水道部門 口答試験 浄水処理

○ 平成12年に出題実績のある問題  ● 平成13年に出題実績のある問題

1.浄水場で苦労している項目は?

@かび臭等異臭味
Aトリハロメタン等消毒副生成物
Bクリプトスポリジウム対策としての濁度処理の徹底
C油流出等水質汚染事故

2.水面積負荷率(表面負荷率)とは?○ 

沈澱池における除去率を考える場合の最も基礎になる指標。
流入水量を池の表(底)面積で除した値。(V0=Q/A)
速度の次元を持っているので,上昇速度ということもある。

3.水面積負荷率を大きくするには?

@池の除去面積Aを大きくする
 水面と池底の間に中間床を入れる。・・・多階層沈澱池
 この考え方を究極に押し進めたのが,傾斜板式沈澱池,傾斜管式沈澱池
Aフロックの沈降速度Vを大きくする
 出きるだけ大きく,沈降速度が大きなフロックを造る・・凝集剤・凝集補助剤の研究
 活性のある微少フロックを既成のフロックと積極的に接触させ,大きいフロックを造る。=高速凝集沈澱池
B流量Qを小さくする
 中間取り出し式沈澱池・・・途中から上澄み水を取り出せば,全体の除去率は向上する。

4.沈澱池の緩衝作用とは?

 沈澱池に流入する原水の水量・水質はかなり変動する。沈澱池は濁質量の変動を吸収してろ過池の負担を一定近くに保つ。
 沈澱の効率化を図り,滞留時間を短くするには,フロックの沈降状況・スラッジの再浮上の有無などを監視し,適正な薬品注入を行う必要がある

5.高速凝集沈澱池について説明しなさい

 フロックの形成を既成フロックの存在下で行うことにより,凝集沈殿の効率を向上させることを目的とした沈殿池。
 スラリー循環型:既に成長したフロックを池内に循環させておき,その中で流入水の凝集とフロックの成長を行わせる。
 スラッジブランケット型:上昇流によって浮遊状態にあるスラリーの下方から凝集水を上昇させ,フロックの成長を行わせる。
 複合型:最初の凝集をスラリー循環型で行い,スラリーブランケットの下端からスラリーを噴出上昇させる。

6.薬品混和池の設計時間と混和機械の種類は?

設計滞留時間:1〜5分の滞留時間
混和機器:フラッシュミキサー、ポンプ拡散方式(エネルギー大)阻流板,パーシャルフリューム

7.フロック形成池の設計時間と種類は?

20〜40分、迂流式、パドル式
   攪拌機 周辺速度 15〜80cm/s
   迂流式 平均流速 15〜30cm/s

8.テーパードフロキュレーションとは?

 初期に強い攪拌を行い,段階的に強度を下げる撹拌方式のこと

9.GT値とは?

 良好なフロック形成の撹拌条件の指標値であり、撹拌勾配(攪拌強度G値)に撹拌継続時間(T)をかけて求めたもの

<参考>
 フロック形成においては、G値で表させる撹拌強度だけでなく撹拌継続時間も重要である(単に水理的条件だけでなく、滞留時間も関係する)。T.R.Campは、十分なフロック形成に必要な指標としてG値に撹拌継続時間TをかけたGT値を提唱した。実績データからGT値が23,000〜210,000の値を取ることが良好なフロック形成の条件としている。
 G値(攪拌勾配のことで、撹拌強度の指標)
フロックの成長速度および最大成長径は単位体積、単位時間に投入される撹拌エネルギーの平方根により決まるとした。   G=  P/μ  (μ;水の粘性係数)
 フロックは、互いに衝突しながら成長するため、フロックの成長は、衝突回数によって決まる。従って、撹拌強度(G値)を大きくするほど衝突回数は増加し、フロックの成長速度は増大するが、一定以上になると、フロックが破壊されるため最適な範囲がある。  G=10〜75/s

10.凝集のメカニズムを説明しなさい● 

 水中の濁質コロイドは、表面が(−)に帯電しているので、相互に反発しあい沈殿しない。凝集剤を入れると(+)に帯電したアルミ成分が、濁質の(−)電位を中和し、反発力をなくすため、ファン・デェアー・ワール力によって凝結する。
 この凝結した微細フロックが水酸化アルミニウムの接着作用により大きなフロックへと成長し、沈降する。

11.急速濾過池と緩速濾過池の違いは何か?○●

緩速ろ過法 急速ろ過法
ろ過速度 4〜5m/日 120〜150m/日
ろ過機構 生物膜ろ過 ふるい分け、付着作用
除去物質 懸濁物質、臭気、アンモニア性窒素 懸濁物質
ろ過砂再生 削り取り 逆洗
ろ層厚 80cm前後 60cm前後
有効径 0.4mm前後 0.6mm前後
特徴 広い用地必要、原水濁度10度程度まで 前段で凝集沈殿処理が必要

12.○○市に緩速濾過池はありますか?● 

 あると答えた場合は緩速ろ過池の特質について聞かれることがありますよ。問11.を参考にして下さい。

13.均等係数とは何か?○ 

砂の粒径分布の均一さを表わす指標。
 粒径累積曲線での60%通過径と10%通過径との比である。均等係数が1に近いほど,粒径が揃って,ろ層の空隙率が大きくなる
急速ろ過地の砂は有効径0.6〜0.7mmの場合,1.3〜1.6程度のものが使用される。
急速ろ過池=1.7以下、緩速濾過池=2.0以下 60%通過径/10%通過径

14.自然平衡濾過池とは?

 ろ過層の抵抗が増加するに従い、流入側水位が上昇して、流入水量が自然に並行す
る方式で、バルブ等(制御弁)駆動部を持たないためメンテナンスが簡素化される。
 いわゆるバルブレス方式と呼ばれるろ過池である。ろ過時間が経過すると懸濁物質の捕捉によりろ過抵抗が増えるが、ろ過流量一定を保つため、流入側水位を上げてくる。(ポテンシャルエネルギーを加えて)このことは、ろ過末期に捕捉した懸濁物質の漏洩が生ずる可能性が高くなることから、クリプト対策上は注意を要する。

15.自己洗浄濾過池とは?

6〜8池を一群として、1池の逆洗水量を他の池の処理水で賄う方式で、洗浄用の逆洗タンク、ポンプ、配管、バルブが不要

16.ランゲリア指数とは?

 水の腐食性を示す指数で、正ならば炭酸カルシウム被膜を形成し、負ならば腐食の傾向を示し、絶対値が大きいほどその傾向が大きい。快適水質項目としての目標値は、−1程度以上、極力0に近づけることとされている。
<参考>
 水の実際のpH値と水中の炭酸カルシウムが、溶解も析出もしない平衡状態にある時のpH値との差をランゲリア指数(飽和指数)といい、炭酸カルシウムの被膜形成の目安としている。

17.クリプトスポリジウムとジアルジアについて説明して下さい● 

 いずれも人間及び哺乳動物の腸で増殖し、水系感染症を起こす原虫で、飲食物から感染する。感染すると腹痛を伴う水様性下痢が3日〜1週間程度持続する。
 原虫の大きさに違いがあり、クリプトが5μm前後に対してジアルジアは10μm前後であり、また、クリプトは治療薬がなく、免疫機構による自然治癒を待たなければならないが、ジアルジアには治療薬がある。
 塩素消毒に対する抵抗性は、90%不活性CTがクリプトが7,000前後に対してジアルジアは200前後であり、クリプトが通常の塩素処理では不活性化せず水道による被害が問題になっているのに対して、ジアルジアは水道からの感染事例はなし。
指標菌:大腸菌、嫌気性芽胞菌

<クリプトスポリジウムの概要>
人間及び哺乳動物の腸で増殖し、水系感染症を起こす5μm前後の原虫で、飲食物から感染する。感染者からは1日10億個のオーシストが排泄され、2次感染する。感染すると腹痛を伴う水様性下痢が3日〜1週間程度持続し、治療薬はないが、免疫機構の正常な人は血清抗体により自然治癒する。
加熱、冷凍、乾燥には弱く、沸騰水では1分以上で死滅、60℃以上か−20℃以下で30分、常温で1〜4日間の乾燥で感染力を失う。
<クリプトスポリジウムの問題点>
@この原虫は通常の塩素消毒では死ない。
A国際化の進展に伴い(海外旅行者、輸入食品等の増加)輸入感染症として持ち込む可能性が高くなってくる。
B水道水が原因になると広範に感染する。その場合水道水に対する信頼性が失墜し、回復に多大な時間と労力を要する。
C原虫の試験法が難しく、充分なデータがないため、許容量と健康リスクが解明されていない。

<ジアルジア>
 10μm前後の原生動物(原虫)。CT(99.9%不活性)=150〜300。
腹痛、下痢(治療薬有り)。熱帯・亜熱帯を中心に広く世界中に分布(アジア、アフリカ、南米を中心に約2億人がジアルジア症に罹っている)。
 水系感染だが水道水からの感染事例はなし。

18.水道事業体としてのクリプトスポリジウム対策 

1) クリプトスポリジウムによる汚染の恐れの判断について説明して下さい。

@ レベル4(クリプトスポリジウム等による汚染の恐れが高い)
 地表水を水道の原水としており、原水から指標菌が検出されたことがある施設
  指標菌=大腸菌(E.coli)及び嫌気性芽胞菌
A レベル3(クリプトスポリジウム等による汚染の恐れがある)
 地表水以外の水を水道の原水としており、原水から指標菌が検出されたことがある施設
B レベル2(当面、クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)
 地表水等が混入していない被圧地下水以外の水を水源としており、原水から指標菌が検出されたことがない施設
C レベル1(クリプトスポリジウム等による汚染の可能性が低い)
 地表水等が混入していない被圧地下水のみを原水としており、原水から指標菌が検出されたことがない施設

2) 予防対策としての施設整備方法について説明して下さい。

@ レベル4の場合、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過法、緩速ろ過法、膜ろ過法等)を整備する。
A レベル3の場合、次のいずれかの施設を整備します。
1. ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが可能なろ過設備(急速ろ過法、緩速ろ過法、膜ろ過法等)
2. クリプトスポリジウム等を不活性化することができる紫外線処理設備。

3) 原水検査のあり方について説明して下さい。

@ レベル4及びレベル3の場合、水質検査計画に基づき、適切な頻度で原水のクリプトスポリジウム等及び指標菌の検査を実施します。
A レベル2の場合、3ヶ月に1回以上、原水の指標菌の検査を実施します。
B レベル1の場合、年に1回、原水の水質検査を行い、大腸菌、トリクロロエチレン等の地表からの汚染の可能性を示す項目の検査結果から、被圧地下水以外の水の混入の有無を確認します。
 3年に1回、井戸内部の撮影等により、ケーシング及びストレーナーの状況、堆積物の状況等の点検を行います。

4) 万一、クリプトスポリジウムが発症した場合の措置は?

@ 危機管理マニュアルの策定と関係官庁との連絡網の整備
 都道府県・水道事業者間の連絡マニュアル・連絡網を策定しておく。
 感染症の発生もしくは検出情報を入手したしたら、マニュアルに基づき水道事業者は都道府県へ、都道府県は国に報告し、連絡を密にする。
A 水道利用者への広報や飲用指導
 広報は、感染症の拡大を防止するため、また利用者の混乱を招かないよう、広報車・ビラ・新聞・テレビ等を活用して迅速・確実に広報を行う。
 内容は、飲用時の注意事項(煮沸後の飲用)や、2次感染の予防方法(手洗いの励行)について周知すると共に、クリプトスポリジウム症の症状や感染予防策、水道事業者の対応等について、解りやすく詳細に伝える。
B 水道施設における応急対策
1. 給水停止の実施
 水道がクリプトスポリジウムの感染源であるおそれが否定できないと判断される場合は、水道水の給水停止を迅速確実に行う。通常より必要なバルブの作動状態を確認しておく。
2. 浄水処理の強化
 浄水用薬品の注入率、ろ過速度等の調整を行い、浄水処理条件を適正にして、浄水の濁度を0.1度以下に維持する。
3. 取水停止、水源の変更
 浄水処理が適切に実施できない場合は、原水の取水を停止し、汚染のない他の水源がある場合は切り替える。
4. 汚染された施設の洗浄
 汚染された配水系統内の水道水の排水を行い、汚染されていない水道水で配水管や配水池の洗浄をする。配水管からの排水が速やかに実施できるよう、ドレーンの適切な配置、排水管網の点検を行う。
5. 水質検査の実施
 給水栓水、配水池水、浄水池水の水質検査を行い、検水20Lでクリプトスポリジウムが検出されないことを確認すること。
 水源を切り替えて給水を再開する場合は、新規の水道原水についても水質検査を行う。
6. 給水の確保
 あらかじめ、緊急時に、汚染されていない水源の活用や水道用水供給事業による応援が得られるよう施設の整備をしておく。

19.クリプトスポリジウム対策で浄水処理の留意点は?

1) 急速ろ過法

1. 原水が低濁度であっても必ず凝集剤を用いて処理を行うこと。
  注入率は定期的なジャーテストで決定する。
  予め高濁度原水に対する適正注入率を把握しておく。
2. 凝集剤の注入量、ろ過池出口濁度等、浄水施設の運転管理に関する記録を残す。
3. ろ過操作について
ア.ろ過速度は急変させないこと。
イ.ろ過池は目詰まりの発生が少ない場合であっても、適切な間隔で洗浄を行う。
ウ.ろ過池の洗浄は適正な逆流洗浄速度で行うこと。洗浄排水の最終濁度は2度以下を厳守し、できれば1度以下を目指す。
エ.洗浄後ろ過池出口の濁度が0.1度以下になるまで捨て水を行い、ろ過池出口濁度を常に0.1度以下に維持すること。
4. ろ過池洗浄排水等の原水への返送管理
ア.水道原水水質に急激な変化を与えないよう返送水の運転・管理に留意する。
イ.ろ過池で補足されたクリプトスポリジウムが再び浄水場内で循環しないよう、可能な限り排水池等に濁質の低減機能を持たせること。

2) 緩速ろ過法

1. ろ過池出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持すること。
ア.生物ろ過膜の損傷を防ぐため、ろ過速度は5m/日を超えないようにし、ろ過速度を急激に変化させないよう注意する。
イ.掻き取ったろ過砂を再利用する場合は、洗浄水の濁度が2度以下になるまで洗浄する。洗浄水は水道原水として利用しない。
ウ.掻き取り後、ろ過水を排水しながら、生物膜が再び形成され浄水の濁度が0.1度以下になるまで、ゆっくりしたろ過速度から徐々に速度を上げるようにする。
2. 凝集剤の注入量、ろ過池出口濁度等、浄水施設の運転管理に関する記録を残すこと。

3) 膜ろ過法

1. ろ過池出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持すること。
 膜の破断による事故を防ぐため、異常の有無を適切に検知すると共に、異常が発見された場合、直ちに該当するろ過膜設備の運転を停止する。
2. 凝集剤の注入量、ろ過池出口濁度等、浄水施設の運転管理に関する記録を残すこと。

4) 紫外線処理

1. 紫外線強度計により常時紫外線強度を監視し、水量の95%以上に対して紫外線(253.7nm付近)の照射量が常に10mJ/cm2以上得られていることを確認すること。
2. 原水濁度が2度を超えたら取水を停止すること。
3. 常に設計性能が得られるように、維持管理(運転状態の点検、保守部品の交換、センサー類の校正)を適当な頻度と方法で実施すること。

20.トリハロメタンとトリクロロエチレンの説明、除去方法は?

いずれも有機塩素化合物で、発ガン性が指摘されているが、以下の点に相違がある。

トリハロメタン トリクロロエチレン
発生 フミン質などの有機物と遊離塩素の反応によって生成する クリーニングや電子部品の洗浄廃液等で地下水汚染を起こす
特徴 前駆物質に懸濁性と溶解性 難溶解性、揮発性
除去方法 中間塩素処理、高度浄水処理(活性炭) エアレーション、活性炭処理

(1)トリハロメタン除去の研究‥‥実用化へ向けた更なる研究開発が必要
 @二酸化塩素、クロラミン等の代替塩素処理   Aナノろ過膜法
(2)消毒副生成物‥‥ハロ酢酸(ジクロロ、トリクロロ)、ジクロロアセトニトリル、抱水クロラール等 
※THM対策の場合
 浄水処理対策に(中間塩素処理、代替塩素処理、高度浄水処理、ナノろ過膜法)よるTHM除去に、次の@,Aを加える。
 @水源水質の保全対策
 A配水施設に於ける対策(処理段階での塩素注入量抑制と追加塩素注入の適切な組み合わせ、配水コントロール、配水管網のブロック化・ループ化、管口径の適正化、)により追加塩素システムの採用+配水施設における滞留時間を少なくする

21.トリクロロエチレンの問題点は?

発ガン性の指摘と地下水汚染であり、地下水が一度汚染されると回復しにくい。

22.消毒剤の種類は? ○ 

塩素剤   液化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム
代替として  二酸化塩素、クロラミン、オゾン、紫外線

23.塩素注入の目的は何があるか?○ 

 水中の微生物や病原菌などを殺菌し、水の安全性を確保する。(消毒)
 また、消毒以外に殺藻、アンモニア性窒素・鉄・マンガンの酸化、脱臭等の目的で使用している。

24.塩素処理の問題点は何か?

@カルキ臭やクロロフェノール臭などの異臭味を発生する。
Aトリハロメタン等の有害な消毒副生成物を生成する。
Bアンモニア性窒素と反応してクロラミンを生成し、消毒効果を低下させる。
Cクリプトスポリジウム等塩素耐性微生物が存在し、塩素剤による消毒は完全とは言えない。
※水源の水質汚濁に伴って、塩素注入量が増加し、特に、結合塩素によるカルキ臭が、水道に対する不安感を与え、使用者の水道離れの原因になっている。

25.O-157について説明して下さい

 水系感染症を起こす病原性大腸菌の一種。塩素消毒が有効。
 この菌はベロ毒素を産生し、腸で産生された毒素は神経を侵し、赤血球を溶かして血小板を破壊するため出血が止まらなくなり、腎不全を起こしたり腸粘膜を傷つけ血便が続く症状を引き起こす。菌自体は10日前後で死滅するが、毒素は体内に残留するので治療法がなく、予防する以外に手段がない。
 遊離残留塩素0.1mg/l以上、または75℃の加熱1分の条件下で死滅するので、水道においては残留塩素の確保が有効である。

26.オゾンの溶解方式は何があるか?

 散気管式、インジェクタ式、機械攪拌式、Uチューブ式
 一般的には、損失水頭が少ない散気管式

27.排オゾンの処理方法を説明しなさい

活性炭吸着法、燃焼法、マンガン触媒法

28.膜の種類はどのようなものがあるか?

精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)、ナノろ過膜(NF)、逆浸透膜(RO)

29.膜ろ過の導入効果は何か?

@濁度、細菌、クリプトスポリジウム等の完全除去
A施設の単純化、工期の短縮
B運転の自動化、省力化
C発生汚泥量の大幅削減‥‥排水処理・処分の軽減
D省スペース化

30.膜ろ過導入の課題は何か?

@膜コストの低減
A膜ろ過流速の向上とフミン質や農薬などの微量化学物質の除去性能を有す膜開発
B膜洗浄技術の確立
C膜破損検知システムの確立
D使用済み膜素材のリサイクル

31.エアレーションの目的・効果は何か?

@遊離炭酸除去による浸食性の改善(腐食防止)
Aトリクロロエチレン等低沸点有機塩素化合物の除去
B硫化水素臭の除去
C鉄の酸化

32.硝酸性窒素の除去方法は何がある?● 

イオン交換法、生物処理法
他に、硝酸性窒素除去単独で使用されないが、逆浸透膜法、電気透析法がある。
※生物処理法とは、脱窒菌により硝酸性窒素を窒素ガスに還元する方法で、有機炭素源としてアルコール類を添加する。そのため、配水池等で藻類発生などの障害が生じることがある。

33.排水処理の問題点を述べよ

@冬季汚泥の濃縮性・脱水性の低下:コージェネレーションシステムによる汚泥の加温
A返送水による水質悪化;重金属、有機物、生物、クリプトスポリジウム等の循環
 :返送水の膜処理・コージェネレーションシステムの排熱によるクリプトスポリジウム等の殺菌
B発生土の処分・有効利用‥‥流通経路の確保と事業採算性

34.マイクロフロック法とは何か?

 直接ろ過(マイクロフロック法)は,低水温・低濁度原水を対象として,少量の凝集剤を注入した後フロック形成と沈澱処理をせず,ろ過を行うもの
 濁度が低い場合に,凝集剤を多くすると,フロックの密度が小さく壊れやすくなって,ろ過池の漏曳を生じやすい。汚泥は濃縮性・脱水性が悪く,処理しにくくなる。このため,低濁度の原水に対して直接ろ過を行うことがある。

35.不連続点塩素処理とは何か?

 原水にアンモニア性窒素を多く含み,クロラミンを生じる場合,遊離残留塩素によって消毒を行う方法。不連続点(ブレークポイント)を超えて塩素を注入する。

36.中塩素処理の目的を述べよ

トリハロメタン,カビ臭の低減策
@トリハロメタン前駆物質を塩素注入前の沈殿処理により取り除く
Aアナベナ,フォルミジウム(藍藻類:塩素によりカビ臭原因物質を放出)
Bミクロキスチス(藍藻類:塩素により群体が壊れ,細胞が分散。ろ水流出)

37.多層濾過池とは?

 密度・粒径の異なる複数のろ材を用いて,水流方向に粗粒から細粒の構成となる 逆粒度ろ層を構成し,単層ろ過池に比べ,ろ過機能をより合理的・効率的に発揮させようとしたろ過池
 ろ層厚は60〜80cm,ろ過速度は240m/日を標準,

38.凝集剤、アルカリ剤、酸、凝集補助剤の種類と貯蔵量の目安を述べよ

凝集剤  :硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム,塩化第2鉄
アルカリ剤:消石灰,ソーダ灰,液体苛性ソーダ
酸    :硫酸,塩酸,液化二酸化炭素
凝集補助剤:活性ケイ酸,アルギン酸ソーダ,ポリアクリルアミド系高分子凝集剤

(平均注入量)
凝集剤    :30日分
アルカリ剤  :連続注入=30日分,その他=10日分
酸・凝集補助剤:10日分
塩素剤 :10日分

39.高度浄水処理の効果(活性炭、オゾン、生物処理の除去対象物質と効果は何か?)

@活性炭
 異臭味,ABS,THM,トリクロロエチレン,農薬等微量有害物質,有機物
Aオゾン
 1.異臭味,色度
 2.鉄・マンガンの酸化
 3.難分解性有機物の生物分解性を向上
 4.塩素要求量を減少
B生物処理
 アンモニア性窒素,カビ,ABS,マンガン,濁度が除去
 色度,細菌が低減

40.生物除去にはどのような方法があるか?

マイクロストレーナー,多層ろ過法
塩素・硫酸銅による殺藻

41.臭素酸について説明せよ

 臭素酸は臭素のオキソ酸の一種で発ガン性が指摘されている。水道法の水質基準項目の一つで健康に関する項目に該当し、水質基準値は0.01mg/L以下である。オゾン処理時及び消毒剤としての次亜塩素酸生成時に不純物の臭素が酸化され,臭素酸が生成する。

41.次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合の注意点を述べよ。

@ 次亜塩素酸ナトリウムは有効塩素濃度が5〜12%程度の淡黄色の液体で、強いアルカリ性と酸化作用がある。このため、ほとんどのものを腐食させるし、凝集剤等の酸と反応して塩素ガスを発生する。漏洩時の拡散防止のため防疫堤やピットを設ける。
A 高濃度のものほど不安定で、直射日光や紫外線により分解が促進され、温度が25℃を超えると有効塩素濃度が低下すると共に塩素酸を発生する。高濃度のものの貯蔵槽は直射日光を避け、室内で温度管理することが望ましい。希釈して貯蔵することも有効である。
B 保存中に酸素を放出して分解するため、気泡が配管内に溜まって溶液の流れを妨げる恐れがある。濃度を薄くして気泡の発生を抑えたり、押し込み注入や空気抜き装置を施す等の工夫が必要である。

 塩素酸発生の危険性については、「トピックス06.08.24 厚生科学審議会環境水道部会の決定内容」に記しています。
 塩素酸は赤血球細胞への酸化ダメージが懸念され、水質基準に「塩素酸」を加えることについて、食品安全委員会の意見を求められています。
 これまで塩素酸が懸念されるケースは、二酸化塩素が浄水処理に使用された場合とされてきましたが、国内で広く使用されている次亜塩素酸ナトリウムを高温状態で長期間保存していますと、酸化により濃度低下を引き起こすだけでなく、塩素酸(ClO3-)濃度の上昇が起こることが明らかになりました。浄水中に評価値(0.6mg/L)の1/10を超えて検出される事例が生じています。塩素注入率が多い浄水場では、濃度低下によって更に注入率が増えることに加えて、塩素酸による水質障害が懸念される恐れがあります。

 ごく最近の話題ですので、これに対する知識を問われることは今年に限ってはないと思いますが、ポチの老婆心として念のため!

2006.10.24 18.19のクリプトスポリジウムの項目を新対策指針に基づき全面改定
2006.11.17 問41.臭素酸、問42.次亜塩素酸ナトリウムを追加
2006.11.20 問41.に「塩素酸発生の危険性」を追記しました。