水池底部に設置し、流入管出口にフロート式逆止弁を取り付け、流入水音や振動を防ぐ工夫もされています。この方式は、配水池水位がHWLよりも低い状態にあれば、ポンプ吐き出し抵抗が下がるので、送水ポンプ効率が高まるメリットもあります。ただ、配水池底部に設置する関係上、フロート式逆止弁に不具合が生じますと、配水池を空にして補修する必要性が生じ、大変なことになりますけれど。

 フロート式逆止弁は地震時の流入管緊急遮断弁の役割も果たせます。流入水の落下振動や騒音を防ぐだけでなく、大規模地震の発生により送水管路が破断し、配水池貯水槽の逆流を防いでくれます。

 また、あまり大きくない配水池では、流出管流出部を一段下げて配水するのではなく、配水池底板はフラット構造にし、LWL位置にサイフォン式流出管を設け、常時は、サイフォン作用により配水するシステムが採用されています。
 大規模地震動を地震計等で感知すると、サイフォン管頂部に設けてある電動弁を開き、サイフォン作用を遮断することで配水を緊急遮断する機能を持っています。ステンレス製ですので、配水池を1池2槽に仕切ることは簡単にできます。2槽を7対3か6対4の大きさにしておき、大きい槽は貯水用槽、小さい槽を常時配水槽としておくことも可能です。 フロート式逆止弁とサイフォン式遮水システムの組み合わせは、優れた地震時緊急遮断システムであろうと思えますね。

5.振動に注意
 頂部等は鋼材厚が薄いので、流入時や水位変動による振動が懸念される場合は、20〜30年以上経過した時点で、金属疲労の発生をチェックする必要があります。水圧のかかる貯水部は鋼材厚もある程度大きくとり、安全性も高いので金属疲労の懸念は少ないと思いますが、頂部はコスト上薄く仕上げますので、注意は必要かもしれません。金属疲労が発生するということは、金属を何度も曲げた時にできる白っぽくなるひずみ色が生じますので、定期的なチェックで発見しやすいと言われています。

 流入時の振動・騒音対策として、流入管を配水池底部に設置し、流入管出口にフロート式逆止弁を取り付け、流入水音や振動を防ぐ工夫もされています。この方式は、配水池水位がHWLよりも低い状態にあれば、ポンプ吐き出し抵抗が下がるので、送水ポンプ効率が高まるメリットもあります。ただ、配水池底部に設置する関係上、フロート式逆止弁に不具合が生じますと、配水池を空にして補修する必要性が生じ、大変なことになりますけれど。

3.結論

 ステンレス配水池の欠点は施工費が1.5倍と高いことです。

 外部塗装や内面のエポキシ系防水塗装を施す計画のRC配水池と比較すれば、後々の塗装補修を含めたLCC的見地に立つと、コスト的にも安くなるので、もらい錆びの発生対策を徹底し、配水池汚泥堆積状況に留意しながら適切に掃除を行うという条件なら、ステンレス配水池は選定すべき工法と言えます。

 水道事業体は経営的にも苦しい状況の中で施設の建設や更新を進めていかなければなりません。今の状況ではステンレス配水池の建設コストが高いので、SUS配水池と同じく100年間使用可能なRC配水池を作るという選択も捨てきれませんね。

2.RC構造物の長寿命化対策(案)

1.コンクリート土被り厚を外部1cm、内部2cm厚くする

 100年耐用年数のRC配水池を作るには、定期的な補修の必要性のある防水塗装は使いにくいですね。基本的には、配水池内外部コンクリートの劣化によって、100年間の構造物の使用に支障が生じない工夫をしなくてはなりません。

 RC配水池が劣化するとは、貯水部の内面コンクリートが塩素により中性化等の劣化を生じることを防ぐことです。しかし、打ちっぱなしコンクリートが塩素を含む水道水に侵されないようにすることはできません。そのため、「腐食しろ」を多くとることで対応します。

 供用年数が約30年経過した福山市中津原浄水場の沈澱池、急速ろ過池、配水池等、塩素を含む水道水に接触している構造物のコンクリート中性化状況は0.4〜0.6cm程度でした。30年経過時で平均0.5cmの腐食が生じていることになります。これらのコンクリート被りを設計必要量に加え「腐食しろ」として+2cm厚くすれば、100年以上は持つ計算となります。

 外面も酸性雨やCO2による劣化が懸念されます。CO2被害は主として火器を使用する厨房室等が問題になっているみたいです。福山市の場合、浄水場の近くに山陽自動車道はありますが、CO2の劣化状況はそれほど大した問題とはなっていません。福山市のようなあまり大気汚染が問題となっていない田舎での対策としては、内部と同じく、土被りを1〜2cm多くとると十分な劣化対策になるのではないかと思います。大阪市水道局の構造物は土被り厚を10cmとしていると聞きました。生コンクリートを1m3当たり2万円としても、3cm余分の被りを取る経費は600円/m2程度です。

2.ひび割れの無い水密コンクリート構造物に仕上げる

1)セメントの選定

 大都市の街中ならともかく、地方では、大抵の生コン会社は普通ポルトランドセメントと高炉セメントしか取り扱えない所が大半です。現場近くの生コン会社が取り扱っているセメントの内、水和熱発生量の低い製品を選びましょう。

2)水セメント比とスランプ

 水密コンクリート構造物を作るための水セメント比は55%以下と規定されています。マッシブな(単位体積重量の重い水密的な)コンクリートを施工しようという理由からです。 ただし、水セメント比を低くしたセメント量の多いコンクリートを使いますと、コンクリート硬化中の水和熱の影響で、硬化収縮によるひび割れの多発が懸念されます。
 地方の地元業者に発注する場合は、水密コンクリートを造るうえでの十分な施工や養生が期待できないケースが多いので、硬化中の水和熱を極力減らす工夫の方が実利的だと思います。そのような理由から水セメント比は基準ぎりぎりの55%とします。

 また、コンクリートの単位水量はワーカビリティが取れる範囲でスランプ8cm程度と少なくしたいのですが、作業員の作業時間と疲労を考慮してワーカビリティを優先し、スランプは10〜12cmとします。作業員が疲れから重いバイブレータを十分に活用した締固め作業を継続してくれないと、水密構造物の完全な施工はおぼつかなくなるからです。

3)コンクリートひび割れ制御鉄筋

 コンクリート構造物にひび割れを生じさせないため、水セメント比、スランプを甘くして施工の完全性を目指すのですが、それでもひび割れが発生することがあります。ひび割れが発生したとしても、ひび割れ幅を広げさせない工夫として、鉄筋間隔を狭くします。同じ鉄筋量でもひび割れ幅の大小は配筋間隔の狭さが有利に働くそうです。基本的に主筋、配力筋は10cmピッチと狭くします。鉄筋量が同じでも鉄筋の数を多くするのです。

4)ひび割れ誘発目地の設置

 ひび割れ誘発目地とは、乾燥収縮や温度収縮等により、コンクリート部材にひび割れの発生が予測されるとき、任意の部位に断面欠損となる目地材(誘発目地)を設置し、そこにひび割れを誘発させ、その他のところでのひび割れ発生を防止しようとするものです。誘発個所の間隔は、一回当たりのコンクリート打設高さの1〜2倍程度と言われています。

 図のA部材、B部材とも亜鉛鉄板にブチルゴムを張り付けてあり、ブチルゴムとコンクリートの接着作用により、ひび割れ部の水の貫通を防ぎ止水性能を保っています。

5)ひび割れ部の漏水を止めてくれる混和剤の使用

 一生懸命施行しても不幸にして構造物にひび割れが発生し、そこから漏水が生じることもあります。コンクリート漏水が始まりますと、水とセメントとの水和作用により水酸化カルシウムが発生しますが、この水酸化カルシウムと反応してケイ酸カルシウムゲルを生成する混和材を使用します。ケイ酸カルシウムゲルとセメントゲルの成長により、ひび割れ個所を少しずつ閉塞していき、結果的に漏水を止めてくれるのです。万一の施工不良個所やひび割れ欠陥をカバーしてくれる混和材は頼もしい存在です。

6)その他の工夫

@ コンクリート打設面の処理と打設の注意点
 コンクリート打ち継目は極力作らないことが肝要です。やむを得ずコンクリート打ち継目を作る場合は、コンクリート打設後、打ち継目となる部分に凝結遅延材を塗布します。一定時間が経過した後、高圧水やワイヤーブラシを用いて、レイタンスや品質の悪いコンクリートを除去します。
 コンクリート打設時に、型枠やコンクリート打継ぎ面が乾燥している場合は、事前に散水し湿潤状態を保ちます。逆に、散水が多かったり、雨上がり後でコンクリート面に水が溜まっている状態があれば取り除きます。
 コンクリート打設時は、材料の分離を防ぐため、コンクリート吐出し口と打設面との高さは1.5m以下とします。コンクリートの締固めにはバイブレータを活用します。バイブレータの移動間隔は50cm以下とし、各部万遍に締固めが行えるよう配慮します。また、一か所での使用時間が長いと骨材分離を生じる恐れがあるため、バイブレータを同一個所に当てすぎないように注意します。
 気温に注意し、コンクリートを打設する時の気温の上限は35℃とします。また、気温がマイナスと予想される場合は打設を中止します。
 また、型枠を外すときにセパレータに力がかかるので、型枠セパレータからの漏水が懸念されます。そのため、セパレータに水膨張性止水ゴムリングを装着します。

A コンクリート養生
 打設後のコンクリートは湿潤状態を保ち、その養生期間は通常7日以上とします。日平均気温が10℃以下の場合は10日以上とします。乾燥が懸念されるときは、養生マットを敷き散水を行って湿潤状態を保ちます。低温が懸念されるときは保温用の養生マットを敷くとか風よけや加温の工夫をします。

B 配管貫通部の漏水対策
 配管貫通部は、配管と鉄筋とが接触しないよう配慮し、配管にエポキシ系塗装を施し塗装を傷つけないように配慮します。配管塗装の上に止水用ブチルゴムを張り付け、コンクリートをじか打ちします。

 以上に述べた内容は、10年以上前ポチ達が水道協会雑誌に投稿した「長期間使用を目指したRC構造物の設計施工上の留意点」の記述内容を抜粋したもので、その後、新しい工法とが出てきていることと思います。読者の皆様、「こんな工法があるよ」という案がございましたら教えてください。

2011.11.15 初版
2011.11.23 若干の言い回しの訂正
2011.01.05 「RC構造物の長寿命化対策(案)」を追加記載