知っとこニュース

2020.08.15

産官学連携による「おふろ部」の取り組み(2020.1.20水道産業新聞)

 高齢化社会の到来、人口減少、節水機器の普及を背景に水需要は減少しています。価値ある水資源は有効に無駄なく使う必要がありますが、重要減少による水道管内の水の停滞は水質低下を起こし、定期的な捨て水も生じさせます。需要者に対して適正な水の使い方の提案が必要な時代になってきています。
 シャワーで済ませがちな若者に、健康や美容に良い入浴習慣をしてもらうことは、適切な水の使い方の一つです。「おふろ部」は、給湯機メーカーのノーリツ・神戸市水道局・神戸女子大学が2016年に始めたお風呂好きな人たちを増やすための活動です。

 現代は情報が溢れていて、水道行政側がイベントも含め需要者に知らせたい水道情報を発信してもなかなか伝わりにくい現状があります。

 「おふろ部」は「おしゃれ」、「健康」など入浴による効用を若い世代の感覚で、学生がライターとなり、お風呂好きになる情報をインターネットの「おふろ部」サイトを通じて発信しているもので、2020年年度末時点では12大学が参加しています。水道事業体は神戸市・名古屋市・堺市・京都市・三島市の他新たに仙台市の7事業体が行うようになりました。

 甲南大学では、ゼミの学生が月1回の頻度で投稿しています。投稿にあたって、プロのコピーライターから指導を受け、記事作成の基本を学び、共感を得やすい記事内容とすることや、身近な話題として同世代の人に拡散していくよう工夫を凝らしています。

 上下水道事業広報の最終目標は、事業の取り組みや料金負担などを需要者にきちんと理解してもらい、上下水道事業の応援団になってもらうことです。利用者が関心を持ちそうな健康や運動などのテーマと上下水道のPRを併せることで、普段は目立たない上下水道事業に光を当てたいのが事業体の願いです。 

 「おふろ部」活動の難点は、節水を呼び掛けながらも、健康や美容に良い適正な水消費を促すことです。この一見矛盾した目標を、お風呂のお湯で一日が終わることを通して、読者にどのように理解して頂くかという点に学生の新たな発想力と発信力が期待されています。

<参考:関西3市の「いい風呂の日」(2017.11.26)イベントの内容>

1) 神戸市:「水みらいミーティング」
(於:神戸市水の科学博物館)
 @ 神戸女子大学による親子連れを対象にお風呂グッズ作り
 A 「水が出るってあたりまえ?水みらいトーク」
  クイズや水道職員による説明により神戸市水道事業の概要を学ぶ
 B ワークショップで神戸水道のキャッチコピーを考案

2) 京都市:「いい風呂の日」街頭キャンペーン(於:イオンモール京都桂川店)
  オリジナル入浴剤「バスボム」や水に溶けない折り紙「オリエステル」を使った舟作り

3) 堺市:「いい風呂の日」講演会(於:イオンモール堺鉄砲町店)
 @ 関西大学教授の「心と体のサプリメント「休息」の正しい取り方」の講演
  入浴による休息の取り方、バランスボールを用いた正しいトレーニング方法
 A 足湯コーナーの設置

2019.7.14

弁護士事務所による未収金回収業務(2018.5.24水道産業新聞)

 水道料金の他に、国公立病院の医療費、公営住宅使用料、給食費、母子父子寡婦福祉資金貸付金等公共料金の未収金回収業務を、2008年ごろから専門的に行っている弁護士法人の話が載っていましたので紹介します。

1.弁護士事務所が語る水道料金の回収での問題点

@ 水道料金の支払い優先度は低い
 水道料金は支払いの優先度が低く見られている傾向がある。水道料金を滞納する方は、その他にも滞納や借金がある場合が多い。自治体は相談すれば待ってもらえると考えている方が多く、他の滞納金から払う傾向があります。

A 事業体にとって、給水停止は手間とコストがかかり、実施しにくいケースもある
 給水停止を行ったとしても滞納した金額の一部を支払えば給水停止の解除を行うが、時間と労力が必要となる。水は生命にかかわる大切なものなので、給水停止に踏み切れないケースもある。

B 市外への転居者に請求しにくい
 市外への転居により転居者を探しにくいケースがある。法律事務所なら弁護士の権限により住民票の照会もできる。

 このような状況から、滞納発生初期の回収しやすい業務は水道事業体が自前で行い、悪質なケース・長期化しそうな債権・市外転居等回収が難しそうな案件を委託されている。

 法律事務所が介入することによって、滞納者は「裁判になるかもしれない」、「給水停止されるかも」とプレッシャーを受け、支払いの優先順位を上げていく傾向がある
 SNS等ネットワークが盛んに使用される時代なので、滞納者から「水道料金は払わなくても大丈夫」という声は防がなくてはなりません。逆に、「法律事務所が介入してきた」との情報が広がれば、未収金発生の抑制に繋がると思う。

.この会社の未収金回収手法

○ 事業体(自治体)から提供された委託情報を精査・分析し、基本的には、文書と電話で督促する。債権の内容・状況によっては、所員が戸別訪問して状況確認を行う。

○ 電話で連絡が取れれば、和解交渉を進め、当事務所の口座に入金してもらう。一括入金が基本です。

○ 滞納者には様々なタイプの方がいて、その方に合った話し方や対応を行う必要がある。トラブルになるリスクを最小限に抑え、回収率を高めることが必要です。自治体の信用や評判、品位を失墜させないよう心掛けている。

○ 折衝を行う中、土日祝日しか話せない方もいる。年末年始を除いて、いつでも相談業務をできる体制を整えている。

○ 分割払いの申し込みがあればヒアリングを徹底して行い、根拠を持って約束を組み、分納管理も当事務所が行う。月に一度回収金の清算とその報告資料を事業体(自治体)に提出する。

○ 督促業務は、未収金管理システムから、必要な時期に、文書の送付や電話による督促の指令が出るようにしている。入金の遅延管理は非常に重要で、即座に督促を行わないと、少々遅れても大丈夫だと思われ、入金が滞ることに繋がる。

回収不能案件については、債権を返却できない理由、文書・電話で督促した日付・戸別訪問した日付と内容を記して、1件ごとに回収不能報告書を作成し、事業体(自治体)に提出している。自治体によっては、この報告書を不能欠損する際の根拠資料として活用されている。

○ 法律事務所は弁護士法に基づいて業務を行っているので、弁護士会からの監督も受ける。当社の弁護士が全ての案件の状況を確認して決済している。

○ 費用は完全成功報酬で、初期費用や基本料金は無い。

3.役所内の公共料金未収金を一括して委託して欲しい

 医療費と水道料金等、異なる債権で同一滞納者が重複しているケースが多々ある。債権ごとに異なる受託者が委託する場合、滞納者は違う方とやり取りし、異なる口座に支払う等作業が煩雑になり、支払う意欲が低下する懸念もある。

 市役所の中で連携して、未収金回収業務をまとめて委託してもらえれば、未収金を一元管理し、滞納者の状況をしっかり把握できたうえで、支払方法や約束事を組むことができる。役所内公共料金全体としての回収率の向上と滞納者の立場に立った対応が可能となると思う。

2019.2.12

災害時燃料備蓄の保管料負担(2018.4.5水道産業新聞)

 2018.3.28、横浜市水道局は大洋石油(本社:横浜市)と「災害時に備えた燃料油の備蓄及び供給に関する協定」を結びました。浄水場の非常用発電設備の燃料を確実に確保するために、太陽石油に保管料を支払うというものです。災害時でも確実に燃料を確保するために、コストを負担するという取り組みは大都市水道事業体では初の試みです。

 横浜市水道局は「横浜水道安全・安心パートナー(燃料供給)制度」があり、現在41社が登録しています。災害時において、協力事業者に燃料の備蓄がある場合や調達の見込みがある場合に、供給可能な範囲内で水道局に協力して頂くものです。この制度では、災害時には他の公共機関も燃料を必要とするため、優先的に供給して頂けない懸念があるからです。

 備蓄する燃料は泊灯油10万L、軽油1万1千Lで、供給対象は西谷・川井・小雀の3浄水場です。各浄水場とも燃料を備蓄はしていますが、停電が長期化し燃料が不足する場合には、同社に連絡し、備蓄してある燃料を同社のローリー車で運搬してもらいます。同社で備蓄する分を含めると、非常用発電設備を3日間運転することができます。保管料は年間約575万円で、協定は年度ごとの更新となります。

 燃料運搬や給油がスムーズに行えるよう、両者は年2回程度訓練を実施する予定であり、ローリー車と浄水場内の燃料タンクとの接続訓練や災害を想定した運搬ルート選定訓練を予定しています。

 横浜市と「災害時における燃料供給の相互協力に関する覚書」を締結している名古屋市や新潟市が被災し、燃料が不足した場合は、同社が燃料の運搬・給油で協力します。

2019.2.11

断層用鋼管(2011.12.8日本水道新聞,2019.1.7水道産業新聞)

 大地震が発生した場合、地盤における断層の変位量は2m以上になると想定されます。東日本大震災における2011.4.11の余震で、塩ノ原断層が最大2.2m動いていることが観測されています。断層の走行距離は、多くの場合、数十Kmに及びますので、断層を避けて水道管を布設することは困難です。

1.断層用鋼管

 逆断層の発生により管に大きな圧縮力が加わりますと、管の途中で座屈現象が生じ、亀裂発生などの原因となります。

 「断層用鋼管」は、管に座屈が発生することを前提として、座屈が起きやすい個所に、座屈が起きても通水機能を阻害しない形状の「座屈波形部」をあらかじめ設けておくことで、管本体に亀裂を生じさせずに大変位に対応させようという発想から生まれたものです。

 適用範囲は、断層面が地表面まで達するような逆断層を想定しています。

 神戸市の大容量送水管(口径、2400mm)に採用された断層用鋼管は、活断層をまたいで布設される耐震水道鋼管です。直管部に予め変形しやすい波形管部(凸部)を設けることで、数メートルもの断層変位に対しても管に亀裂や漏水を生ずることなく通水機能を確保します。

 

<参考>
 φ600mmの断層用鋼管を用いた曲げ性能の公開実験(次の写真)では、管の曲げ角度が12度になったところで降伏し、塑性変形しました。その後さらに応力を加えると、曲げ角度20度近くになったところで、座屈波形部の前後の谷どうしが内面接触し、それ以降は、断面形状が変わるものの、鋼管管体そのもので応力を吸収し、亀裂などが生じないことが確認されました。
 これまでのJFEエンジニアリング社における試験では、曲げ角度が30度でも80%以上の通水断面を確保でき、管体に亀裂も生じず、漏水を発生させなかったとのことです。


2.撓曲対応型断層用鋼管

 活断層の中には、逆断層でありながら断層面が地表面まで達しない「撓曲」と呼ばれる構造が存在します。断層面を横断する管路の場合、曲げ変形が作用しますが、撓曲構造内に管路が敷設された場合には、主に管軸方向の圧縮変形が作用します。この管軸圧縮変形、曲げ変形の両方に対応させるため、波形形状を見直した断層用鋼管として、WSP007追補-2014「断層用鋼管(撓曲構造対応型)」が規格制定されました。

   

 東京都水道局は立川断層を横断する多摩南北幹線のトンネル配管内に撓曲構造対応型断層用鋼管を採用しました。断層用鋼管の採用例としては2例目で、撓曲構造対応型は全国初めての採用です。

 多摩南北幹線は拝島給水所への送水能力とバックアップ機能の向上を図るための延長16Kmの送水管で埋設震度は20〜30mです。東村山浄水場から拝島給水所へのルートはどこも断層を通過せざるを得ない状況です。多摩南北幹線は基幹施設なので水を止めることができず、地盤変状により管路に被害が生じても、深い位置に埋設されていますので迅速に対応できません。このような必要性から、地震時に地盤変状した際にも通水機能を確保するための対策として採用されています。

 内径2750mの鋼管セグメント内に鋼管905本を布設しますが、その内13本に撓曲構造対応型断層用鋼管(φ2000mm、長さ4m、材質はSS400、2か所に波形管部がある)を配置します。FEM解析では地盤変異が発生しても96%の通水断面が確保できるそうです。

2019.1.02

動力不要の災害用携帯型浄水器(2018.12.13日本経済新聞)

 東南海地震対策等の災害時用に携帯できる小型で軽量(重さ12kg)な簡易浄水装置の紹介です。

 一般的なセラミックフィルターは直径が数cm〜数十cmの円柱にレンコンのように穴を開けたモノリス型が使われます。この場合、原液が通る穴と濾液が出る外周部までの距離が穴の場所によって異なるため、逆洗時の効率に差が出るそうです。
 今回紹介する濾過装置に使われるセラミックフィルターは単管フィルターという1つの穴を持った直管形式の製品で、濾過部分の厚みが均一なためろ過効率が高く、逆洗も容易なのだそうです。製作会社の試験では濾過抵抗は1/5で、寿命も長くなり維持コストも安くなるのがメリットとしています。

 全体が均一な1μmの微細な気孔を有する単管セラミック多孔質フィルターは大腸菌(5μm)を始めとする赤痢菌、コレラ菌等の各種の雑菌や、塩素や熱にも耐えるという危険なクリプトスポリジュウム等をセラミックの孔径1/5までの精度で物理的に除去することが可能です。

 手動式のため停電時でも使用できて、簡便に川や井戸水から5L/分の飲み水を確保することができます。
 円形フィルターは二連式構造になっており、常時は片方を使用し、もう一方を予備機とします。目詰まりが発生した場合にはコックの切り替えで簡単に切り替えが可能で、目詰まりした方は逆洗浄し、汚染物をドレンノズルで排出する半永久的使用となっています。

 モノリス型フィルターは、製造方法は容易だそうですが、径によって金型をその都度作る必要があります。単管フィルターは、焼く時の変形対策が難しいそうですが、この会社は回転型の焼成炉を開発して可能としとのことです。


   

2018.3.20

老朽地下配管のメンテナンス義務付け(2018.3.16日本経済新聞)

 水道・下水道管は高度成長期に整備がされていて、老朽化が問題となっています。国土交通省によりますと、地下配管の老朽化が原因とみられる道路の陥没事故は2016年度に2827件あり、下水道管が2107件と大半を占めています。写真は2016年博多駅前で起きた地下鉄工事による道路陥没事故現場ですが、道路には様々な管路が埋設されています。

道路陥没事故件数

産官学連携による「おふろ部」の取り組み(2017.12.14水道産業新聞)

 

2015年度

2016年度

下水道

2202

2107

上水道

281

337

電 力

63

59

ガ ス

42

33

通 信

31

23

その他

277

313

合計

2896

2872

 国土交通省は、2018年1月19日からの通常国会に、老朽化した地価の配管が破損し、道路が陥没する事故を防ぐため、道路の下に埋設した各種管路等構造物の所有事業者に適切な管理を義務付ける道路法改正案を提出します。現行の道路法には道路管理者である国や自治体が事業者に補修を命じる権限がありません。多発する老朽化した管路の破損による陥没事故を防ぐためです。

 国交省の改正案は、道路の下に配管や通信ケーブルを敷設した事業者に適切な維持管理を義務付けます。上下水道の場合は、市町村などが維持管理義務を負います。
 点検の頻度や具体的な方法については今後省令で定めます。必要に応じて事業者に管理状況の報告を求め、事業所への立ち入り検査もできるようになります。道路管理者が管路の維持管理が十分でないと判断すれば、補修や更新作業を命じます。命令に従わないときは、30万円以下の罰金か6か月以下の懲役を科すことができます。

 今回の道路法改正案では、歩行者や車いすの安全確保のため、歩道の無電柱化も進めます。「道幅が著しく狭い道」と道路管理者が判断した場合、電気事業者に対して電柱の設置を制限できるようになります。また、看板等の落下事故を防ぐため、ビルなどの看板についても適切な維持管理を義務付けられます。

2018.2.11

災害応援隊のための中継施設提供可能地リスト(2017.9.25水道産業新聞)

 東日本大震災では全国の事業体から応援が駆けつけましたが、応援隊の移動距離が長距離となるため、移動途中で他の事業体で一時的に休息し、被災地に向かうケースが多々ありました。

 災害発生時に遠方からの応援隊が、車両の待機場所や応援隊員の休憩場所などとなる中継地を円滑に活用できるようするために、日本水道協会関東地方支部では「中継施設リスト」(中継施設提供可能報告書)を作成しました。2017年8月時点で、134施設が選定されていて、リストには、施設名、住所、アクセス(最寄りの高速道路IC名とそこからの距離)、駐車可能台数、施設概要(広さ・床の材質・寝具類の有無・シャワーの有無・連絡先)を記載しています。リストは年1回更新されます。

 地方支部長都市や県支部長都市が、災害発生後に中継地の適地調査を行う場合、一定の時間を要しますので、応援事業体に迅速な回答をすることが難しいためです。勤務時間外に災害が発生した場合はなおさらのことです。
 応援隊を送る事業体は、応援要員の選出、交通手段・宿泊所・持参物品の選定など準備に追われることになります。応援自治体に対し、迅速に中継地としての活用が可能となる施設名を、施設情報と共に提供することで、応援事業体の迅速な対応に寄与できます。

 大規模災害の応援を想定した各事業体の訓練においても、リストを活用した情報伝達訓練など中継施設の存在を意識した活動計画が可能となり、災害発生時の迅速な対応には有意義なことと思えます。

 2017年9月末に、東京都水道局・仙台市水道局・茨城県企業局が参加した休日発災対応訓練がありました。茨城県企業局は東京都に応援給水に向かう仙台市水道局の応援隊を中継地として迎え入れる「中継水道事業体」の役割訓練となりました。茨城県企業局は東京都と「広域災害時等における中継水道事業体としての活動に関する覚書」を結んでおり、東京都・茨城県のいずれかが被災した場合、遠方からやってくる応援隊に対し、被災事業体や関係団体からの要請を待たずに、中継地施設提供の可否などを検討することになっています。

 訓練では、東京都の被災を受け、日水協関東地方支部長の横浜市、日水協茨城県支部長の日立市を通して、茨城県企業局への中継地施設提供確認から始まりました。茨城県は災害情報連絡会議を開き、中継地施設提供の決定をします。中継地施設を水戸浄水場とし、日水協を通じて仙台市に周知され、仙台市は水戸浄水場での受け入れ要請を行います。受け入れ内容の調整、仙台市応援隊の受け入れを行いました。

<参考:東日本大震災における応援給水の問題点(HPの「東日本大震災」より抜粋

 地方支部長都市や県支部長都市が被災し、「水道事業体→県支部長都市→地方支部長都市」という階層的な応援要請方式が十分に機能しない場面がありました。

 水道施設の甚大な被害が広範囲に及んだため、大都市協定や姉妹都市関係等の日水協の枠組み以外の応援給水体が派遣され、受け入れ側ではこれらの調整に混乱を来すこともありました。さらに現地では自衛隊の応急給水活動も展開されていましたので、大規模災害時における応急給水の在り方を見直す必要が考えられます。

 応急給水活動では、被災事業体職員の職員配置に限界があり、派遣されてきた給水車を現地へ案内する人的余裕の無い場合が多くありました。このため、給水車へのカーナビ装備は必須の条件と思えます。

 今回のような大規模災害時には、他都市からの応援は不可欠ですので、受け入れ側の水道水の受け渡し場所や応急給水拠点を指示するための地図情報の整理が必要です。応援給水する側は、被災事業体から給水車両等の要望を受けて派遣する等、事前情報を収集する重要性が認識されました。

2017.7.18

水道料金の時効延長と法定利率の引き下げ(2017.6.22水道産業新聞)

 H29年度通常国会で改正民法が成立し、2017.6.2に交付されました。水道事業に関係するのは「消滅時効」と「法定利率の見直し」です。技術士試験には直接関係は無いかも知れませんが。

@ 消滅時効
 現行の消滅時効は「権利を行使できる時から2年間」となっていますが、「権利を行使できることを知った時から5年間」、または、「権利を行使できる時から10年間」に変更されます。権利を行使できることを「知った時」との主観要件が加わりました。

A 法定利率
 現行の5%から3%に引き下げられ、3年周期で見直される変動制に変わります。法定利率は水道施設工事の請負契約が不履行になった場合の違約金などで、特に定めのない場合に適用するものです。

 一般的に、債権の管理・回収は早い方が効率的で有利と言われていますが、水道事業体の徴収業務が拡充することで水道財務面からすればプラスとなるでしょう。これら2つの規定改正は、料金システムの修正等、水道事業運営に直接影響を及ぼすものと思えます。

 改正民法の施行日は「交付の日から3年以内の政令で定める日」となっていて、まだ決まっていませんが、H32年6月2日までには施行されます。

2017.7.15

鋼・コンクリート構造物の劣化対策材料(2017.5.22水道産業新聞)

 積水化学工業はコンクリート構造物のひび割れや中性化対策修理や、鋼構造物の腐食対策に繋がる製品を3種類開発しました。

@ CRJ(コンクリート構造物のひび割れ部注入剤)
 CRJはコンクリート構造物のビビ割れを補修する伸張性に優れた軟質エポキシ樹脂です。上下水道施設のコンクリートのひび割れは漏水を誘発しますが、湿潤状態なので補修が難しい問題がありました。この製品は湿潤面のひび割れ部にも施工できるそうです。伸張性が優れているため、エポキシ樹脂注入補修後、若干ひび割れが進展してきても対応できるとしています。(限度はあるのでしょうが)

ADLC(ダイヤモンドライクカーボンシート
 ダイヤモンドに類似する特性を持つ硬い炭素膜を表面に配したプラスチックシートで、コンクリート構造物の表面保護工、剥落防止工に使用します。コンクリート構造物に弾性接着剤で貼り付け、コンクリートの中性化や水・酸素の侵入を抑制し、鉄筋コンクリート構造物の劣化を予防します。紫外線や水に強く、保護性能は長期にわたるとしています。塗装幕と比べると酸素遮断性能は5倍以上と記しています。

B CF−PPS

 2方向に配列した炭素繊維基材にエポキシ樹脂を事前含浸した成形用材料(シート)で、標識や街灯などの鋼構造物の腐食劣化部位にパテ状の接着剤で貼り付け、現場で加熱・接着・硬化させます。


写真はいずれも積水化学工業のHPから引用しました

2017.6.25

東京水道災害救援隊(2017.3.13日本水道新聞、水道産業新聞)

 東京水道災害救援隊は日本水道協会の会員水道事業体による相互応援の枠組みに基づく被災事業体からの支援要請に対応するために創設されたものです。東京都はこれまでも大規模災害の発生時には積極的に被災地支援を行ってきました。熊本地震への教訓から応援要請に即応できる体制を整えると共に、継続的な支援の実効性を担保するため救援隊を創設することにしたのです。

1.東京都水道局内の体制

災害救援隊は大きく「当番制」と「登録制」の二つの仕組みで構成されます。

@ 当番制
 応急給水と応急復旧の部隊について、最初に出動する当番部署を月ごとに事業所の持ち回りで割り当てておきます。
 具体的には、断水に対応する応急給水部隊2人×5班=10人、漏水した水道管の応急復旧部隊が6人×4班=24人、合計9班34人を常時確保します。

A 登録制
 応急給水、応急復旧に加えて設備復旧や水質検査などの分野でも派遣に応じる意思のある職員を事前登録しておき、優先的に派遣部隊に組み入れます。
 登録者は事前の研修受講により災害支援活動に関する技術やノウハウ、心構えを養い、隊員としてのレベルを確保し、派遣時には中心的な役割を担えるように訓練します。

2.管工事業者4団体との協定

 東京都管工事工業協同組合、東京都水道専業者協会、三多摩管工事共同組合、東京都水道請負工事連絡会の管工事業者4団体と被災地支援の協力に関する協定を新たに締結しました。4団体とは都内で災害が発生した場合の協力に関する協定は既に締結していますが、都外の大規模災害が発生した場合を前提に、都水道局との迅速・円滑な連携を図るものです。災害救援隊の当番表の共有、緊急時における相互の連絡先の交換などが盛り込まれています。

2017.6.24

災害時給水協力貯水槽認定制度(水道産業新聞2017.3.13)貯水機能付給水管(水道産業新聞2017.3.23)

1 災害時給水協力貯水槽認定制度

 地震など自然災害が頻発し、緊急時に水を貯めておける機能を持つ貯水槽は、大地震などで断水が発生した際、水道が復旧するまでの数日間は貯水槽が「命の水」を供給します。横浜市では、ビルや商業施設に設置してある貯水槽を応急的な給水源として活用できる貯水槽を認定する「災害時給水協力貯水槽認定制度」を立ち上げました。貯水槽の設置者・管理者からの協力を得て災害時の飲料水の確保を目指した制度は全国で初めてです。
 災害時給水協力貯水槽の認定には、@適切に管理されている、A耐震性を備えているという一定の条件があります。優良な貯水槽を持つ設置者・管理者に市から認定を要請します。

 優良な貯水槽の情報は登録検査機関の団体である全国衛生検査協会からの情報を活用されています。同協会は、貯水槽の法定検査に、耐震性の評価などを「上乗せ」する形で検査するランキング表示制度を実施していることから、検査で得た優良施設の情報提供を受けられるよう横浜市は協定を結んでいます。また、横浜市は貯水槽に関して受検率の向上や市による厳しい検査基準を設ける等貯水槽施設の管理に努めてきました。水道法では10m3超の貯水槽に検査を義務付けしていますが、同市はそれより厳しい8m3超の検査を義務化しています。8m3以下でも地下式の貯水槽については検査を義務付けされています。横浜市と全国衛生検査協会は貯水槽台帳の情報も共有しています。

 横浜市は、災害発生時の飲料水確保を「自助」「共助」「公助」の考え方に基づき対策を進めています。災害発生後3日目までは自助と公助を中心に対応し、4日目以降は公助も連携して対応する考えです。3日目までは、各家庭や企業で備蓄した水缶や、横浜市が各地域に接地している災害用地下給水タンクの水で対応してもらうよう想定されています。4日目以降は配水管に緊急給水栓を順次設置して応急給水を実施します。今回の災害時給水協力貯水槽認定制度は、発災後3日までの自助・公助を補完する制度です。
 
 第1号として「みなとみらい地区」にあるパシフィコ横浜の貯水槽が認定されました。

   

2 貯水槽機能付給水管

 貯水機能付給水管は球形の貯水タンクと給水管を持つ災害発生による断水時の飲料水確保を目的とした装置で、直結給水管の途中に設置します。ステンレス製タンクはメーターを通った施設側に設置し、球形タンクの下部には取水用の蛇口があって、動力が無くても給水できます。貯水機能を持たない「直結給水方式システム」が利用拡大の傾向にありますが、貯水機能のない直結給水方式のデメリットを補うための森松工業の製品です。

2016.7.4

水質異常時における摂取制限を伴う給水継続の考え方(厚生科学審議会生活環境水道部会2016.2.17)

1.経緯

 平成24年5月の利根川水系のホルムアルデヒド前駆物質による水質事故の際には、浄水のホルムアルデヒド濃度が上昇し水質基準を超過したため、千葉県内の水道事業者が給水を停止するに至り、87万人の市民生活に大きな影響が生じました。一方、平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連した水道水中の放射性物質への対応においては、飲用水は別途確保しつつ、摂取制限を行いながら給水を継続する措置が講じられました。

 このような水質事故等の経験を踏まえ、水道事業者が摂取制限を行いつつ給水を継続する対応を選択肢として判断できるよう基本的な考え方をまとめました。

2.基本的な考え方

 水質事故等により、浄水中の有害物質の濃度が一時的に基準値を一定程度超過する水質異常が生じた場合においても、水道事業者等の判断により、利用者に対して水道水の摂取を控えるよう広報しつつ、給水を継続(摂取制限を伴う給水継続)することが可能としました。
 実施に当たっては、
 @ 汚染状況(原因物質の特性、濃度、汚染の範囲等)
 A 復旧までに要する時間
 B 給水区域の規模や地域性に応じた摂取制限・給水停止による地域住民に対する影響
 C 応急給水等代替手段確保の実現性
 D 広報体制
等を踏まえて総合的に判断し、より社会的影響の小さい対応として選択する必要があります。

3.摂取制限を伴う給水継続を行う対象となる物質

 水質基準項目は、人の健康の保護の観点から設定される「健康関連項目」と、生活上の支障の観点から設定される「生活関連項目」から成ります。
 水質異常時に水道事業者が摂取制限を行いつつ給水を継続することは、「人の健康を害するおそれ」についての判断を行うこととなるので、今回の検討は「健康関連項目」の25項目を対象としています。一般細菌や大腸菌、シアン、水銀のように基準値超過が継続する場合に給水停止が求められている「健康関連項目」は対象外です。

 長期的な健康影響を考慮して基準が設定されている25物質は次の通りです。
カドミウム及びその化合物 、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、ヒ素及びその化合物、六価クロム化合物、フッ素及びその化合物、ホウ素及びその化合物、四塩化炭素、1,4−ジオキサン、シス・トランスー1,2−ジクロロエチレン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ベンゼン、塩素酸、クロロ酢酸、クロロホルム、ジクロロ酢酸、ジプロモクロロメタン、臭素酸、総トリハロメタン、トリクロロ酢酸、プロモジクロロメタン、プロモホルム、ホルムアルデヒド

4.水質異常時の対応体制の整備

 水質異常が生じた際の対策について、予めその意思決定や実施体制、行政や他水道事業者等関係者との連携体制を検討、整備しておくことが必要である。

 特に、水道用水供給事業者が水道事業に水道水を供給している場合や、水道事業者が水道の運転管理を委託している場合は、予め意思決定等に関する取り決めをしておくことが重要である。

 水質異常時の対策における意思決定の参考とするため、専門家の意見を聴取できるような体制の整備が有効である。

 また、摂取制限を伴う給水継続を実施する際に、飲用水の応急給水に対応するためには、水源を別とする他の事業者等との連携体制を構築しておくことも有効である。

5.摂取制限を伴う給水継続を実施する際の対応

 水質異常時には、水道事業者等は、直ちにその実態把握を行うとともに、その原因を究明し、必要に応じて低減化対策を実施する必要がある。

 また、摂取制限を伴う給水継続を実施する際は、水道利用者に対し応急給水により飲用水を確保することが必要である。飲用水の配布に関しては水道事業者等と行政との連携が必要であり、また、応急給水により飲用水を入手することが困難な者についての配慮が必要である。

2016.6.10

水道事業基盤強化策(水道新聞2016.1.4)

1.安全・強靭・持続を将来的に可能とするために

A.水道事業を取り巻く環境と国・都道府県・水道事業者の責務

1) 水道事業を取り巻く環境
 我が国の水道は97,7%の普及率(平成25年度末)を誇り、水質面も「安全でおいしい水」の供給を達成している。この状況を将来的に持続していくには、人口減少による給水人口・給水量・料金収入の減少により厳しくなる水道事業環境への対応や、老朽化が進む水道施設の更新や大規模災害に備えた強靭化に取り組まなくてはならない。
 しかし、水道管路の経年化率(法定耐用年数40年を越えた管路の割合)は年々高まり、平成25年度末では10.5%に達している。一方、管路更新率は低下傾向にあり、平成25年度は0.79%にとどまり全ての管路を更新するには130年かかる状況である。
 耐震化も、配水池の耐震化率は47.1%、浄水施設は22.1%、基幹管路の耐震適合率は34.8%にすぎない。
財源の確保についても、給水原価が供給単価を上回り、事業運営に必要な経費を賄えていない状況の事業体が多い。また、水道料金に資産維持費を組み込んでいない場合や、組み込んでいても、数十年単位の長期にわたる収支バランスの評価を十分に行わないまま、水道料金の設定を行っている例が少なくない。

 これらの課題に対応するためには、水道事業者は知恵を絞り戦略的に事業経営に当たる必要があるが、職員数の減少や高齢化が進み、組織体制面での問題も深刻となっている。特に給水人口の少ない事業者で職員数が減少していて、自力でこれらの問題に対処することが難しい状況にある。
 このような状況が続くと、老朽化による漏水事故の頻発を招き、火災時に十分な消火活動ができない、水害時土砂の清掃が出来ないといった事態が起こり得る。

 このため、今後の水需要予測に沿った水道事業計画を策定し、需要量に応じて事業形態をより小さな規模へシフトさせ、更新費用の余裕を産み出す必要にせまられている。

2) 国の責務
国は認可権者として、認可事業者にアセットマネジメント等の水道の持続性を高める取組を適切に行うよう働きかける。水道事業者間の連携を推進したり、必要な予算措置を図る。


3) 都道府県の責務
 都道府県も認可権者として、認可した水道事業者の持続性を高める施策を構ずる責務がある。県下の水道事業者の連携強化を図り、財政措置を行う。

4) 水道事業者の責務
 水道を維持し、将来世代に引き継ぐことが責務である。老朽化した水道施設の更新や耐震化を進める。

B.経営基盤の強化

1) 人材確保を見据えた広域連携の推進
 必要な人材を個々の事業者が個別に確保し続けることは、零細な事業者では不可能である。都道府県内を1〜数ブロック単位でまとめ、各事業体が広域的に連携しながら水道を支える人材を確保していかねばならない。また、水道施設の共同利用や資材調達・水質検査の共同実施により、スケールメリットを働かせコストの削減を図る。用水供給事業者と受水事業者の垂直統合の場合は、事業体が所有する水道施設の廃止が可能な場合が多い。
 広域連携においても、長期に渡って財源を手当てし、地域の将来像を見据えて施設の更新・再構築を進めるという戦略的な取り組みができ得る人材確保が必要である。人材確保の視点をもって広域統合を進め、統合後の事業体の課題に対応する能力が確保されるよう留意する。大都市等先進的な事業体の人材を活用する観点から、経営統合や人材の融通・派遣、事務的な協力の実施等地域に応じた選択をすべきである。

 国は広域連携の好事例や課題について水道事業者に情報提供を行い、都道府県と連携して必要な助言を行い、水道事業者間の連携を推進させなければならない。
都道府県は関係市町村に広域連携に関する協議の場を設定すると共に、広域連携の推進状況を定期的に把握し、必要に応じて助言を与える。連携の鍵となる人材の発掘にも心がける。

 また、以下の権限を都道府県に与えるべきである。
@ 協議会の設置
 水道事業者の連携を図るため、決定事項の遵守義務を伴う協議会を設置する。
A 財政支援
 国からの交付金交付事務の他に、都道府県独自が水道事業体の財政支援ができる枠組みを設ける。
B 都道府県の主導による「水道事業基盤強化計画」の策定

2) 事業統合の方向性
 水道事業は効率的・省資源的な経営を行うために、将来的には、流域単位での統合を進めていくべきである。このため、水道事業の市町村経営の原則を見直し、都道府県も経営主体として位置づける必要がある。水道用水供給事業と受水水道事業の統合は、水源から給水栓までの一元管理が実現され、双方が所有する水源や浄水施設の再編等、統廃合が行いやすい。

 水道事業を支える人材確保として、水道事業者間の人材融通のみならず、民間企業の経営ノウハウや人材の活用も考慮すべきである。官民連携には個別業務の委託や第三者委託・PFI、IT化による事業の効率化等様々な形態があるが、水道事業者は経営の弱点や地域の実情に応じた様々な展開を検討する必要がある。民間企業も水道事業者からの幅広い要請に応えるため、体制の充実・強化を図らなくてはならない。

C.アセットマネジメントの実践と水道料金の適正化

 水道事業者は高普及率に達した水道施設の老朽化に伴う計画的な更新や、人口減少を踏まえた施設規模の適正化等、施設の再構築とそれに必要な財源確保が課題となる。需要予測、地理的・水源的条件、広域化等を見据えた施設の統廃合や共同利用等を勘案し、将来へ過大な施設投資による無用な負債を残さないよう留意しなくてはならない。

 国や都道府県は、長期的視野に立ったアセットマネジメントの実践と需要者への情報提供を水道事業者に義務付けなければならない。定期の立入検査時に、重点的に施設の更新の取組状況を聴取する。水道事業者の取組が不十分と認められる場合は、アセットマネジメントの適切な実施を指示・指導・助言をすべきである。
 また、水道施設の更新には大きな財源を伴うため、自治体トップの経営判断が重要となる。国や都道府県は首長や水道事業管理者に対し、水道事業の経営が今後ますます厳しさを増してくること、水道施設の更新や耐震化の必要性、水道事業者間の連携の必要性を伝達すべきである。
 認可を受けた給水区域には給水義務が生じるため、需要減の状態においても、新規契約者に対して供給体制は整備しておく必要があるが、このことが事業規模を縮小する阻害要因になっている場合もある。今後は給水区域や給水量の縮小が必要となるため、給水区域の縮小等の事業変更認可を認めるべきである。

 水道事業者は「清浄」にして「豊富」「低廉」な水の供給が義務付けられている。ここで言う「低廉」とは、「安全」な水を、災害に対処し得る「強靭」な施設を確保し、かつ「持続」可能な形で経営することを前提に、高すぎず適正な価格で供給するという意味である。安ければ良いというものではない。
 需要者に対して、「安全」「強靭」「持続」を担保する資産維持費の水準・内容について公的な見解を需要者に示し、水道料金算定の根拠となる更新等事業内容や水道事業経営の効率性について、積極的に情報発信し理解を頂かなければならない。
 国は料金値上げの成功事例に関する情報を発信すべきである。

2.その他の懸案事項

A.水質

 水源保全の取組や水源から給水栓までの水質管理の促進に取り組む。

B.地球温暖化対策

 電力消費の約1%を消費している水道事業者は、一層の省エネルギー対策、再生可能エネルギーの利用向上に努めるべきである。将来的な施設再構築において、河川表流水を取水する場合は、取水場所をより上流に求め、位置エネルギーの活用に留意することも有意義である。

C.災害時の事業者間連携

 地震や豪雨等大災害の増加が予測され、応急給水や応急復旧等災害に備えた水道事業者間での連携体制をより強化すべきである。

D.地下水利用

 大口需要者ほど負担の大きい逓増型水道料金が地下水利用の専用水道増加の一因と言われている。地域における健全な水循環の確保や水道という公共サービスを維持するための負担の分担の在り方について、専用水道と公営水道を併用する大口需要者との意見交換が必要である。

2016.1.24

水道事業、市町村経営の原則見直し(官庁速報2016.1.12、日本経済新聞2016.1.24)

 2014年度末時点で水道管総延長660,163Kmのうち、12.1%に当たる80,192Kmが耐用年数を超過しています。2014年度中に更新された水道管の割合は0.76%であり、このペースですと総延長分の更新に約130年かかる計算になります。昭和40〜50年代の建設ピークから管路の法定耐用年数である40年を超えた管路がますます増える事態が予想され、大規模地震に備えた施設の強靭化も進まない等、老朽化管路の更新の推進が課題となっています。

 このような状況が背景にあり、厚生労働省は、「水道事業は市町村が経営する」と定めた水道法の原則を見直す方針を固めました。市町村経営の原則については、関係市町村の同意を得て、都道府県が水道事業を経営する事例や都道府県単位で事業統合を進める取り組みも既にありますので、この原則は「実態にそぐわない」という意見もありました。

 水道事業を巡っては、市町村の人口減少に伴う料金収入の落ち込みによる財源不足や人材不足により、管路の老朽化の進行や耐震化の遅れが深刻な状況にあります。このため、流域単位での事業統合などで都道府県が主導的役割を発揮できるよう、経営主体としての位置づけを明確にし、水道安定供給の維持に向けた都道府県の責務や機能強化について改正案に盛り込む考えです。
 機能強化については、協議会の設置や、都道府県主導での広域的な水道整備計画作りを可能とする規定を設けることや、都道府県が独自に事業体に財政支援を行う枠組みの構築も検討しています。水源の確保や広域的に水供給する用水供給事業と水道事業の統合を積極的に進める方針も法律に明記したい考えです。

2015.9.1

貯水槽の浮体式波動抑制装置(日本水道新聞2015.5.14)

 東日本大震災では受水槽や高置水槽にも被害が出ました。宮城、岩手、福島、栃木、茨木の5県において、小中学校や拠点病院など公的機関を対象にしたアンケート調査では、120基の被災水槽があったそうです。耐震設計を見直したH8年以前のものが多く被災していますが、それ以後のものも被災しています。破壊原因はスロッシング現象とバルジング現象です。
 バルジング現象とは、地震動により貯水槽のパネルと内容液が連成振動することにより剛体的にタンクに作用し、パネルタンク壁が変形または破壊する現象です。
 スロッシング現象は、2〜5秒周期の長いゆっくりとした揺れである長周期地震動が発生すると、貯水槽の液面が大きく揺れ、地震の振動周期と貯水槽内溶液の固有周期が一致することで、内用液が大きく揺れ、高くなった波が天板や側板上部に達し貯水槽を損壊させることです。
 東日本大震災では短長周期の地震応答の分布とアンケート調査で得たスロッシングあるいはバルジングによる被害地点はほぼ一致しています。

 中央大学平野教授の研究グループは、最新の耐震基準で設計・製作されていた貯水槽が壊れていることに注目し、最大波高を1/3程度まで抑えることを可能とした、8の字形パネルを組み立てる方式での浮体式波動抑制装置を考案しました。この抑制装置の制振メカニズムは、液体が抑制装置のスリットを通過するときに抵抗力が生じ、水の粘性が見掛け上大きくなることを利用したものです。これにより減衰が付加され、流速を抑えて波高を低減することができます。素材は、柔軟性のある耐塩素性を有する特殊ポリエチレン樹脂で成型した板状部材と、それを8の字状に組むための接続部材で構成されている。この板を8の字状に曲げてSUSボルトで接合し、現地で製作・設置します。

    

2015.8.14

耐震継手ダクタイル鋳鉄管による断層横断部対策(日本水道新聞2015.7.16)

 日本の活断層データベースによりますと、活断層として389か所が確認されており、その内、逆断層は約半分を占めていて、横ズレ断層との混合型を含めると、最も多い断層型なのです。
 逆断層型では、断層変位で局所的に管体に圧縮力が働くため、管路に大きな力や変形が作用することが知られています。

 一般的に都市部においては、地表部に柔らかな地層が数十mと厚く分布する場合が多いので、その下に断層が生じても、管路が埋設されている地表近くまで断層変位が明確に表れることはほとんど無く、断層発生による管路被害がほとんど報告されていない理由となっています。ただし、2014年に発生した長野県神城断層地震等、断層変位が地表部に現れる地震もあります。(参考資料)
 断層対策に取り組む必要が大きいのは、神戸市の大容量送水管のように、大深度に管路を埋設する場合で、断層変位による管路への影響が懸念されます。

 クボタは、金沢大学の宮島教授と共同で、耐震継手ダクタイル鋳鉄管による断層横断部の管路システムを開発しました。管路の変形解析にはシェールばねモデルという解析手法で数値解析をし、大型の断層再現実験(断層変位1.2m)によりその解析手法の有効性を確かめています。

 活断層データベースでは1〜1.5mの変位量が最も多く、2m以下の変位量で収まるものが全体の半数を占めています。この範囲の変位に対しては、耐震継手ダクタイル鋳鉄管のみでほぼ対応できるそうです。

 それ以上の約3m近くの大きな断層変位が生じると、配管の管軸方向の変位が大きくなります。その管軸方向の変位を継手部の伸縮により吸収しますが、多くの継手が最大限度まで伸び(縮み)だした状態になります。その時、継手が最大まで伸び(縮み)切った範囲の地盤との間の大きな摩擦力が管体に作用します。継手が最後まで伸び(縮み)切る範囲を小さくするため、通常の継手の10倍に相当する伸縮量を有する長尺継ぎ輪を、断層を挟んで設置することで、管体に発生する力を小さくすることに成功しました。
断層の種類や断層変位・角度などの断層条件、管の口径に応じて、長尺継ぎ輪を設置する場所や個数を決めることが必要なことから、設置位置や個数を簡易に決定できる管路設計手法も開発しました。

 このシステムは大きな断層変位に対しても管体に変形が残らない弾性範囲で設計されているため、断層地震が発生しても、補修が不要でそのまま使用し続けられるのが特徴です。

<参考:長野県神城断層地震とPE管の挙動>(日本水道新聞2015.6.4)

 2014.11.22に発生した長野県神城断層地震では、震源でのマグニチュードは6.7、最大加速度は589ガルでして、白馬村で最大震度5強を観測しました。この地震により村内を縦断する神城断層で最大1mの隆起と数十cmの横ずれが生じ、断層を中心に管路の座屈などが送水管25か所・配水管18か所・給水管が多数被害を受け、460戸が断水しました。

 地表面で約80cmの隆起と約30cmの左横ズレが確認された箇所に埋設されたφ75mmPE管の管体調査をPOLITEC協会が行ったところ、PE管は垂直方向に約70cm、水平方向に約45cm変位していたものの、地盤返上に追従していて、漏水をせずに震災後も通水を継続していました。PE管の地盤変状に対する許容ひずみは6%ですが、この現場における管路の伸びによる軸方向のひずみの状況は3.22%と計測されました。

  

2015.6.27

昨今の節水アラカルト(日本経済新聞2015.6.20)

 水道事業経営が厳しい理由の中に、少子高齢化と共に節水の定着が挙げられています。日経新聞に節水機器や節水行動に関する記事が載っていましたので紹介いたします。息抜きに眺めてください。

1) 風呂用水(40%)

@ 風呂上がりに汚れ物の予洗をする
 お風呂上がりに汚れ物を固形石鹸でこすり洗うだけで、洗濯機の洗濯コースの「ノーマル」から「ライトウォッシュ」に変更できる。(30l/回以上の節水効果)

A 節水シャワーヘッド
 節水シャワーヘッドはシャワーの目が細かく手元で止水ができます。軽くて、少ない水量でも十分な水圧があり使い心地は快適だそうです。(節水前95lから節水後63lになり32l/回の節水効果)

B 夏場は6分目程度の湯張りにする
 冬場は方まで温まりたいため多めの湯張りになりますが、子供と一緒に入る場合は6分目程度の湯張りでも十分だそうです。(62l/回の節水効果)

2) トイレ用水(22%)

着座時間感知型トイレ
 ポチが知っているのは、2011年12月、TOTOが洗浄水量3.8l/回の節水トイレを出して以来そろそろ節水効果も限界かなーと思っていました。トイレから汚物を流出することはできても、ウンチやトイレットペーパーを下水までちゃんと流してくれないと困りますからねー。
 洗い出し水量は限界に近くても、最近の節水トイレは、着座時間をセンサーで感知し、自動で「大」「小」の洗浄水量を切り替えてくれるのだそうです。手動で洗浄コックを操作していると、「大」「小」を間違えてひねってしまう恐れがあります。着座時間が6〜30秒ほどの場合は、3.3l(マンションでは3.6l)、それより長いと3.8l(マンションでは4.8l)流すのです。男性が小便利用でトイレの30cm以内に30秒立つと、「小」よりさらに少ない水が流れます。

3) 炊事(17%)

@ 食洗器
 皿やフライパンを手で洗ってみた場合32lだったそうです。一般的に食洗器は多く水を使用すると思われています。一般モードでは50lであるものが、食洗器の省エネモードは27l程度のものもあるそうです。

A 水だけで食器洗いができるアクリルスポンジ
 アクリルスポンジは細かい繊維でできていて、洗剤を使わなくてもきれいに汚れを落とすことができます。洗剤のすすぎも必要なく、洗浄時間は洗剤を使った場合の半分ほどで済み、時短効果も高いのです。

4) 洗濯(15%)

洗濯物の量を減らす
 夏場は洗い物が増える一方で洗濯回数を減らすことは難しいと思えます。そこで、洗濯一回当たりの量を減らす工夫をするのです。基本は洗濯物一つ一つを小ぶりにダウンサイジングします。例えば、バスタオルをスポーツタオルに替えたり、容量の大きいシーツの洗濯回数を減らすため、シーツの上に大判のバスタオルを敷く等です。

 このように、水使用機器のメーカーばかりでなく、家庭の主婦もいろいろ工夫を凝らして節水に努力されている状況が伺えますね。

2015.3.6

メダカのバイオアッセイ(2014.6.26日本水道新聞)

 H24年5月、利根川水系の浄水場で水道水質基準を上回るホルムアルデヒドが検出され、一部の浄水場で給水停止を余儀なくされました。水道水が需要者の健康を害する恐れがあると判断された場合は、水道法23条「給水の緊急停止」に基づき、直ちに給水を停止する等の措置を講じなければなりません。水道水質基準項目の51項目のうち、水質異常時に直ちに所要の措置を講ずる必要があるとされる項目は、水銀やシアン化物イオン、塩化シアン、硝酸対窒素、亜硝酸態窒素等10項目以上が示されています。需要者の健康を害する恐れのある多くの物質を同時に監視し、しかも、いち早く水質異常を発見する水質管理が求められています。こうした要求に対して実用化された技術の一つが魚類によるバイオアッセイ装置です。
 バイオアッセイとは、生物(魚類や微生物等)を用いた毒物検査のことで、試薬を用いる化学分析法に比べて、未知の毒物や複合毒物にも対応でき、不特定多数の物質を同時に検知でき、かつ連続した監視ができるという利点を持っています。

 人間に危害を及ぼす急性毒物薬品としては約970種類あるといわれていますが、魚類はそれら毒物の約97%に反応し、反応も早く、飼育による環境への悪影響もほとんどありません。このようなことから、水道分野のバイオアッセイでは、ほとんどの場合魚類が用いられています。

 バイオアッセイに使われる魚はヒメダカが良く使われます。他の魚類は案外毒に強く、鈍感なのに比較して、ヒメダカは@微量の毒に素早く反応し高精度の検査が可能、A個体差が少なく、毒性反応の誤差が少ない、B長寿命(5年の生存事例がある)、C国内に養殖業者が多い、D個体が小さいため、装置を小型化することが可能という利点があります。

 ヒメダカは@鼻上行動、A狂奔行動,B忌避行動、C停止(死亡)行動をする習性があり、日常的にCCDビデオカメラでヒメダカの状況を撮影し、その行動を画像解析処理にすることで、何らかの水質異常が発生したことを自動検知できるのです。

   

2014.06.23

FF・FB制御を組み合わせた凝集剤注入制御システム(2013.12.26水道産業新聞)

 豪雨などによる急激な濁度上昇リスクが高まる中で、浄水場の熟練運転員が減少していることから、日立製作所はPACを凝集剤として使用する浄水場用の新たな凝集剤注入制御システムを開発しました。

 従来の注入制御システムは原水水質からPACの注入量を算出するFF(フィードフォワード)制御で行っていますが、それに加え、急速混和池出口のアルミニウム濃度を元にPACの注入量の補正値を算出するFB(フィードバック)制御を組み合わせた制御方式を新たに採用しました。
基本となるPAC注入率は、従来通り、原水水質の濁度・アルカリ度・pH・水温を指標としたモデル式に入力して算出します。もう一点、凝集沈殿処理後の上澄み水中の濁度とアルミニウムの指標との相関が高いことを検証し、未凝集の残留アルミニウム濃度を評価指標として、PAC注入直後の急速混和地の出口でサンプリングした水をフロック分離装置で処理後、残留アルミニウム濃度を計測し、PACの補正値を算出します。両方の数値から最終的なPAC注入量を出力するのです。

 台風による高濁度条件での制御実験では、PACの過剰注入を防ぎ、沈殿水濁度も現行方式と同程度か低いレベルを維持できました。また、1年を通した制御実験でも、250度までの全ての原水濁度範囲、沈澱池濁度を1度以下と良好な状態に管理できました。同社は[新制御システムは、低濁度時から100度以上の高濁度時にも対応でき、フィードバック時間も短いため、非定常状態に対して十分対応できます。急激な濁度変化でも良好な処理水質を確保できることから、運転員の手動介入回数の低減と負荷軽減が可能となるため、安心して凝集沈殿プロセスを運転管理できます。とコメントしています。熟練運転員が減少する水道事業体や第三者委託企業での採用も期待されそうです。


2014.05.06

鋳鉄管の機械布設工法(2013.10.31水道産業新聞)

 2013年10月に福島県郡山市で開かれた日水協総会の水道展で、クボタはGX管を機械接合するための機械(製品名はサイトワゴン)を出品しました。
 具体的な方法は、掘削溝の上を走行するサイトワゴンをGX管の継手部に移動させ、円弧状の接合ユニットを下ろして管をつかみ、スピーディに接合するというものです。(下の写真参照)

    

 掘削溝に作業員が入らなくて済むので、掘削幅を狭くでき、掘削土量は約3割節減できるそうです。重量物である鋳鉄管を持ち上げる等の人的作業が解放されるため、作業の安全性を高められます。機械操作は簡単なボタン操作で経験の浅い作業員でも対応可能とのことです。

 サイトワゴンは4つのカメラを装着していて、ゴム輪の状況をスマートフォンで即座にチェックできます。管にはQRコードを貼り付けて、管の接合時にサイトワゴンのカメラでQRコードを撮影し、管情報や接合情報、施工位置情報を即座にサーバに転送し、リアルタイムで接合のチェックシートや日報、竣工図が作成されます。この機能は、チェックシートの記入ミスや図面等書類作成手間を軽減し、位置情報はマッピングシステムにも反映できます。

 ポチは現役時代に、ダクタイル製造業の技術者にNS型ダクタイル鋳鉄管について以下のような苦言を呈していました。

 NSダクタイル鉄管の欠点は @重量が重いこと A塗装が100μmと薄いこと B薄い塗装を保護すべきポリスリーブの施工を工事業者に委ねていること と指摘し、Aは「せめて鋼管並みの外装強さを持つ程度の厚い塗装を確保して欲しい」、Bは「業者作業員がポリスリーブを取り付けるのではなく、最初から工場施工として取り付けていて欲しい」と要望致しましたが、AB共にコストの兼ね合いから無理だとのことでした。
 
 しいてもう一点問題点を挙げれば、 CNS継手の施工に熟練を要すこと でしょう。この点はGX管の出現でかなり改良されたと伺っています

 鋳鉄管に限らずどの管種でも言えることなのですが、ポチは、40年の耐用年数を待たずに漏水トラブルを引き起こす管のほとんどは、「施工不良と抱き合わせの管である」と思っています。鋳鉄管の場合、施工不良を生じる最大の理由は@の「重いこと」と思っています。塗装の薄さを補ってくれるのは、塗装を傷めないように扱おうとする配管工の細やかな配慮なのですが、管が重いとどうしても取り扱いがずさんになりがちになります。

 その薄い塗装を埋設時に守ってくれるのがポリスリーブなのですが、この装着も配管工任せとなるのです。散々塗装面に細かい傷をつけた後に、ポリスリーブを空気を十分に排除せずに装着している光景をたまに見かけます。工場出荷時にポリスリーブが装着してあれば、埋設前に管が傷つくのをかなり防げると思ったのですが、叶いませんでしたねー。

 福山市のような人口47万人の都市でも、配管工事を希望する業者は100社を超えています。H16年頃の東京都の配管業者数は、定かではないのですが、確か約1400社と聞いていました。今はもっと増えているのでしょうね。業者数が多いと配管施工の技量は、会社によってピンキリの差が出てきます。当然配管施工工事を始めたばかりで施工技術が未熟であったり、しっかりした技術を学んでいなかったりした配管工が担当することも大いに考えられます。福山市のある配管業者の幹部は、私に、NS鋳鉄管施工の場合、「一人前になるには1年はかかりますねー」って言ってましたが、一人前になる間、せっせと施工不良個所を増やしてくれたんでは水道事業体はたまったものではありません。最近は職工さん不足と聞きます。未熟な配管工の方々も増える傾向にあるのではないでしょうか。

 管が重いとどうしても、狭い掘削溝の中での管芯合わせがずさんになったり、運ぶ途中で管を舗装の上で転がして、薄い塗装面を傷つけたり、またその補修がずさんであったり、著しいのは補修をサボタージュしたりで、管体に傷が入ったままの状態で埋設されたり、接合不備の施工がはびこることになります。

 このサイトワゴンは、鋳鉄管の重さと配管工の技量の未熟さによる施工不良をかなり減らしてくれることを期待できると思うのです。クボタの展示会場の近くにいたのに、このサイトワゴンに気づかなかったのは迂闊でしたねー。まだ、現場では使われていないのでしょうが、早く実践で使って頂き、欠点を克服して、初心者でも使いやすくて、クボタさんの考えられている機能を十分に発揮してくれる機械に成長し、日本中で活躍してくれる日が来るのが待ちどおしいですね。

 以上が、ポチの意見ですが、この記事をUp後、配管工事現場担当の水道事業体の方から次のようなコメントを頂きました。この方は、クボタから「サイトワゴン」のプレゼンテーションを受けた方のようです。併せて参考にして下さい。

<ある配管工事現場担当者の意見>
 今日本の建設業界は、下請の減少、とりわけ末端で働く配管工など熟練作業員の減少に悩んでいます。その負担軽減になるこのような技術は歓迎されるものと思っています。

 但し、実際の老朽管布設替えでは、既設管を撤去して新設管を布設しなければならないため、配管工は穴に入って接合することになると思います。
 また下水取付管やガス供給管、電気管といった管が掘削溝に幾つも横断しますので、それら既設管をくぐって新設管を吊り下ろすことになります。そうなると、鉛直に新設管を平行移動させる降ろし方は使えませんので、クボタの技術陣の方々には、「開削布設替えでは接合部のみ自動化するのが有効ですね。」と言っておきました。

 NS管の場合、管挿入後にゴム輪が受口の溝から脱落していないかどうかが重要な管理項目なのですが、従来の目視によるB寸、C寸の測定チェックは配管工の個人差に依存するため不安がありました。今回のロボット(サイトワゴン)は、これを写真によって自動的に管理することができます。
 さらに、他企業による毀損防止の観点では、継手位置もGPSで緯度・経度が記録できるところに維持管理上の大きな利点を感じます。

 クボタは完成図の作成まで自動化することを考えているようですが、既に自前のマッピングシステムを導入している事業体では難しいですね。継手の緯度経度といった数値データはどこかに保存しておけば、必ず有効に使えるものと思いますが。

この方のご意見は
@既設管の撤去及び布設替工事を行うには、作業員が穴の中に入って工事を行うことになるので、掘削幅の削減は難しいこと。
A布設替工事では既設各種管路が輻輳しているため、真上から鉛直につり下ろすことが難しいケースがあり、掘削溝内での接合工事にのみ使用することになること。
BNS管の挿入具合のチェックには有効なこと。
C位置情報等の記録機能は有難いことだが、現在自治体が使っているマッピングシステムとどのように連携できるかという点が課題であるということ
を指摘されておられます。貴重なご意見有難うございました。

<参考:東京都のGX管採用理由 水道産業新聞2013.10.7
 東京都水道局は平成22年から25年まで4年間の試行を経てGX管の本格採用を決めました。GX管のメリットは@長寿命、Aコスト、B施工性ですが、東京都は「施工性」に注目したようです。

 特に注目した点は、NS管では必須となっていた溝切加工が解消できることです。溝切加工に要する時間はφ250mmで25〜30分かかり、その間は他の作業が行えず、手持ちぶたさの状態となることに加え、溝切加工に伴うエンジン音等は夜間工事の騒音削減のネックとなっていました。
 さらに、GX管は異形管部接続時のトルク管理が不要になること、ボルトの必要数が半分程度になることから、接合の際の挿入力が1/3程度に軽減されたため、施工性の改良効果が大きいことが採用の理由です。これらの施工性のメリットは実施工を行う企業関係者も評価していることが、アンケート調査で確認できたそうです。

 ただし、GX管では掘削幅が軽減できるというコスト性のメリットについては、十分な作業性の確保なのでしょうか?NS管と同じ掘削幅としています。
 また、ポリエチレンスリーブについても、「輻輳した埋設環境ゆえに他企業工事による損傷などのリスクを最小化する」判断から、装着することとしています。

2013.08.25

飲用としての水道水の評価(2013.7ミツカン水の文化センター「水にかかわる生活意識調査」より)

 ミツカン水の文化センターでは、2013年6月中旬に、東京圏、大阪圏、中京圏の在住者1,500名を対象に、平成25年度「水にかかわる生活意識調査」を実施しました。今年度は「飲用としての水道水」に着目し、家庭における水道水の飲用実態を明らかにするための試みとして、「家庭で飲む水」や「水道水の飲用方法」、さらには「飲み水としての水道水」の評価について調査を行いました。その結果をご紹介します。

1.水道水について不満に感じていることは

 1位は「特に不満はない」(40.2%)で、4割を超える人が水道水に対して一定の満足感を得られているようです。
 不満の1位は「水道料金が高い」(29.4%)、2位が「おいしくない」(22.6%)、3位が「塩素など消毒剤は体に良くない」(16.9%)、4位が「臭いがある」(15.7%)、5位が「貯水槽や水道管の不衛生さ」(14.9%)、6位が「水源の汚染」(8.5%)となっています。

q1 塩素臭が嫌われているのかも

  「おいしくない」と「臭いがある」は、ひょっとしたら、塩素臭が嫌がられているのかもしれませんね。「塩素は体に良くない」も同様の考えを持たれているのかもしれません。この点は品質・衛生面の完璧性を求める日本人を相手にする際に、避けては通れない問題だと思います。

 ポチは、「日本のほとんどの水道水は軟水だと思っていますので、水道水の味は日本中どこで飲まれてもそこそこおいしいと思っています。」と答えています。「おいしくない」と感じられるのは、水道水の温度が高いこと(水道水の温度が高いと臭いの感じ方が飛躍的に高くなります)が大きな原因なのです。井戸水は年中18℃前後で安定していると言われていますが、ポチの属していた事業体の水源水は夏場は31℃程度まで上昇し、その温度が余り冷やされること無く家庭の蛇口まで運ばれていました。「ボトルウォーターを買われた場合は、冷蔵庫で冷やして飲むでしょ?それと同じように、水道水も冷やして飲んでいただければそこそこの味だと思います。」と宣伝しています。冷やして飲んでいただければ、塩素臭の感じる度合いもかなり減ってきます。

 しかし、塩素臭に非常に敏感に反応される方がおられるのも事実です。井戸水を常時飲用されている方に水道水を試飲してもらいますと、10人中10人と言っても良いくらい、塩素臭があるが故に、「まずい」と反応されます。このため、水道水に含まれている塩素分を無くすために、煮沸するか、活性炭を装着している浄水器を通して塩素を除去し、冷却して飲んでいただくようお願いしています。(活性炭を通せばほぼ一瞬にして塩素は除去されると聞いています。)

 いずれにしても、水道水は安全面・衛生面を第一に考えた飲用水(食べ物)なので、@塩素臭がする程度塩素を水道水に入れておかないと衛生上問題が生じる可能性があることと、A水道法で規定されている塩素濃度は健康に関する安全面を十分配慮して健康に問題ない程度に決定されていること、そして、B「おいしくない」と感じるのは塩素臭を感じられることが原因であることが多いことを、丁寧にお客様に説明することが必要です。

q2 水源が汚染されているような気がする

 水源水質保全の取り組みや水質汚染監視体制、及び、水質汚染に十分対応している浄水技術の紹介等、日常から浄水された水道水の安全性に関する情報提供をしていく努力が大切ですね。

q3 貯水槽や水道管が汚れているような気がする

 この問題は水道水の安全性をPRしていくうえで頭の痛い重要なテーマだと思います。水源水質の変化に対応した適切な浄水技術を駆使して清浄な水道水を作ったとしても、各家庭に配水する過程での汚染が危惧されているわけです。老朽管の計画的更新、管網内の水質チェック体制の強化、管内洗浄の取り組み、貯水槽水道の管理の徹底等を通して、水道管や貯水槽水道経由の汚染を減らすと共に、水道水の安全性を納得して頂く必要があります。この点に関する対応策としては、水道事業体としても、水道水のデリバリー時に混入される管内や貯水タンクの錆や汚れに対して除去機能のある浄水器を設置することのメリットを、ある程度認めて対処する必要があるような気がします。設置の奨励を積極的に行う必要はありませんがね。

2.家庭で水道水を飲む最も多い飲用方法は

 水道水を飲む際での最も多い飲用方法は、1位が「そのまま飲む」(37.9%)、2位が「浄水器・整水器を通して飲む」(36.2%)、3位が「沸かして飲む」(20.0%)でした。「そのまま飲む」は順位こそ1位ですが、6割超の方は水道水をそのままでは飲んでいないという実態です。理由は、2.で述べました「塩素を含む臭い」、「貯水槽や水道管が汚れ」が考えられるのではないでしょうか。

3.ふだん家庭で飲んでいる水は

 ふだん家庭で飲んでいる水(複数回答)では、浄水器を通したり煮沸したりすることを含めて「水道水」を飲用している家庭は72.3%です。

 水道水以外の水を飲用に使っている家庭は、1位が「市販のボトルドウォーター」38.7%、2位が「スーパーにある持ち帰り用の水」9%、3位が「ウォーターサーバーの水」6.6%、4位が「井戸水」1.7%でした。

 「市販のボトルドウォーター」や「ウォーターサーバーの水」が東京圏では他のエリアに比べて高いのは、福島原子力発電所の放射能事故やホルムアルデヒド問題が影響しているのでしょうかね?関東圏に住む私の息子夫婦が盆に帰省した際、「ボトルドウォーターを買い込んでいる。」と話していましたよ。

 「スーパーにある持ち帰り用の水」が人気ありますね。ポチの住んでいる瀬戸内圏でも、スーパーの持ち帰り用水機の前にお客様が行列をしておられるのを良く見うけます。あの水自体は水道水であるケースが多いと思われますが、スーパーの装置を通して再浄化された水が水道水より好まれている理由を詳しく知る必要はあると思いますね。

 先の調査において、「水は飲まない」人を除いて、「もっとも家庭で飲んでいる水」(単数解答)を聞いたところ、1位は「水道水」(65.2%)、2位が「市販のボトルドウォーター」(22.7%)、3位が「スーパーにある持ち帰り用の水」(5,5%)、4位が「ウォーターサーバーの水」(4.9%)、5位が「井戸水」(1.1%)でした。約2/3の家庭で水道水がメインウォーターだったのですが、2割超の方は「市販のボトルドウォーター」を飲まれているのです。「スーパーにある持ち帰り用の水」が人気な要因と併せて、水道水に対する需要者の様々な不安要素を十分に把握して、今後の水道事業の在り方を考えるべきでしょうね。

4.水道水を飲用水として10点満点で評価すると

a.水道水を10点満点で評価すると

世界トップレベルにあると言われている日本の水道水の評価についてです。グラフは1995年から2013年迄の評価点を表したものです。水道水の評価は1995年以降、右肩上がりに上がっていましたが、昨年(12年)一転してポイントを下げ、13年も12年同様の評価でとどまっています。

b.水道水を飲用水として10点満点で評価すると

 飲用目的に限定した場合、全体の平均は6.83点で、全般的評価の平均7.05点より若干下まわりました。居住地別では中京圏が7.23点と高く、東京圏と大阪圏は6.33点で差はありませんでした。飲用水用と用途を限らなくても全般的な水道への評価とあまり変わらないことが伺えます。

 ただし、水道水を「そのまま飲む人(37.9%)」の平均は7.59点、水道水を「浄水器を通して飲む」とか、「沸かして飲む」・「浄水器を通し、かつ、沸かして飲む」・「その他」の「何らかの手を加えて飲む人(合計:62.1%)」の平均点が6.81点、「水道水を飲まない人(17.4%)」の平均は5.52点と、「そのまま飲む」人ほど水道水に対して高得点を与えています。

 今回の「ミツカン」の調査結果は今後の水道事業の在り方を考えていくうえで、多くの示唆を与えてくれているような気がします。水道事業体におかれましても、飲用である水道水の在り方を真摯に考え、需要者のニーズに応え得る品質を追求していく必要を感じます。

2013.06.17

水道危害項目の設置(2013.3.25水道産業新聞、水道水質基準に係る今後の検討事項について(案))

 平成24年(2013年)5月の利根川水系におけるホルムアルデヒドによる水質事故は、浄水施設での活性炭による吸着除去が難しく、かつ、塩素処理によってホルムアルデヒドを生成しやすい未規制の物質が一時的に大量に流出したことが原因でした。

 水道水における監視や調査が必要な物質については、水質基準項目、水道水質管理目標設定項目、要検討項目の3層構造に分類され、過去の検出状況の少なさに基づく廃止や新しい物質を追加しながら分類の見直しを行ってきました。これら水質基準に定めている物質は一定程度の検出率等の条件を満たす物質であり、通常であれば問題にならない化学物質については基準等を定めていませんでした。

 しかし、突発的な水質事故の発生は、必ずしも過去の検出状況とは関係せず、基準等が設定されていなくても人に有害な物質で水道水源が汚染されるリスクは存在します。そのため、事故が発生した場合、応急対策を実施し、恒久的な措置の検討を行うことが必要な物質として、水道に危害を及ぼす恐れがある項目=「水道危害項目」のカテゴリーを新たに設けることとなりました。
 「水道危害項目」は一定数以上の検出がみられないことから水道水質管理目標の設定にはなじまない物質の内、水道原水に混入すると、健康影響、異臭味障害、塩素消費量の増大等の障害が発生する恐れがあり、水道事業者による事故時対応やリスク把握、浄水処理方法の改善、関係行政部局、物質使用事業場等への働きかけを行うべき物質とします。
 抽出される物質については、事故発生の検知、事故発生中の浄水処理施設の管理、通常の運転体制への復帰判断の指標となる目標値を定め、効率的な測定が可能かどうかを検討する必要があります。

2012.09.01

ホルムアルデヒド前駆物質のHTMを水質汚濁防止法指定物質に認定 (日本水道新聞2012.5.28、6.14、8.20)

 2012.5.18,利根川・江戸川水系から取水する浄水場で水質基準を上回るホルムアルデヒドが検出され、関東3県で粉末活性炭注入量の増加や取水停止措置が相次ぎ、千葉県では5市(約36万戸)で断水し、運搬給水が実施される地域も出るなど生活への影響が広がりました。
 埼玉県では、庄和浄水場(同県春日部市)と行田浄水場(同県行田市)で処理後の水から、国の基準値(1リットル当たり0・08ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドを検出し、有害物質を吸着する粉末活性炭を入れるなどして基準値未満に調整して供給を続けました。
 群馬県では、数日前から東部地域水道浄水場(千代田町)でホルムアルデヒドが検出されていて、19日に利根川をはじめ、支流の烏(からす)川(高崎市)、鏑(かぶら)川(同)、鮎川(藤岡市)など計8地点で採水し検査会社に調査を依頼しました。事故発生時の水道原水からは全ての試料からヘキサメチレンテトラミン(HTM)が検出されました。烏川周辺には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質のHTMを扱う事業所が複数あります。

 今回の水質事故は、ホルムアルデヒドが利根川水系へ直接流出したのではなく、その上流でホルムアルデヒド前駆物質(ヘキサメチレンテトラミン)が排出され、その水を取水した浄水場の塩素消毒により反応して生成され、水質基準を超過したものです。

 調査した結果、2012.5.24、厚生労働省と環境省はHMTをホルムアルデヒド生成の原因物質と推定、群馬・埼玉両県にHMTを扱う事業所への立ち入り検査をするよう要請しました。2012.6.7、埼玉県は調査の結果、DOWAハイテックから産業廃棄物として排出されたHTMを高濃度に含有する廃液が、高崎金属工業で中和処理されたものの、HTMが十分に処理されずに河川中に放出したことが原因と推察しました。高崎金属工業は、廃液に高濃度のHMTが含有されていることを認識せずに中和処理のみを実施、河川中に放出された模様です。
 環境科学国際センターによる、高崎金属工業の中和施設の工程を実験で再現した結果では、HTMは4割程度、窒素分は2割程度しか除去できないことが確認されました。DOWAハイテックが高崎金属工業に処理委託した廃液には、約10.8トンのHMTが含有されていたと推測されることから、河川に放流されたHTMは6トン程度と考えられ、国の調査で示された0.6〜4トンと大きな矛盾はないと判断されました。

 HMT自体に有害性はなく、廃棄物処理法や水質汚濁防止法で規制されている物質ではありません。また、全窒素濃度等の試験成績書やサンプルを提供していて、廃棄物に関する情報を秘匿したとは認められず、DOWAハイテックと高崎金属工業との契約書にHMTの情報を記載していなかったことは、廃棄物処理法の委託基準違反には該当しないことから、現行法制度上では、両者の法的責任は問えません。

 埼玉県は、国に対して再発防止のための法整備を要望しました。消毒用の塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する物質を多量に扱う事業者に対し、排水の水質管理の徹底や廃棄物処理の適正化に関する指導要綱を作成します。

 環境省はホルムアルデヒドが検出された事故を受けて、2012年10月から、取水障害の原因となったHMTを水質汚濁防止法指定物質に追加する内容で、水質汚濁防止法施行令を一部改正する予定です。これにより、事故時の迅速な対応や関連廃液の取り扱いについて事業者への注意を喚起することが期待できます。
 工場や事業場からの排出水について、ホルムアルデヒドの生成能の目安を水質基準の10倍に当たる0.8mg/Lとし、排出水の濃度に関して事業者に周知徹底すると共に、HTMを要調査項目対象にすることで、環境中の濃度を把握するよう求めています。
 廃液の処理委託に際しては、廃棄物情報の提供に関するガイドライン(WDSガイドライン)を活用し、委託契約書にHTMの有無を記載することを義務付け、情報提供を徹底させます。
 
 さらに、埼玉県は2012.5.22、ホルムアルデヒドの原因物質を除去できる「高度浄水処理」施設を5か所全ての県営浄水場への導入を検討することを明らかにしました。県企業局は、未導入の四カ所への導入費は総額約700億円と試算しています。
オゾンや生物活性炭を使う高度浄水処理では、さまざまな有害物質の分解や除去ができます。五カ所の県営浄水場のうち、利根川水系の新三郷浄水場(三郷市)では二年前に導入され、今回の問題でホルムアルデヒドを検出しませんでした。一方、利根川水系で未導入の行田浄水場(行田市)と庄和浄水場(春日部市)では、国の水質基準値(0.08mg/L)を超える値を検出しました。厚生労働省は「再発防止には高度浄水処理が最も有効だ」としています。

 <ホルムアルデヒド>
無色透明、刺激臭がある気体で、水溶液はホルマリンと呼ばれます。発がん性が指摘されるほか、毒劇物法で劇物に指定されています。基準値を超える水を飲んでも直ちに健康に悪影響はありませんが、継続的に吸入すると目や鼻が強く刺激される恐れがあります。
生物の組織標本作製のための固定・防腐処理に広く用いられ、ホルマリンによって死滅する菌類、細菌類が多いことから、希釈した溶液を消毒用にも用いられています。住宅のフローリングや家具に使われる接着剤などに含まれていたため、目まいや喉の痛みなどを引き起こすシックハウス症候群の原因物質として問題となり、規制が強化されました。

<ヘキサメチレンテトラミン(HMT)>

 正式名称は1.3.5.7−テトラアザトリシクロ[3,3,1,13.7]デカンです。合成樹脂の促進剤や発泡剤、ゴム加硫促進剤、医薬品、火薬、尿の防腐剤に使われます。化学物質排出管理促進法(PRTR法)で、年間1トン以上扱う事業所は届け出義務があるPRTR第1種に指定されます。飲料水基準はなく、1983年の環境省調査で、公共用水域・底質共に検出されていません。

2013.06.01

水道システム内での水温上昇を抑える取り組み(2013.3.25水道産業新聞)

名古屋市上下水道局では「水道水のおいしさ」を追求する取り組みとして、取水から給水栓までの水温の変化状況を研究しています。飲水のおいしさのファクターとして、塩素濃度の低減と冷やして飲むことが良く知られていますが、水道システムの中で水を冷却することは難しいので、取水から給水栓までの過程で水温が上昇する要素を調べ、水温上昇抑制の可能性を研究されているのです。具体的な取り組みと得られた知見について紹介します。

@ 取水口から蛇口までの水温、残留濃度の実態調査
 浄水場、配水場、貯水槽水道等の水道施設で、夏季と冬季の2回、水温、残留塩素濃度、電気伝導率を1週間程度連続測定し、水の流下に伴うそれぞれの指標の変動を調査しました。平成23年度の結果では、夏季・冬季に関わらず、取水場から配水場までの過程よりも、配水管内や貯水槽水道で水温変動が大きいことが判明しました。配水管内では、停滞している管路での水温上昇が顕著であり、常時放水を行うことで抑制できるとのことです。

A 蛇口までの流達時間の短縮に関する調査
 @と同様に、夏季と冬季に約1週間連続測定を行っています。配水区域の末端の向うにしたがい水温が上昇していました。ここでも、停滞している配水管で水温上昇が顕著でした。
 適正口径による管路更新により、停滞水の解消を図ることが有効との見解を持っています。

B 配水管内の水温上昇に関する調査
 模擬配管を設置し、管種・口径・埋設深度などの諸条件を変化させることで、水温上昇を抑制できる管路埋設条件を探るものです。結果的には埋設深度を0.6m以上にすること、常時放流を行うことが、水温上昇の抑制に有効とのことです。

 また、貯水槽水道では、受水槽や高置水槽における流入時と流出時との比較調査を行い、貯水槽において2〜4.5℃水温が上昇することを確認されています。
 今年度は、貯水槽規模、設置環境、材質、遮光ネットの有無、塗料、容量について夏場に比較実験を行います。貯水槽における水温の日変動は配水管他に比べて激しいことを確認すると共に、貯水槽における経済的で効果的な水温抑制手法を模索する予定です。

2012.11.01

人工降雨技術(2012.9.30日本経済新聞)

 2012年夏は利根川水系で11年ぶりに取水制限があり、日本も水不足の危機が無いとは言えない状況があります。世界の人口増加や地球温暖化で渇水が懸念される中、好きな時に雨を降らせる人工降雨技術への関心は高まりつつあります。
 また、人工降雨は渇水防止に役に立つだけでなく、豪雨をもたらす雨雲を操り、年の上空に来る前に、ダムに近い山間部で大量の雨を降らすことも考えられます。また、豪雪地帯では町から離れた場所に大雪を導けたら雪かきが減ることになります。このように、防災技術の一つとして活用できる可能性も秘めています。

 雲は千分の数mmの微小な水滴が集まってできています。水滴が凍って1mm程度まで大きくなると氷の結晶(氷晶)になり、雲から落下し、途中で温かい大気に触れて雨になります。日本で降る雨のほとんどがこの原理によるものです。人工降雨技術とは、氷の結晶が多くできるよう物質を雲に送り込み雨を増やそうとする技術なのです。既存の雲に対して水滴や氷の結晶の成長を促す技術ですので、雲すらない晴天での応用は難しいのです。 

 天気を自由に操る技術研究を本格的に始めたのは米国です。1946年GE(ジェネラルエレクトリック)の研究者達がドライアイスを雲の中に入れ、氷の結晶を育てる実験に成功したのが始まりです。日本でも1947年ドライアイス法で九州大学等が実験に取り組んでいます。
 人工降雨技術としては、ヨウ化銀を含む煙を地上から立ち上げる方法が長らく主流でした。ヨウ化銀が雲の中で氷の結晶を作る元となるのですが、大量のヨウ素は人体に影響をもたらす恐れがあります。

 そこで、液体炭酸を使う方法が考えられました。液体炭酸法は安全でドライアイス法に比較して氷の結晶を効率的に良く作れるのが特徴です。
 降雨には雲の中で大きくなった水滴が氷にならずそのまま落ちるタイプもあります。対策として、吸湿性のある塩の粒子を使い、塩の粒子が周りの水分を吸収し,0.1mm程度の水滴になる実験も試みられています。地上では確認できなかったものの、40〜50μm(1μm=100万分の1m)の塩の粒子を飛行機から撒くと、雨となる一歩手前のφ0.05mmほどに水滴が成長したという観測記録があります。

 研究が始まって70年近く経つ人工降雨技術ですが、実用化が進まないのは雨が降ったとしてもそれが人為的なのか、自然現象なのか見分けがつかない点があります。様々な技術の内、どの手法が優れているのか客観的に評価するのも難しいのです。
 最近ではシミュレーション技術が進展し、どの手法が雲の状態を変えるのかが解りやすくなってきたそうで、技術の進展に期待したいものです。

  現状の技術はどこにでも雨を降らせる実力はありませんが、天の恵みを自在に操る発想に異論が唱えられる危惧はあります。天気予報が外れることは受け入れられても、誰かが勝手に天気を変えることを望まない人はいます。水を巡る利権争いや水害の押しつけ合いに発展することも考えられます。人類の大きな夢を叶えるには、技術開発だけでなく社会の合意も必要と思われます。

2012.07.12

横須賀市が水道サービス会社設立を断念(日本水道新聞2012.6.28)

 2012.6.26、横須賀市は(仮称)「(株)よこすかウォーターサービス」の設立を断念しました。

 横須賀市は、市上下水道局が5千万円、民間企業が2.5千万円を出資して新会社を設立し、立ち上げに当たっては、プロポーザル方式で共同事業者を公募し、会社を立ち上げた後、同局と新会社が随意契約するスキームを想定していました。

 しかし、市の顧問弁護士から、「新会社への随意契約は、地方自治法施行令で規定する随意契約の要件に該当せず、理由に合理性がないこと。随意契約による住民監査請求等が行われるリスクが高いこと。」などの見解が示されたため、市長が株式会社設立を断念しました。

 同局は、共同事業者から、特許権を有して他社にはできない業務などの優れた提案が寄せられることを想定し、これを、随意契約採用の根拠とする予定でした。募集要項(案)では、提案を適正に評価できるかについて疑念が生じ、選考基準等の見直しも検討しましたが、見直しをすると、当初予定していた事業目的を達成できない恐れがあると判断し、説明資料の取り下げを決定しました。

 これに似た官民相互出資による維持管理会社がいくつか考えられていて、既に契約を結んだ事業体もあります。ポチは「この類の会社に事業体が将来にわたって維持管理業務を随意契約できるものだろうか?」という疑念を以前から持っていましたが、横須賀市の弁護士の判断はこれらの会社の存続に影響を与えるかもしれませんね。

2012.03.09

電源不要のビル用消火装置(2012.3.7日経新聞)

 オフィスやマンションビルの屋上に窒素ガスボンベと接続された消火用貯水槽を設け、スプリンクラー設備と配管で接続させておきます。火災を感知しますと、窒素ガスの圧力で水槽から各階のスプリンクラーに水を送り出す仕組みです。水槽の水が減った場合の警報は電気で作動しますが、装置自体は電気を使いませんので、地震等でビルが停電したり、水道配管が破裂しても消化機能が確保されるというものです。


2012.03.07

冠水時に吸気遮断する空気弁(2012.2.23日本水道新聞)

 最近発生頻度が増えている集中豪雨や局地的大雨により、空気弁ボックス内が降雨や溢水により浸水し、空気弁が濁水中に水没状態になるケースが多くなってきました。定期的なメンテ作業で排水するわけですが、その間濁水に水没したままの状態で空気弁が作動しますと、吸気と共に濁水を吸込み、クロスコネクションを生じる恐れがあります。水没時のクロスコネクションを防止するため、濁水が溜まっている状態では吸気を遮断し、排気のみを行う空気弁が開発されました。濁水がなくなれば吸排気機構が復活します。

        

2012.01.07

ヒ素除去に新材料(2012.1.7日経新聞)

 日本でも地下水にヒ素を含んでいて困っているケースがありますが、アジア・アフリカなどでは地下水が広範囲にヒ素で汚染されているケースが多いのだそうです。

 物質・材料研究機構は、水から有毒なヒ素を簡単に除去できる新材料を開発しました。新材料は微細な穴が多数開いたアルミナの穴の内壁に、ヒ素を優先的に捉える化合物をびっしりと敷き詰めた構造のものです。新材料を小袋に詰め、汚染水に入れてかき混ぜるといった簡単な処理でヒ素が吸着できます。ヒ素濃度が2ppmの汚染水を数時間で約90%を除去できるそうです。

 一般的な吸着剤のゼオライトはヒ素以外の様々な物質も取り込んでしまうため、処理後の廃棄物が膨大になる難点がありました。新材料は特にヒ素を選んで吸着するため廃棄物の発生量が少量で済むみたいです。

 さらに、化学処理でヒ素を取出し、再利用することも可能です。また、ヒ素を吸着すると白色から青色に変化するため、ヒ素汚染を調べるセンサーとしての機能も持っています。

2011.8.22

不断水での配水池清掃方法

 水道事業ガイドラインでは、「5年に一度程度、配水池を清掃することが望ましい。」とされていますが、平成19年度に水道技術研究センターが実施したアンケートによりますと、74%の配水池には「予備池がない」との回答があり、小規模な事業体を中心にバックアップ能力が脆弱な状況にあると見受けられます。このことは、配水池を空にして清掃することは不可能ということでありまして、配水池の清掃を困難にしている実情でもあります。
 このため、ロボットによる配水池の底板を不断水で清掃できる工法が脚光を浴びています。この工法は、ロボットやフロートホース、水中ケーブルを次亜塩素酸ソーダで消毒して、口径600mmの人孔マンホールから水中CCDカメラを搭載したロボットを投入し、配水池の側壁や底板の劣化状況を撮影・調査すると共に、底板を清掃するものです。ロボットのバンパー内部の吸水口から底部の堆積物を吸引して清掃する仕組みです。ロボットは電動式で完全防水タイプのため、油などの汚染は発生しません。また、水に浮くフロートホースや水流を起こさないキャタピラを塔載することにより、堆積物を巻き上げずに清掃することができるため、不断水での清掃や池内の調査が可能となっています。
・施工可能面積は、堆積物の量や性状により異なりますが、約50〜100m2/日程度です。
・カメラは40倍ズームが可能で、カメラ・照明共、上下左右に首振りできるチルト機能を備えています。もちろん画像の保存は出来ます。
・ロボットの誘導や速度の変更は、カメラの画像をモニターで見ながらリモコンで制御します。

 600mmの人孔マンホールさえあれば水槽を改造することなくロボットを投入できますし、清掃のための水抜きやバックアップ水槽が不要でありますので、単独配水池でも清掃や状況確認が可能となっています。

  

2011.4.16

水質検査の信頼性確保(2011.3.7〜10日本水道新聞)

 水道事業は安全安心な水を供給することが基本であり、50項目に及ぶ水道水質検査が全水道事業体に義務付けられています。その適合率は毎年非常に高い率を保っており、H20年度では99.9%と、「日本の水道は世界有数の安心できる水道である」と言えるでしょう。
 水道水が安全であることの確認をするのが水質検査であり、原則は水道事業者が自ら測定すべきです。ただし、自己検査ができない場合は、登録機関に委託することが認められています。厚生労働省の調査では、水道事業者の84%が何らかの形で水質検査を委託していて、今後も増加していく傾向があります。その主な委託先となるのが登録検査機関なのですが、H22年度末で220機関あり、これも年々増加していきます。

 この検査機関で、最近水質検査の不正な行為が発生しました。また、行き過ぎた検査料金の価格競争が起きているとの指摘もあります。

 そこで、厚生労働省では2011.3.3「水質検査の信頼性確保に関する取組検討会」の報告を受けて、水道事業者等が登録水質検査機関などに検査委託する場合の措置に関する水道法施行規則の一部改正案に対する意見募集を開始しました。その内容は次の通りです。

水道事業体が順守すべき事項

1.水質検査を委託する際は直接書面で契約すること
 @委託する検査項目や実施時期、回数、委託料
 A試料採取や運搬を委託する際の方法
 B検査結果の根拠資料
 C臨時検査の扱い
 などを、委託契約書により書面で取り交わし、5年間保存すること。
2.委託料は受託業務が遂行できる額であること。
3.試料採取・運搬が速やかに行える登録機関に委託すること。
 水道事業者が試料採取・運搬する場合は速やかに登録機関に引き渡すこと。
 なお、品質管理にも留意して、水道GLPやISO/IEC17025を取得しているかなども把握したうえで委託することが望ましいとしています。

登録機関が順守すべき事項

1.自ら保有する器具・検査施設を使用して試料採取や検査を行うこと。
2.省令で規定する方法で検査すること。
3.定期的な精度管理や外部精度管理を受験すること。
4.国や水道事業者等が行う日常業務確認調査に適切に対応し、是正が指摘されれば必要な措置を講ずること。
5.試料採取標準作業書に試料の採取・運搬方法や受領方法を追加すること。
6.作成した標準作業書に基づき検査すること。

厚労省が行う登録機関への指導監督

1.登録や更新時に、厚生労働大臣への申請書類に、水質検査を行う区域における資料の運搬経路、方法、運搬時間について追加すること。その区域、事業所の所在地を変更する際にも同様の対応が必要となる。
2.検査業務規程を届ける際に、検査料金の算定根拠を明らかにした書類や受託上限件数の設定根拠を添付すること。
3.登録更新時に、標準作業書の新旧対照書類、受託実績を追加すること。
4.帳簿に、資料の運搬方法や水質検査の開始・終了日時、検査結果の根拠書類を追加すること。

2011.2.8

トリクロロエチレンの水質基準を強化(2011.2.3日本水道新聞)

 発がん性の疑いのあるトリクロロエチレンの水質基準が2011年4月1日から0.03mg/Lから0.01mg/Lに強化されます。トリクロロエチレンの概要について説明します。

 トリクロロエチレン (trichloroethylene) は有機塩素化合物の一種で、エチレンの水素原子のうち3つが塩素原子に置き換わったもので、ClCH=CCl2 で表されます。常温では無色透明の液体で、不燃性で、揮発性があり、甘い香りを持ちます。
 脱脂力が大きいため、半導体産業での洗浄用やクリーニング剤として1980年代頃までは広く用いられていましたが、発癌性が指摘され、代替物質への移行が行われています。

 吸入すると、トリクロロエチレンは中枢神経系を抑制します。症状は急性アルコール中毒に類似し、頭痛、めまい、錯乱に始まり、吸入を続けると意識喪失を経て死亡に至ります。香りに対して鼻はすぐに麻痺し、知らずに致命的な量を吸引するおそれがあるため、高濃度の蒸気が存在する可能性のある場所では注意・警戒が必要とされています。
ヒトに対する長期的影響は知られていませんし、ヒトに先天的な異常が起こるかどうかについて明確な結論は出ていません。最近の研究ではトリクロロエチレンへの被曝と受精率の間に関連があることが示されています。また、ある場合には精子数の減少が見られることが報告されています。
 より最近の分析で変異原性と催奇性が弱い証拠が提示されており、機構は明らかではありませんが腫瘍の発生を促進することが知られています。しかし、環境量の被曝と比較した場合、外科用麻酔薬としての長期間の使用によるがんの発生率の増加は認められず、そのような効果はおそらく持たないであろうことが確からしいとされています。国際がん研究機関 (IARC) はトリクロロメタンと同様グループ 2A 「ヒトに対する発癌性がおそらくある」に分類していいます。

 土壌汚染や地下水汚染を引き起こす原因ともなるため、各国で水質汚濁並びに土壌汚染に係る環境基準が定められています。日本では化学物質審査規制法により、1989年に第二種特定化学物質に指定されました。
トリクロロエチレンを含む有機塩素化合物は自然にはほとんど分解しないことから、土壌・地下水・海洋汚染源として環境に大きな負荷を与えます。
 トリクロロエチレンに土壌や地下水が汚染された場合、除去方法としては、汚染された土壌の地下水を汲み上げて除去するという物理的な方法の他、トルエンやフェノールといった芳香族化合物やメタンなどの共役酸化分解により微生物に分解させる方法もあります。
 トリクロロエチレンの地下水汚染は、地表から不圧地下水、被圧地下水へと非常にゆっくりと汚染が拡散されるため、長期間汚染状態が続くことになります。浄水処理方法は、揮発性があること、水に対する難溶性であるという特徴を利用して、バッキによる大気揮散(エアーストリッピング)を行います。大気に排出する溶存物質は粒状活性炭で吸着させた後排出する必要があります。

2011.2.7

川崎市工水送水管事故(2010.12.10水道産業新聞)

 2010.12.2、川崎市の生田浄水場から平間配水所を経て、臨海地域の工業地帯へ工業用水を送る「工業用水2号送水管」(RC鋼管φ1300mm、延長16km、昭和37年布設)で漏水事故が発生しました。
原因は、川崎市水道局工業用水の平間配水所で委託業者が監視制御装置を点検中、操作を誤って、送水量を0m3と入力した結果、仕切弁が作動して開度5%の状態に制御しました。このため、管内でウォーターハンマーが発生して圧力が急上昇し、人口蓋が吹き飛んで、最大で高さ4mまで水が噴き出しましたのです。
 
 この漏水により、付近の道路が10〜20cm冠水し、約200mにわたって通行止めになった他、巻き上げられた土砂により、付近の屋根瓦やガラスが割れるなどの被害が約10世帯で発生しました。人的被害はなかったものの、臨海部への配水量が2〜3割ダウンし、7社に操業時間の短縮・停止などの影響を及ぼしました。

 川崎市は2日15時48分の事故発生直後に生田浄水場などで異常を感知し、16時50分に同浄水場からの送水を止めると同時に、漏水箇所前後の仕切弁を閉じ、17時46分に断水しました。道路掘削の結果、漏水個所が人孔の溶接蓋の溶接部と確認でき、22時から修理に着手、3日8時に送水を再開できました。

 川崎市の工業用水は、相模川系の長沢浄水場と自己水源の生田浄水場で、56万m3/日の能力があり、事故当日の生田系は約18万m3/日、長沢系は約14万m3/日を送水していました。早期の復旧が困難と判断し、復旧作業と並行して水系の切り替えを推進し、長沢系の取水量を7万m3/日増量し、長沢系への切り替えを進め、工業用水ユーザーへの影響を最小限に抑えました。

 4日には2号送水管の別個所からの漏水を発見しましたが、漏水量が少なかったため、断水をせずに補強で対応したそうです。路線の巡視と漏水調査を実施し、5日には空気弁などの付属物を含めて安全を確認できました。
 今後は、外部有識者等からなる事故調査委員会を設置し、事故が発生した周辺の人孔部を掘削して強度を評価し、事故の原因究明と今後の対応を図り、再発防止に努めます。
 
 人災であること、事故が生じた際の緊急対応、その後のリスク管理として参考にしてください。関東地方の方は知っておいた方が良いですね!

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