市町村の業務継続計画(BCP)は平成25年8月時点で、策定済みが13%にとどまり、特に人口の少ない小規模市町村ほど定位な傾向にあります。災害が頻発する中で、業務継続計画の策定が進んでいない小規模市町村の対応強化を求めるために、内閣府は、人口1万人に満たないような小規模市町村であっても、業務継続計画(BCP)を早期に策定できるよう、あらかじめ取り組んで欲しい事項をまとめた「市町村のための業務継続計画作成ガイド」を2015年5月にまとめ、2015.5.20に各都道府県に通知しました。
特に重要な要素として、以下の6点を挙げています。
緊急時に重要な意思決定に支障を生じさせないため、首長の職務代行の順位を第3位まで記入すること。
非常時の優先業務の遂行に必要な人数を確保するために、実際に参集可能な職員数を把握しておくこと。
交代制勤務など職員の安全確保を考慮すること。
代替施設に使用可能な所有施設をリストアップし、津波や洪水などで、本庁舎と同時に被災する可能性のない施設から候補を選定すること。
災害時に停電となることを想定し、非常用発電機とその燃料について必要量を検討し、確保する。
職員用の水や食料は3日から1週間分を蓄積する。
固定電話や携帯電話が回線断絶で使えなくなるケースも想定し、多様な通信施設を確保する必要性を述べています。
ツイッターやSNS等による住民等への情報伝達も検討事項に挙げられています。
業務の遂行に必要な行政データを特定し、紙や電子データでバックアップします。その際、クラウドサービスの積極的活用に取り組むこととしています。
災害時に優先的に実施する業務を、少なくとも、「A:発災直後」、「B おおむね3日目まで」、「C 1週間まで」に区分し、各部門で実施すべき時系列の非常時優先業務を整理することとしています。
庁舎管理等の管理業務を必ず記入することや、住民や報道機関向けの情報発信を留意事項として挙げています。
業務継続計画の策定に当たっては、首長の指揮の下、全庁が主体的に関与する体制で臨み、業務継続計画策定後は、訓練や教育を通じて計画の実効性を高めるよう要望しています。
水道事業体では、設備の老朽化や技術者の高齢化への対応と財政難による運営コストを抑えるため、水道業務の一部を民間企業に委託するケースが増えています。自治体が水道施設の運営を外部委託している件数は2012年時点で1000件を越し、5年間で10倍以上に増えているとのことです。しかし、今までの水道事業の民間委託は、浄水場の運転、水道メーターの検針や料金徴収など、作業ごとに異なる企業が請け負うのが一般的でした。
このたび、神奈川県営水道は箱根地区に給水する神奈川県営水道の運営全般について、2014年4月から5年間、JFEエンジニアリング・西原環境・ジェネッツなどが設立した事業受託のための特別目的会社に運営委託(受注額39億円)します。受託する業務内容は@水源の管理、A浄水場の運転管理や水質管理B水道管の補修などの工事発注、Cメーターの検針、D料金徴収、E水道料金、水質確認や漏水に関する問い合わせ等水道相談窓口業務という水道事業のほぼ全般に関わる事項です。住民にとってもワンストップで問い合わせ窓口が一本化されることは好ましい状況です。
神奈川県は箱根地区の水道運営コストを予算比で15%程度低減できるとしています。今後、神奈川県は水道事業の計画立案や委託した事業の監督に専念することになり、人員削減が期待できます。
神奈川県のように今後もしっかりした水道技術の継承を図っていける事業体が、手間暇のかかるメインの水道業務ではない独立した小規模水道事業を全面的に民間委託してもらう委託の方向は今後増えていくかもしれませんね。
山間地の小規模集落の浄水施設は水道施設の老朽化に加え、ゲリラ豪雨などによる突発的な濁度の発生、クリプトスポリジウム対策、維持管理技術者の不足等の課題を抱えています。「広域化」により点在する集落への連絡管整備手法とコスト比較し、独立系の小規模設備の運用が安心・安全・コスト面で優れているケースでの1手法として、清水合金製作所の小規模水道用浄水装置「アクアMF−R」は以下のような特徴を備えています。
@ 膜処理システム
膜モジュールAMST(膜分離技術振興会)認定品の膜ろ過装置で突発的な濁度やクリプトスポリジウムに対応できます。造水量は50m3/日である。
A 計量コンパクト
軽トラックで運搬でき、片扉700mmで搬入可能なコンパクトサイズです。既設建屋の有効利用も図れます。建屋が無い場合は屋外仕様もあります。
B パッケージ化
機器のパッケージ化により工期短縮と低コストを実現しています。将来装置を移転・転用する際も便利です。
C 自動運転システム
オール自動運転、逆洗機能付きです。コントローラーで処理量を制御し、異常時用警報接点出力を取り付けられます。
小規模事業体では人員が少ないので、「無人化」「自動化」「簡易化」を追求したシステムとなっており、その集落の置かれた状況に対して、標準設備を外したり、付け加えることが可能になっています。
D 設置操作が簡単
配管接続は原水・給水・配水の3か所のみです。操作もタッチパネル方式で簡略化が図ってある。オプションの遠隔監視装置を組み合わせることも可能です。
E 電源はAC100V
電源はAC100Vですが、電源が無い場所でも小型発電機で稼働できます。
今後更なる人口減少が見込まれる小規模水道では、現状の給水量規模で施設整備を行うと、過剰設備になる可能性が高くなります。このような浄水場では、浄水施設を設置型にするのではなく、やや大型の移動型で再整備します。大型にすることで、一日に数か所の集落を巡回して浄水を供給することができます。
明電舎が提案する20フィートコンテナサイズの移動式浄水車は、凝集剤未使用で膜ろ過・消毒設備を搭載し、表流水水源でも7.5m3/時の浄水能力を持っています。例えば、給水人口60人、一日給水量15m3の集落なら、昼間に3か所巡回できます。
水道施設を単純更新する費用は15m3/日の場合、約1.07億円とされています。移動式給水車は上記の条件では3か所巡回可能であるため、移動式浄水車を導入する場合の費用は、1/3以下としています。需要者にとってはこれまでと同じ水源の水を使用するため安心感が得られます。毎日給水することと対塩素性病原性微生物対応も可能です。
浄水装置が車載であるため地震に強く、道路が寸断されず水源が確保できれば浄水処理は継続できます。非常用発電装置や移動電源車により、停電時にも運用可能です。
@ 紫外線対策を施した配水用薄肉PE管を用いた露出配管により布設費の削減
欧州では日本で使われているPE管より肉厚が2/3程度の薄い管が使われています。これにUVガードを施すことで、耐候性、施工性(軽量、柔軟)、低コスト、耐震性に優れた管材となります。
1) 舗装、掘削、処分工の削減
2) 布設工期の短縮
3) 柔軟性を生かして、山間部を始めとしたさまざまな地形への対応力
4) 管路点検が容易
A リース配管方式によるイニシャルコストの削減と定期メンテナンスの包括的な受託
大和郡山市では、下水道工事に合わせて、併行して埋設される水道管の更新・耐震工事を行っていますが、工程的な問題から長い場合は数年にわたり仮配管を布設して給水するケースがあります。遮蔽物が無く直射日光が仮配管に直接あたる個所では、水道水が真夏の昼間で40℃を超えるため、「乳児のミルクが作れない」「野菜を洗えない」「シャワーが熱い」などの苦情が寄せられていました。対応策として、排水弁から温まった水道水を捨て水していましたが、それほどの温度降下にはつながらず、「水を大量に捨てている」ことに対する苦情もありました。
大和郡山市は電線の保護管を制作しているヨツギ鰍ノ日光を遮る資機材の開発を依頼し、製作された製品が露出水道管用遮熱防護管(YSサーモシールド)です。
内外装に遮熱性能が高く、かつ熱線の反射能が高い特殊樹脂を配合し、水道管に熱を伝えにくくした耐候性のある遮熱防護管です。(外層(白)と内層(水色)のそれぞれに特殊樹脂を配合。遮熱性能が高く、水道管内の水温上昇を軽減します。)重量も軽く、脚部がハの字に開くため取り付けが容易で、2oの厚みがあり外部からの多少の衝撃には耐えることができます。切断が容易にできるため、長さの調節が可能です。
YSサーモシールド
2014年7月に同市で現場検証を実施し、YSサーモシールド取り付け前は、水道水の水温が40℃を超えていましたが、取り付け後は30℃以下に抑えられている箇所も確認できたそうです。取り付け箇所においては市民からの水温上昇に関するクレームは解消されたそうです。
水道水の安全安心に対する要求が高まる中で、配水管は地形的な問題や行政区の境等で管網のループ化ができず行き止まりになっている個所や、給水量の減少により配水管流速が低下し管路内の滞留時間が長くなって、残留塩素濃度が低減することへの対策が問題になってきています。
青森県三沢市では、管末の残留塩素濃度0.1mg/L以上を確保するために、職員2人が定期的に月2回程度、市内10か所の監視ポイントを巡回し、約1日がかりで捨水を行って残留塩素の管理を行っていました。これらの作業を低減する手段として、2014年4月から配水管捨水自動制御装置を取り入れました。
この装置は、管路内の残留塩素・水温・電気伝導率・pHを24時間常時監視し、各測定値が起動条件になると、自動で捨水開始と停止を行う装置です。従来は人力で行っていた管路捨水作業、水質管理・確認作業を自動化することで、無収水量の削減、捨水作業の削減、管末での水質管理強化、配水水質の向上が図れました。
流量も監視しているため、事故や災害時に配水管路内の圧力が確保できなくなった場合には、捨水を止め、水の確保を優先します。
全てのデータは装置内部のCFカードに保持され、異常時には携帯電話に警報を発報します。通信方法はFOMA回線を利用するため電話回線の設置が不要で、設置費用や維持費を抑えます。装置は縦長形状のボックス型(写真参照)で設置スペースは50cm×50cmほど必要です。
住友重機械エンバイロンメントは、2-1で記した「配水管捨水自動制御装置(スマフロ)」に、水道水質の毎日検査項目の自動監視を可能とした機能を付加した「配水水質自動管理装置(スマフロプラス)」を開発・販売しました。「配水管捨水自動制御装置」による管末の残留塩素管理だけでなく、水質監視も可能とする製品の要望があったためです。
この製品は、水道法施行規則第15条に定められた給水栓で、1日1回実施される「色」「濁り」「残留塩素」に関する検査に適合する水質監視装置に、配水管網内の水質管理に必要な管理排水を自動制御する機能を一体化したものです。
従来行っていた残留塩素管理のための巡回管理を省略できます。使い方によっては、浄水施設や配水施設における追加塩素注入の薬品使用量削減と「おいしい水」の実現、異常気象時の安全対策、無臭水量の削減にも効果が期待できそうです。水圧低下時・停電時にはフェールセーフ制御が作動します。懸念されていた夏季における内蔵水質モニターの耐候性がクリアーでき、2017.10の高松水道展で正式に販売が開始されました。
給水人口減少、水道管理地域の広域化、技術職員の減少に悩む水道事業体にはありがたい製品だと思います。
「スマフロ」