水道部門 口答試験 災害対策

○ 平成12年に出題実績のある問題  ● 平成13年に出題実績のある問題

1. 阪神淡路大震災での水道施設の被害状況の特徴は?

 鋳鉄管、硬質塩化ビニル管は管体破損が、ダクタイル管のA,K、T形継ぎ手のほとんどは抜けによる漏水で、S、SU形耐震継ぎ手は異常なっかた。

(1)浄水施設
 躯体のクラック、破損、目地の損傷。地上式の構造で横抵抗が考慮されていない杭構造。
 埋め立て地盤、盛土地盤、構造物直下もしくは近くに断層が存在しているところの被害が顕著。
(2)配水管
@ダクタイル管のA,K、T形継ぎ手のほとんどは抜けによる漏水
AS、SU形耐震継ぎ手は埋め立て地や造成地で270Km布設‥‥問題なし。
B鋳鉄管、硬質塩化ビニル管は継ぎ手の抜けや破損、管体破損がみられた。
(3)地形・地質による被害の特徴
@地質
 ・埋め立て地では継ぎ手被害が75%を占める。
 ・河川沿いや海岸沿いの沖積層で被害率が大きい。
A地形と被害率
 ・砂州における被害率大。
 ・後背低地も被害率が高い。砂州と後背低地との境界部では管体破損が多発。
 ・天井川、扇状地など、急傾斜地から緩傾斜地への変化点に被害が集中する。
 ・埋め立て地や人工改変地(人工的に切り盛りされたところ)は地盤対策が必要。

2.中越地震の特徴と課題は何か?

特徴
@大規模浄水場や配水池施設は大きな被害はなかった。
A山間地域の小規模浄水場や配水池は、地盤の崩壊、構造物の移動・沈下等で機能停止する被害が続出した。
B管路被害の原因は地盤の液状化による道路陥没。老朽管の更新や耐震継ぎ手の採用は有効に働いた。

課題
@構造物との取り合いにはボール型可撓管等許容伸縮量の大きなものを使う。
A遠距離送水システムが道路崩壊により、復旧に時間を要している。地域ごとの浄水システムが必要。
B浄水場・送水管路の二重化、近隣事業体との相互連絡

 詳しくはポチのHP水道よもやま話の中の「新潟中越地震の上下水道被害と課題」を一読下さい。

3. 地震対策はどのようなものがある?

 @基幹施設や主要水道管路の耐震化
 A代替え機能の確保‥‥水源、管路の複数化,相互融通,受電の2系統化
 B復旧体制の整備・・・配水管網のブロック化,マッピングシステムの導入,応援体制の整備
 C緊急拠点給水の整備‥‥緊急貯留槽、配水池等に緊急遮断弁

(1)施設の耐震化
@基幹施設や主要水道管路の耐震化、
 耐震診断に基づいた浄水場、配水池、及び主要管路
A代替え機能の確保‥‥休止井戸等の応急水源、他配水系統との連絡管、配水幹線の複数化、受電の2系統化・非常電源の整備
B配水管網のブロック化
 事故の影響範囲を限定・縮小化と効率的な復旧
 配水ブロック間の相互連絡管
C塩素設備(液化塩素)漏洩防止対策や代替塩素剤の導入

(2)緊急拠点給水の整備
@公共施設等に地下式貯水タンク等の(災害用注水装置付き)緊急貯留槽設置
A配水池等に緊急遮断弁の設置

(3)災害発生時の復旧体制の整備
@取水から送配水までの適正な配分計画による運用が可能な水運用センターの設置 
Aマッピングシステムの導入  
 管路情報の整備と活用の迅速化による復旧作業の支援情報の提供、管路更新計画の策定

4.応急復旧及び応急給水はどのように対応しますか? ○●

1.被害調査
 原水水質,浄水場,送配水施設
2.応急給水
 拠点給水,運搬給水、広報
3.応急復旧
 上流施設から,優先ヶ所(病院、避難場所、災害対策本部等),後戻りのない復旧,資材調達,他都市・企業の応援復旧体制

1.被害調査
・原水の水質調査
 被災工場等からの有害物質流出
・基幹施設(取水、導水、浄水)
 運転状況、漏水事故、外観上の被害
 電力、薬品、燃料等の確保の目処
・送配水システム
 運転状況、出水不良、断水区域の確認
 緊急断水・・・多量漏水個所(道路陥没等の2次災害)
 管路状況の把握・・・バックアップ体制・・・断水区域の最小化
 
2.応急給水
 破損管路を一時的に断水し、修理後、通水するまでの間の継続。避難所、病院等緊急度の高い施設から優先的に行う。
・拠点給水・・・ポンプ、仮設配管、応急給水用常設給水栓の設置
 管路破損時は負圧による水道水汚染・・給水前の水質確認
 残留塩素0.1mg/l以下・・煮沸指示、浄水場の塩素量増加
・運搬給水・・・給水タンク車、携帯用タンク

3.応急復旧
・上流側施設から優先・・・取水、導水、浄水、送配水
・後戻りのない復旧・・・市民の混乱を避ける。一旦通水したら再度断水させない。施設、大口径管は内部点検
・優先箇所(都市機能の早期回復)
 避難所
 重要医療施設(災害医療活動拠点病院、人工透析治療病院)
 災害弱者施設(重度身体障害者施設、特別養護老人ホーム)
 災害対策中枢機能である公共機関
 冷却水を必要とする公共性の高い発電所、ゴミ処理施設
 広域断水の原因となる管路
・応急復旧用資材
 事業体、給水装置工事業者、他都市の応援物資(日常からその事業体に特有な水道資材は極力使わないよう整理しておく)
・他都市の応援を受ける場合
 配水方式、使用資機材、応急復旧の進め方をよく打ち合わせる
 
4.恒久復旧
 応急復旧が概ね完了した時点で計画的に恒久復旧を行う。
・漏水調査、修理・・・小規模漏水の多発化
・耐震管路・・・木造家屋密集地域、広域的被害を受けた地域
・バックアップ体制の整備

5.どうすれば地震対策になるか?

水源、浄水施設における耐震化
1)水道専用ダム、原水調整池等の補強対策
 水道専用ダムや原水調整池は2次災害防止のため、耐震性診断により構造的強度を確認し、漏水防止、提体法面の崩落防止、コンクリートの打ち増しを行う。
2)水源水質の汚染対策
 重油・毒物等の流出事故に備え、水質監視設備やオイルフェンス等流入防止設備を検討する。
 地下水取水では地震後の濁りや湧水箇所が変わる可能性があり、ろ過機等の設置や他系統との連絡を検討する。
3)構造物の補強対策
 @構造物の強度が不足する場合は「水道施設耐震設計施工指針・解説」等最新鋭の構造基準に基づき、底版や側壁の補強を行う。
 A基礎杭の水平補強を考慮していない場合は、現在の基準に基づき基礎地盤や基礎杭の補強を行う。
 B伸縮継ぎ手は50mm程度の許容範囲を持った止水版を使用する。
 C底版部の埋め戻し土部分や盛土部の円弧滑りの補強は杭基礎、地盤改良を施す。
 D高架水槽等の塔状構造物は鋼版の内・外張り、基礎の補強を行う。
4)液状化対策
 液状化が予想される場合、地下水の低下方策、地盤改良、浮き上がり防止策等の対策を検討する。
5)構造物との取り合い部における管路の補強対策
 @構造物との取り合い部の管路については、管体強度の補強、伸縮可撓管の設置を検討する。
 A架空部では管体の十分な支持が必要である。
 B配管が伸縮継ぎ手(目地)にまたがる部分については、目地の変異に追随可能な形式を採用する。
6)電気・機器等の耐震対策
 @電線、ケーブル配線は配電盤の転倒、移動に備え、十分な予長を持たせる。
 A自家発電の冷却配管の強化、または冷却不要の原動機を採用する。
 B直流電源装置、交流無停電電源装置の設置を検討する。
 COA機器、薬品棚、分析機器類の転倒防止
7)漏水による水没対策
 構造物からの漏水が予想され、水没の恐れのある場合には、躯体の漏水防止対策を施すと共に、人孔蓋の固定や排水ポンプの設置等水没対策を行う。

2次災害の防止
 @配水池の流入流出管に緊急遮断弁を設置
 A薬品貯蔵槽の防液堤の設置、貯留槽の定着強化、付帯配管に伸縮可撓管を設置
 B塩素設備の配管類の強化、ボンベの転倒・滑動防止

管路における耐震化
1)更新の好ましい管種
 大震災での被害例では、石綿セメント管、印籠継ぎ手鋳鉄管、TS継ぎ手VP管の耐震化が望まれた。コンクリート管も布設替えやパイプインパイプ等耐震化を図る。
2)主要管路の耐震化
 導・送・配水幹線、病院・避難所等重要施設への給水管は、耐震性の高い管種への変更、不安定地盤や活断層の近傍を避けたルート変更、及び伸縮継ぎ手の補強策を施す。また、弁栓類のフランジ部の強化、伸縮管等の免震化も検討する。
3)水管橋、橋梁添架管
 水管橋は橋台基礎を護岸から独立させ、伸縮可撓管を採用する。リングサポート、シューを調査し、必要な補強を行う。
 橋梁添架管は、支持取り付け部、吊り金具等の構造を強固にし、必要に応じて伸縮管を設置する。

管路システムの耐震化
1)広域的バックアップシステムの確立
 広域水道の整備、隣接水道との相互連絡管の整備による広域的バックアップ体制を強化する。
2)ループシステムの採用
 送水管、配水幹線等における既設管相互を連絡するループシステムを採り入れる。
3)配水ブロック化の推進
 配水区域が広かったり、高低差が大きい場合、配水管網のブロック化を推進する。ブロックの中央監視システムや遠隔操作システム、及びブロック間の連絡管を整備することも有意義である。
4)バルブの配置の見直し
 断水被害を予測した結果、復旧作業用水の不足により被害が長期化する恐れがある場合は、弁の配置を見直す。被災した場合の影響を局所化して断水区域を限定し、復旧作業用水を確保し早期復旧を可能とするため、必要な弁を新設して、設置間隔を短くする。

6.渇水対策はどのようなものがある?

@水源の多元化、多様化を目指した水源開発と広域化も含めた相互融通体制の促進
A配水コントロールとゆとり・・・管網ブロック化,水圧制御,配水池の容量増,緊急貯水槽の整備
B漏水防止対策・・・漏水防止調査,老朽管の更新,
C下水処理水や雨水などの循環再利用を推進し、節水型都市造りの構築を目指す

(1)水源・用水の確保
@水資源開発
 渇水に対して脆弱な地域においてはダム等の水資源開発による安定水源の確保
A水源の多元化、多様化を目指した水源開発と相互融通体制の促進
  ・複数の水系からの水源確保と連絡管の設置
  ・地下水の利用
  ・他用水(農業用水、工業用水等)の転用活用
  ・下水処理水を工業用水や農業用水として利用
B水道の広域化
C水源涵養林
D応急水源として水道専用ダム、原水調整池の設置及び既存井戸の活用
E海水淡水化の実用化(コスト)へ向けた技術開発

(2)節水型都市づくり
@水使用の合理化の取り組み
A広報等による節水意識の高揚を図る
B下水処理水や雨水などを循環再利用を促進する。
C節水コマや節水型便器など節水機器の開発・普及促進を図る。
D料金の逓増制の他、季節料金について検討する。

(3)配水調整
@水運用センター設置
 配水管網の主要箇所及び末端部に流量計、水圧計、電動弁を設置し、水量、水圧のリアルタイム情報をコンピュータ解析し、電動弁の遠隔操作で浄水場から蛇口までの水量、水圧をコントロールする。
A配水管網のブロック化
 渇水時の給水サービスの公平化‥‥水量、水圧のコントロール
 連絡管によるブロックごとの相互融通機能の強化
B応急拠点給水の確保
 配水池容量増強など緊急時の拠点給水の確保

(4)漏水防止対策
 漏水防止調査の実施と老朽管の更新

7.レベル1・2の地震とはどのような地震か?

@ レベル1
 水道施設の使用期間中(50年〜100年)に1〜2回発生する確率の地震
A レベル2
 発生確率は低いが大きな地震動を伴う地震(阪神淡路大震災等)

2007.11.13 設問7追加